近代文学代表 和歌山出身 佐藤春夫の家族への手紙100通超発見

近代文学を代表する和歌山県出身の作家、佐藤春夫が家族に宛てて書いた100通を超える手紙が新たに見つかりました。手紙には作家の谷崎潤一郎の妻だった女性と結婚したことについて心配する必要はないと父親に伝える内容もあり、専門家は「父親に対する責任感や気遣いを感じる貴重な資料だ」としています。

佐藤春夫は小説「田園の憂鬱」などの作品で知られ、大正から昭和にかけての文壇を代表する小説家や詩人として活躍しました。

出身地の和歌山県新宮市にある佐藤春夫記念館に親族から寄贈された資料を実践女子大学の研究院などが調べたところ、昭和26年までの35年間に家族に宛てて書いた手紙など118通が新たに見つかりました。

佐藤春夫は親友で作家の谷崎潤一郎の妻だった女性と結婚したことが話題になりましたが、昭和5年9月に38歳だった佐藤が父親に宛てた手紙には、世間を騒がせたことについて「そのうちには自然と本当の事がわかるものと信じています」とか「御懸念御無用」などと、原稿用紙3枚にわたってつづられています。

また、脳出血で倒れた佐藤春夫を看病する妻から佐藤の父親に送られた7通の手紙には入院生活の様子が詳しく書かれていて、病状がこれまで考えられていたより重い様子だったことが新たにわかったということです。

実践女子大学の河野龍也客員研究員は「手紙からは父親に対する長男としての責任感や気遣いを感じ、佐藤春夫と家族との関係性がうかがえて貴重だ」と話していました。