8月の消費者物価指数 去年同月比3.1%上昇 10月も値上げ続く

家庭で消費するモノやサービスの値動きをみる先月、8月の消費者物価指数は天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が、去年の同じ月より3.1%上昇しました。上昇率は7月から横ばいで、3%以上となったのは12か月連続です。

総務省によりますと、先月、8月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数が2020年の平均を100として去年8月の102.5から105.7に上昇し、上昇率は3.1%でした。

上昇率は7月から横ばいで、3%以上となったのは12か月連続です。

このうち「生鮮食品を除く食料」は9.2%上がり、大幅な上昇が続いています。

具体的には
▽「鶏卵」が35.2%、
▽「炭酸飲料」が16.7%、
▽外食の「ハンバーガー」が13.4%、
▽「アイスクリーム」が12.7%、上昇しました。

また、
▽「キャットフード」が31%、
▽「宿泊料」が18.1%、上昇しました。

「エネルギー」では、
▽「電気代」の上昇率がマイナス20.9%と、政府の負担軽減策などを要因に比較可能な1971年1月以降、最大の下落幅となっています。

総務省は、電気代と都市ガス代の負担軽減策で、生鮮食品を除いた指数は1.03ポイント押し下げられ、これがなければ上昇率は4.1%程度になったと試算しています。

総務省は「今月末が期限だった政府の電気やガス料金の負担軽減策が当面続けられることになったので、食料や賃金とともに、物価全体に与える影響を注視していきたい」と話しています。

身近なサービスでも相次ぐ値上げ

自治体は水道料金を値上げ

水道管の老朽化や人口減少による水道使用量の落ち込みなどを理由に水道料金を値上げする自治体が相次いでいます。

このうち静岡県富士市では、来月1日から水道料金を平均で13%引き上げます。

市によりますと、一般家庭で最も多い口径20ミリの契約では1か月に20立方メートルを使用した場合、水道料金は今回の値上げによって1か月最大で363円上がるといいます。

富士市によりますと、市内の水道管の総延長は1300キロ余りで、このうち法律で定められた耐用年数の40年を超えた水道管の割合は、おととし3月時点で35.59%となっています。

厚生労働省によりますと、法定耐用年数を超えた水道管の割合は全国の自治体などで見ると、おととし3月時点で平均で20.63%で、富士市は全国平均に比べてその割合が高くなっています。

このため市では、老朽化した水道管の耐震化や新しいものに取り替える工事を進めていて、年間におよそ13キロについて工事を行っています。

この工事にかかる年間の経費は、昨年度およそ19億円に上りました。

また、人口の減少に伴って水道水の使用量は減少傾向にあり、昨年度の使用量は5年前と比べておよそ4%減っているということです。

さらに、物価の上昇が続く中、一般家庭や事業者で水道水の使用量はさらに減る傾向があり、その一方で電気代の上昇などで水道を供給するためのコストも上がっているということです。

市の担当者「値上げはやむをえず 理解いただきたい」

富士市上下水道営業課の大場洋一課長は「新型コロナの影響を考慮し料金の値上げの時期をこれまで3回延期したが、物価の上昇でさまざまなものが値上がりしている中、水道料金の値上げはやむをえないと考えた。市民には負担をおかけすることになるが理解していただきたい」と話していました。

市民は…

83歳の女性は「水道料金の値上げはしかたがないという気持ちもあります。ただ、年金で暮らしているのでさまざまなものが値上がりしている中、負担が増えるので厳しいと感じます」と話していました。

男子大学生は「水は生活に欠かせないものなので全く使わないことはできませんが、皿洗いの時などにもできるだけ使用量を抑えられるよう心がけています」と話していました。

90歳の女性は「老朽化した水道設備などを補修する必要もありますし、値上げを受け入れるしかないと思っています」と話していました。

多くの業務で水を使用 スーパーは“節水”

静岡県富士市内のスーパーでは、来月から水道料金が値上げされるため、今後さらに従業員一人ひとりの節水への意識を高めていきたいと話しています。

このスーパーでは、店内の清掃のほか、食材や調理器具の洗浄、それに流水による食材の解凍など、日頃から多くの業務で水を使用しています。

このため店では、これまでも蛇口から出る水をシャワー状にして水の出る量を抑えたり、従業員に節水を呼びかけたりするなどしてきました。

こうした中、来月から水道料金が値上げされることになり、店では今後さらに従業員の節水への意識を高めていきたいとしています。

副店長「従業員の節水意識を高めていく」

しずてつストア富士吉原店の中村貴正副店長は「電気やガスが値上がりする中で水道料金まで上がるというのはスーパーにとっては痛手です。今後の対応としては、従業員一人ひとりの節水に対する意識を高めていくことが一番大きいと思います」と話していました。

路線バスの値上げ申請 去年の4倍以上

路線バスを運行する事業者が運賃の引き上げを運輸局に申請した件数はことしに入って先月までに全国で72件あり、去年1年間の件数の4倍以上に上っていることが国土交通省のまとめでわかりました。

国土交通省によりますと、路線バスの運賃は事業者が申請した上限額について国土交通大臣や運輸局の局長の認可を受ける仕組みで、運賃は認可された上限額の範囲内で設定されることになっています。

バスの事業者が運賃の上限額の引き上げについて運輸局に申請した件数は、ことしに入って先月までに全国で72件ありました。

このうち、先月31日時点で33件が認可されました。

申請の件数を見ると、去年1年間で15件あったということで、ことしはすでに4倍以上に上り大幅に増えています。

来月1日からは14のバス事業者で運賃が値上げされる予定だということです。

国土交通省によりますと、バスの燃料となる軽油などの価格上昇や運転手の賃上げによるコストの増加、それに新型コロナの影響による利用者数の低迷などが運賃改定を申請した理由として挙がっているということです。

国土交通省は「新型コロナの影響により厳しい経営状況におかれているのに加えて、運転者数も減少し地域公共交通の十分な担い手を確保できない状況となっている。バス事業者からの運賃改定申請に対応し、早期の賃上げなどを促進している」としています。

名古屋市のバス会社も値上げへ

名古屋市に本社がある「名鉄バス」は、一部の区間を除いて路線バスの運賃を来月1日から値上げします。

運賃の値上げは消費税率の引き上げによるものを除くと1995年以来28年ぶりです。

値上げは平均11%で、多くの区間で20円から40円引き上げられます。

来月1日からは通勤や通学の定期券の価格も上がるため、窓口ではそれを前に定期券を購入する学生などの姿も見られました。

背景には燃料価格の上昇と人件費の確保

会社によりますと、値上げの背景にはバスの燃料となる軽油の価格が上がっていることで会社の収益が圧迫されていることがあります。

会社全体で見みると、先月のバスの燃料代は去年の同じ月よりおよそ1500万円増加しているということです。

また、運転手の不足が続いていることなどから、ことし4月、会社で働くすべての従業員およそ1500人について賃上げをしたということです。

バス業界では来年4月から時間外労働の規制が強化される、いわゆる2024年問題への対応が課題となっていて、会社では人件費の確保が欠かせないとしています。

バス会社の担当者「運賃改定は苦渋の判断」

大野淳地域交通部長は「人件費の確保や燃料費の高騰を受けて会社としても収支の改善が必要という判断から苦渋の判断で運賃を改定しました。お客様の負担が増えることは大変申し訳なく思っていますが、安心、安全な運行のためにご理解ください」と話していました。

バス利用者は…

バスを利用して愛知県内の大学に通う男子大学生は「来月からバスの運賃が上がると後輩から聞き、急いで定期券を購入しました。ふだんは1か月分しか購入しないのですが、値上げ前の駆け込みなので3か月分を購入しました」と話していました。

また、愛知県長久手市に住む70代の女性は「車を持っていないので買い物などに行くときにバスを利用しています。年金で生活していますが、いろいろな物の値段が上がっていて、できれば運賃は値上げしてほしくなかったです」と話していました。

一方、愛知県犬山市に住む男子大学生は「バスは通学に利用しています。燃料代なども上がっているので、運賃の値上げはしかたないと思っています」と話していました。

物価上昇の現状 専門家は

物価上昇の現状について、第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミストに聞きました。

Q.水道やバスなどの値上げが相次いでいます

A.水道やバスの公共サービスは生活への影響が大きいため、ほかの物価が上昇してもぎりぎりまで値上げせず、一般の民間企業の値上げに比べて相当遅れて実施されるのが特徴だ。

さすがに2%や3%、4%の物価上昇が続いて、公共サービスだけ値上げしないのも厳しいうえ、これまで値上げしていなかったところは必要性の度合いも大きくなる。

ことしだけでなく、来年4月や再来年にも値上げが相次ぐとみられる。

Q.3%以上の物価上昇率が12か月連続していることをどうみますか?

A.予想以上に物価上昇が長期化していることは否めない。

当初、物価上昇は原油価格の上昇によるもので一時的だという見方もあったが、食料品を中心にどんどん伸びが加速した。

Q.物価上昇の長期化の中で消費の二極化の指摘も

A.サービスの消費はコロナへの警戒感が和らいで好調だが、物の消費はかなり弱い。

特に弱いのが食料品で非常に値上がり幅が大きく、平均でおよそ10%、食材によっては2割や3割上昇しているため、高い食材を買い控える動きもある。

また、回復している外食でも二極化が見られる。

高級店は値上げをしても価格に見合う価値を提供できていれば来客数は減らないが、一方で安さを売りにしている店は値上げしてしまうと売りがなくなってしまうので苦戦している会社も多い。

Q.今後の物価の見通しと賃金上昇への波及は?

A.これまでの物価上昇ペースが極めて速かったので、来年にかけては緩んでいくだろう。

ただ、注意しなくてはならないのは、緩んでも上昇はするので生活への悪影響は続き、消費者にとっては厳しい。

賃金については数十年ぶりの賃上げ水準が実現しているものの、物価の上昇が賃金の上昇より速いため、生活は苦しくなる。

今年度いっぱいは物価を上回る賃金上昇は厳しく、消費を増やしにくい状況が続く。

来年の春闘がとても大事で、賃金が物価上昇を上回らないと消費は一段と厳しくなる。