レスリング世界選手権 藤波朱理が金メダル 公式戦127連勝

セルビアで開催されているレスリングの世界選手権は21日、女子53キロ級の決勝が行われ、パリオリンピックの代表に内定した19歳の藤波朱理選手が勝って金メダルを獲得しました。藤波選手は中学2年生から続く公式戦の連勝を「127」に伸ばしました。

セルビアで行われているレスリングの世界選手権には去年、ウクライナへの軍事侵攻を理由に参加が認められなかったロシアとベラルーシの選手が中立な個人の選手として出場しています。

21日、女子53キロ級では決勝を前に19歳の藤波選手が試合前の計量をパスして来年のパリオリンピックの代表に正式に内定しました。

そして決勝では東京オリンピックの銅メダリストで、ベラルーシから中立な個人として出場している選手と対戦しました。

藤波選手は開始早々、得意のタックルから巧みな動きで背後を取ってポイントを重ね、前半を6対0で終えました。

後半も相手の攻撃を巧みにかわしてポイントを奪うなど攻守で終始上回り、10対0のテクニカルスペリオリティで勝って、2年ぶり2回目となる金メダル獲得となりました。

この結果、藤波選手は中学2年生から続く公式戦の連勝を「127」に伸ばしました。

また、女子62キロ級では元木咲良選手も決勝の前に行われた計量をパスして藤波選手とともに正式に代表に内定しました。

決勝では東京オリンピック銀メダリストで2回世界選手権を制したキルギスの選手と対戦しました。

元木選手は前半に1ポイントを先制しましたが後半、相手にタックルから背後を奪われて逆転されると、その後もリードを広げられて1対4で敗れ、銀メダルとなりました。

68キロ級では3位決定戦で石井亜海選手が去年の銅メダリストのモルドバの選手に敗れ、今大会での代表内定は逃しました。

また、男子グレコローマンスタイル77キロ級では準決勝で日下尚選手が去年、金メダルを獲得したキルギスの選手に敗れ、22日の3位決定戦に回りました。

けがの苦しみを成長の糧に「オリンピック優勝」へ

子どものころから「自分のいちばんの目標はオリンピックで優勝すること」と公言してはばからなかった藤波朱理選手。

まずは世界選手権で圧倒的な強さを見せて夢を実現するための切符を順当に勝ちとりました。

藤波選手が競技を始めたのは4歳から。レスリング選手だった父の俊一さんから指導を受けてきました。

そして、17歳で世界選手権を初制覇し、オリンピック3連覇を果たした吉田沙保里さんや東京オリンピックの金メダリスト志土地真優選手と同じ女子53キロ級で一躍、注目される存在となりました。

夢の舞台、パリオリンピックへの出場がかかったことしの世界選手権には、けがで出場できなかった去年の雪辱を果たすという思いも込められていました。

このことについて聞くと、1か月以上、マットに上がれないことに涙を流したこともあり「本当に悔しい思いをした。体の声を無視して追い込めばいいという気持ちが大きく、けがをしてしまったところがある」と明かしました。

ただ、「今は追い込みながらもしっかりと体の声を聞く」と練習前には入念にストレッチをするなど体のケアにも力を入れるようになり、苦い経験をみずからの成長の糧にしっかりと変えてきました。

技術の面での進化も怠りなく求め続けてきました。

日本体育大学の2年生として俊一さんだけではなくオリンピック4連覇を果たした伊調馨さんからも指導を受けながら得意のタックルだけでなく組み手の力強さや技術にも磨きをかけてきました。

成長の兆しはまず、ことし6月の全日本選抜選手権で示されました。志土地選手にフォール勝ちを収めるなど圧倒的な強さで優勝。中学2年生から続く公式戦の連勝を「122」に伸ばして吉田沙保里さんの119連勝を上回りました。

「去年の悔しさは絶対にむだにしない」と臨んだ今大会でも初戦と2回戦はテクニカルスペリオリティで圧勝しました。

準々決勝こそエクアドルの選手に序盤から5点のリードを許しましたが、その後巻き返してフォール勝ち。準決勝ではわずか40秒あまりで試合を制し、初めてのオリンピック代表に内定しました。

そして、決勝でも東京オリンピックの銅メダリストに1ポイントも与えずにテクニカルスペリオリティで金メダルを獲得。中学2年生から続く公式戦の連勝を「127」に伸ばしました。

試合後には父の俊一さんと満面の笑みで抱擁を交わし2人で国旗を広げてマットを回り、喜びをかみしめました。

居並ぶ世界の強豪をねじ伏せてつかんだ金メダル。けがを経て一皮むけた19歳の「オリンピック優勝」という夢が現実味が帯びてきました。

藤波選手「もう一回り大きくなる」

日本レスリング協会は世界選手権で金メダルを獲得した選手たちのインタビューをホームページで公開しました。

このうち21日に女子53キロ級を制した藤波朱理選手は「世界選手権で必ず自分が優勝して、そのあとに絶対にパリオリンピックで優勝すると決めていた。まず1つ世界選手権で優勝することができて本当にうれしい」とほっとした様子で振り返りました。

また、パリオリンピック代表内定がかかっていた今大会について「楽しもうと思っていたが、あんまり楽しむことができず、プレッシャーを感じてしまった」と明かした上で「足が動かしづらいというのは初めての経験でそういった部分も含めて一回り成長できたと思う。まだ実感はわかないが、自分の力だけではパリオリンピックには出場できないと思うので、たくさんの人に感謝したい」と話していました。

そして、「パリオリンピックでウイニングランができたらどんなに最高の気持ちなんだろうと思う。残り1年もないが、もう一回り大きくなった藤波朱理を見てもらえるように強化していきたい」と力強く意気込みを述べました。