【詳細】日銀会見 “粘り強く金融緩和を続ける必要がある”

日銀は、22日まで開いた金融政策決定会合で、短期金利をマイナスにし、長期金利をゼロ%程度に抑えるいまの大規模な金融緩和策を維持することを決めました。長期金利の変動幅については、前回・7月の会合で決めた事実上、1%までの上昇を容認するとしています。

消費者物価指数はことし8月まで17か月連続で目標の2%を上回っていますが、日銀は、賃金上昇を伴う形での2%の物価安定目標の達成にはなお至っていないとして、物価目標の実現に向けていまの金融緩和策を粘り強く続ける必要があると判断した形です。

債券市場では、日銀が前回・7月の会合で長期金利の一段の上昇を容認したことをきっかけに長期金利は上昇傾向にあります。また、外国為替市場では円安が続いています。

日銀の植田総裁の記者会見は午後3時半から始まり、午後4時35分に終了しました。
記者会見での植田総裁の発言を詳しくお伝えします

「粘り強く金融緩和を続ける必要がある」

植田総裁は、現在の金融緩和策を修正する時期について「現状、目標の持続的安定な達成を見通せる状況には至っておらず粘り強く金融緩和を続ける必要がある。実現が見通せる状況になれば政策の修正を検討することになるが現時点では経済物価をめぐる不確実性はきわめて高く政策修正の時期や具体的な対応について到底決め打ちはできない」と述べました。

「物価見通し 上振れリスクのほうが大きいと判断」

植田総裁は、物価の見通しについて問われると「7月の展望レポートでは、2023年度と2024年度の物価見通しについて、上振れリスクのほうが大きいと判断した。先行きの物価を巡っては、為替相場や資源価格の動向だけでなく、内外の経済動向や、企業の賃金・価格設定行動に関する不確実性も極めて高いと認識している」と述べました。

「物価目標の持続的安定的な実現を目指す方針だ」

植田総裁は「次回10月の展望レポートに向けて、政府のガソリン価格抑制策の延長の影響を考慮に入れて、さまざまなデータや情報を精査してまいりたい。日銀として、情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続することで、物価目標の持続的安定的な実現を目指す方針だ」と述べました。

「固定金利の住宅ローン金利上昇 マクロ的影響は限定的」

植田総裁は「長期金利が若干上昇しているので、固定金利の住宅ローン金利が上昇するのは当然起こる現象。ただ上昇幅も限定的で、固定金利で借りてる人の比率もそれほど高くないのが現状で、マクロ的な影響は限定的と考える。今後、住宅ローン金利が上昇を続けていくのかどうかは経済物価情勢およびそれを受けた日銀の政策の動きに大きく影響される。そうしたなかで目標に達するという見通しが立っておらず、現状維持ということで大きく動くということは今の時点で申し上げられる状況ではない」と述べました。

「実質賃金の上昇率がプラスに転じないこと 非常に心配」

植田総裁は「実質賃金の上昇率がマイナスのままでプラスに転じないことは非常に心配している。実質所得が低下する中で家計にインフレが負担になっている」と述べました。

世界経済の現状「政策決定に強い影響を及ぼしたわけではない」

植田総裁は、世界経済の現状について「アメリカ経済は少しソフトランディングの期待が高まった。FOMCやパウエル議長の記者会見でもあったようにどんどん金利を上げていくということではないが高くなった金利を高いまま維持していくという姿勢が見られている。アメリカ経済は若干強めだが、一方でその他の国を見ると中国やヨーロッパのように少し弱めの所もある。全体として将来に向けてのリスク要因ではあるものの、今回の政策決定に強い影響を及ぼしたわけではない」と述べました。

「1、2か月の物価動向 下がり方が少しゆっくりめの雰囲気」

植田総裁は、ここ最近の物価動向について問われると「ここ1、2か月の物価動向を見た場合に、7月の展望レポートで出した、あるいは、そこで見た姿と比べてについてだが、インフレ率がどんどん上振れしているわけではないけども、当時の見通しに比べて、当面下がるという見通しを持っていた。その下がり方が少しゆっくりめの雰囲気はある。ただ、それが定量的にどれくらいかは10月の展望レポートに向けて精査していきたい」と述べました。

「短期金利 全体の見通しが達成されるまでマイナス金利の認識」

植田総裁は、YCC=長短金利操作やマイナス金利政策を終了する条件について問われたのに対し「YCCに関して現在のフォワードガイダンスで約束されているのは、YCCという枠組みを目標達成の見通しが立つまで維持するということだ。長期金利については7月に実施したような修正、あるいは枠組みの柔軟化ということをYCCの全体の枠組みを維持した中で実施した。短期金利については全体の見通しが達成されるまではマイナス金利でいくという認識でいる」と述べました。

目標実現 見通せる場合「YCC撤退やマイナス金利の修正検討」

植田総裁は「現行の枠組みのもとで粘り強く金融緩和を続けている。そのうえで、目標の実現が見通せる状況になった場合は、YCCの撤退やマイナス金利の修正を検討することになる。ただその場合、さまざまな手段についてどれをどういう順序で具体的にどういう風に、変更していくのかはさまざまなオプションがある。そのときの経済物価情勢次第なので、具体的にどうするかということを申し上げられる段階では今はない」と述べました。

マイナス金利の解除 「まだ決め打ちできる段階ではない」

植田総裁はマイナス金利の解除について「物価目標の実現が見通せる状況になった場合にはマイナス金利の解除も視野に入るが、それがどういう変数とどういうふうにひも付いて短期金利がどれくらい動かないといけないのかということについてはまだ決め打ちできる段階ではない」と述べました。

その上で、今月掲載された新聞社のインタビュー記事で将来的にマイナス金利の解除を含めさまざまな選択肢があると答えたことについて「マイナス金利解除への距離感がすごく動いたからあのように申したわけではない」と述べました。

賃金の上昇「物価上昇の継続性判断の最重要な要素の1つ」

植田総裁は、マイナス金利の解除に向けて賃金の上昇が重要な要素かと問われたのに対して、「物価上昇の継続性を判断するための最重要な要素の1つである」と述べました。

就任から半年「ある程度適切な金融政策対応ができた」

植田総裁は、4月の就任から半年近くがたったことを振り返って「経済や物価情勢の動きは半年前に予想していたものとはやや違った動きをしているが、それを捉えてある程度適切な金融政策の対応ができたと考えている」と述べました。

「為替の動向 経済物価への影響 政府とも緊密な連絡を取り注視」

植田総裁は、為替について問われると「為替は、やや紋切り型になるが、ファンダメンタルズにそって安定的に推移することが望ましいと考えている。ただその上で、7月の時点で政策変更しなかったとすると、インフレ期待等が上ぶれた場合に、YCC=長短金利操作修正の思惑から、不必要な金利や為替レートのボラティリティーの上昇を招くリスクがあると考えたので、7月に政策変更を行った」と述べました。

その上で「いずれにせよ、為替の動向は、将来の経済動向や物価動向にいろいろな形で影響を及ぼす。従って、われわれの物価見通しにも影響を及ぼすものであるという観点から、常に注視している。為替市場の動向だけでなく、経済物価への影響について、政府とも緊密な連絡を取りながら注視してまいりたいと常に考えている」と述べました。

金利上昇「それほど心配する動きではない」

植田総裁は、金利上昇について問われると「今後、仮に本格的に金利を上げていく、あるいは金利が上がっていくという局面になった場合、それが展望されるような局面ではしっかりと点検したうえで金利を上げていかないといけないというふうに思っている。現状は7月との比較でいえば、わずかな金利上昇で、まだはっきりと確認できる段階ではないが、インフレ期待の上昇の中での動きなのでそれほど心配する動きではない」と述べました。