米FRB 利上げ見送り 日経平均株価400円以上値下がり

アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は金融政策を決める会合を開き、20日、利上げを見送りました。同時に参加者の政策金利の見通しを公表し、年内にあと1回の利上げが想定される内容となりました。

FRBは19日と20日、金融政策を決める会合を開き利上げを見送り、政策金利を据え置くことを決定しました。FRBが利上げを見送るのはことし6月以来、2会合ぶりです。政策金利は現在の5.25%から5.5%の幅を維持します。

パウエル議長は会合後の記者会見で「インフレは去年半ばからいくぶん緩やかになっている。賃金の伸びにも鈍化の兆しが見られる」と述べインフレの要因となっている人手不足も改善しているという見方を示しました。

今回は同時に会合の参加者による政策金利の見通しを公表しました。ことしの年末時点の金利水準の中央値は前回・ことし6月時点と同じ5.6%でした。

政策金利の引き上げを1回あたり0.25%とすると、年内にあと1回の利上げが想定される内容となっています。また来年の年末時点の金利水準の中央値は前回より0.5ポイント引き上げられ、5.1%となりました。6月に公表された内容と比べて、高い金利水準が続く想定となっています。

パウエル議長は記者会見で「適切であればさらに金利を引き上げる用意がある」と述べ、インフレを抑え込む姿勢を強調しました。

17:00 円相場 1ドル=148円24~26銭

21日の東京外国為替市場は、20日に示されたFRBの会合の参加者の政策金利の見通しで、来年末時点の金利水準の中央値が前回の見通しから引き上げられたことを受けて、アメリカの金融引き締めが長期化するとの観測が広がりました。

アメリカの長期金利が一段と上昇し、日米の金利差拡大が意識されてドルを買う動きが強まり、円相場は一時、1ドル=148円台半ばまで値下がりして、去年11月以来の円安水準を更新しました。

ただ、松野官房長官が「過度な変動に対しあらゆる選択肢を排除しない」などと発言したことが伝わると、政府・日銀の市場介入に対する警戒感からドルを売って円を買い戻す動きも出ました。午後5時時点の円相場は、20日と比べて11銭、円安ドル高の1ドル=148円24銭から26銭でした。

一方、ユーロに対しては20日と比べて、38銭、円高ユーロ安の1ユーロ=157円96銭から158円ちょうどとなりました。

ユーロはドルに対して、1ユーロ=1.0655から56ドルでした。市場関係者は、「投資家の間では、今後の市場の動きを見極めたいとして、22日公表される日銀の金融政策決定会合の結果と、植田総裁の会見の内容に関心が集まっている」と話しています。

15:00 日経平均株価 400円以上値下がり

21日の東京株式市場は、20日に示されたFRBの会合の参加者による政策金利の見通しなどを受け、アメリカの金融引き締めが長期化するとの観測が広がったことで、半導体などハイテク関連の銘柄に売り注文が広がりました。

▽日経平均株価、21日の終値は20日の終値より452円75銭、安い3万2571円3銭、▽東証株価指数・トピックスは22.59下がって2383.41、
▽1日の出来高は15億6758万株でした。

市場関係者は「FRBの会合を受けて、アジアの主な市場でも株価が下落し、投資家の間で積極的にリスクを取る姿勢がやや弱まったことも押し下げの要因となった。今後の金融市場の行方を見る上で、22日公表される日銀の金融政策を決める会合の結果や植田総裁の会見の内容に注目が集まっている」と話しています。

12:00前 円相場一時 1ドル=148円台半ばまで値下がり

21日の東京外国為替市場、円相場は一時、1ドル=148円台半ばまで値下がりし、去年11月以来の円安水準を更新しています。

市場関係者は、「アメリカの長期金利の上昇で円が売られやすい環境だが、投資家の間では22日まで開かれている日銀の金融政策決定会合とそのあとの植田総裁の会見の内容を見極めたいという思惑もある。また、日本の当局による為替介入への警戒感も一段と高まっている」と話しています。

日経平均株価 一時300円以上値下がり

21日の東京株式市場は、半導体関連の銘柄などに売り注文が出て、日経平均株価は300円以上、値下がりしています。

▽日経平均株価、午前の終値は20日の終値より376円6銭、安い3万2647円72銭、
▽東証株価指数・トピックスは、18.54、下がって2387.46、
▽午前の出来高は8億4131万株でした。

市場関係者は「20日のニューヨーク市場ではFRBの会合の内容などから、アメリカの金融引き締めが長期化するとの観測が広がり、ハイテク関連の銘柄を中心に業績の先行きへの懸念から株価が下落した。この流れを受けて東京市場でも半導体関連などの銘柄に売り注文が広がっている」と話しています。

松野官房長官「過度な変動には適切な対応取りたい」

松野官房長官は、午前の記者会見で「為替相場はファンダメンタルズ=基礎的条件を反映して安定的に推移することが重要だ。国際的に当局どうしで緊密に意思疎通を図っており、過度な変動が望ましくないという認識を共有してきている」と述べました。

その上で「政府としては為替市場の動向を高い緊張感を持って注視し、過度な変動に対してはあらゆる選択肢を排除せず、適切な対応を取りたい」と述べました。

また、21日から始まる日銀の金融政策決定会合について「日銀には引き続き、政府と密接に連携を図り、経済や物価、金融情勢を踏まえつつ物価安定目標の持続的、安定的な実現に向けて適切に金融政策運営を行うことを期待している」と述べました。

日本の長期金利 0.745%まで上昇 2013年9月以来10年ぶりの水準

21日の債券市場では日本国債を売る動きが一段と強まり、長期金利は午前中に0.745%をつけ、2013年9月以来10年ぶりの水準となりました。

20日に、FRB=連邦準備制度理事会の会合の参加者が示した政策金利の見通しの内容などからアメリカの金融引き締めが長期化するとの観測が出て、アメリカの長期金利が、およそ15年10か月ぶりの水準まで上昇しました。

これを受けて日本の債券市場では長期金利がさらに上昇しても日銀がこれを抑える対応を取りにくくなるとの見方から金利の上昇圧力が強まっています。

6:45 円相場は1ドル=148円台前半 ことしの最安値を更新

FRBの見通しの発表前に1ドル=147円台半ばだった円相場は1ドル=148円台前半まで値下がりしていて、ことしの最安値を更新しています。

NY株式市場は値下がり“想定よりも金融引き締めに積極的”

20日のニューヨーク株式市場はFRBのパウエル議長の会見が想定されたよりも金融引き締めに積極的だとの受け止めも出て売り注文が増え、ダウ平均株価の終値は前日に比べて76ドル85セント安い、3万4440ドル88セントでした。

議長「エネルギー価格を注視しなければならない」

パウエル議長

パウエル議長はこのところの原油高について「われわれが食品やエネルギーを除いたコアインフレ率をみているのはエネルギー価格は変動し、インフレがどうなるか把握しにくいからだ。ただ、エネルギー価格は消費者にとってとても重要だ。エネルギー価格が上昇し、高止まりすれば消費に影響を与え、インフレ期待にも影響を及ぼすかもしれないと考えている。だからわれわれはエネルギー価格を注視しなければならない」と述べました。

議長「インフレの上昇圧力が緩和すると予想」

さらに、パウエル議長は「労働市場は依然として引き締まった状態だが、状況は改善している。失業率は8月に上昇したが、3.8%と低い水準だ。労働参加率は去年の後半から上昇し、特に25歳から54歳の参加率が高い。賃金上昇は落ち着く兆候があり、企業からの求人もことしは減少している。会合の参加者は、労働需給の改善が続き、インフレの上昇圧力が緩和すると予想している」と述べました。

議長「適切であればさらに金利を引き上げる用意」

また、パウエル議長は「適切であればさらに金利を引き上げる用意がある。インフレ率がわれわれの目標まで持続的に低下していると確信できるまでは、金融引き締め的な政策を維持するつもりだ」と述べました。

3:30 FRB議長会見「インフレ率2%まで低下は長い道のり」

会合後の記者会見で、FRBのパウエル議長は「インフレは去年半ばからいくぶん緩やかになっている。長期的なインフレ期待は家計や企業への幅広い調査や金融市場の指標から引き続き固定されているとみられる。ただ、FRBの物価目標である2%までインフレ率を低下させるには長い道のりがある」と述べました。

3:00すぎ NY市場で円安進行 一時1ドル=148円台前半に

FRBの会合の参加者が示した政策金利の見通しを受けて、20日のニューヨーク外国為替市場では円安が進み、円相場は一時、1ドル=148円台前半まで値下がりしました。

会合の参加者の政策金利の見通しで来年・2024年末時点の金利水準の中央値が前回の見通しから引き上げられたことを受けて、金融引き締めが長期化して日米の金利差が拡大するとの見方が広がって、円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが強まりました。

《今後の政策金利の見通し》

今回の会合で、FRBは会合の参加者19人による政策金利の見通しを示しました。参加者がそれぞれ適切だと考える金利が点=ドットで示されることからドット・チャートと呼ばれ、市場ではその中央値がFRBが目指す金利水準だと受け止められています。
《2023年末時点の金利水準の中央値は5.6%》
それによりますと、ことし・2023年末時点の金利水準の中央値は5.6%で、前回・ことし6月に示されていた見通しと同じでした。今回の会合で政策金利は5.25%から5.5%の幅で維持されたため、政策金利の1回あたりの引き上げを0.25%とすると、あと1回の利上げが行われる想定です。
《2024年末時点の金利水準の中央値は5.1%》
一方、来年・2024年末時点の金利水準の中央値は5.1%と、前回の見通しで示されていた4.6%から0.5ポイント引き上げられました。

前回は来年中に1%の利下げが行われる想定となっていましたが、今回の見通しでは利下げの幅は0.5%に縮小した形です。これは、政策金利の1回あたりの引き下げを0.25%とすると、想定される利下げの回数が4回から2回に減ったことになります。
【個人消費支出の物価指数の見通し】
FRBは、インフレの実態を見極める指標として重視しているPCE=個人消費支出の物価指数の上昇率の見通しも示しました。それによりますと、ことし10月から12月のPCEの物価指数の上昇率は去年の同じ時期と比べて3.3%と、前回・ことし6月時点の見通しの3.2%から引き上げられました。一方、ことし10月から12月の、価格変動の大きいエネルギーと食品を除いたPCEの物価指数の上昇率については3.7%と、前回の見通しの3.9%から引き下げられました。

FRBが目標とする2%の物価の水準を引き続き上回り、根強いインフレが想定されることが示されました。
【平均失業率・GDP=国内総生産の見通し】
このほか、ことし10月から12月の平均の失業率については3.8%と予測し、ことし6月時点の見通しの4.1%から引き下げられました。また、ことし10月から12月のアメリカのGDP=国内総生産の予測は、去年の同じ時期と比べた実質の伸び率で、ことし6月時点の見通しの1%から2.1%に引き上げられました。利上げを続ける中でも、アメリカ経済が堅調であることを見込む想定となっています。

=これまでの政策の経緯=

《2022年》
《3月「3年3か月ぶりの利上げ=0.25%」》
2021年12月以降消費者物価指数の上昇率が7%以上となりインフレが加速したことからFRBは去年3月の会合で0.25%の利上げを決めてゼロ金利政策を解除。金融引き締めへと転換します。利上げは3年3か月ぶりでした。
《5月「22年ぶりの0.5%利上げ」》
さらに去年5月の会合で22年ぶりとなる0.5%の利上げと、「量的引き締め」と呼ばれる金融資産の圧縮に乗り出すことも決めました。金融引き締めによって景気を冷やすことでインフレを抑えこむ狙いでした。
《6月から11月まで4会合連続で0.75%の利上げ》
しかし、その後もインフレに収束の兆しは見えず、6月以降、11月の会合まで4回連続で0.75%という大幅な利上げを決めました。
《12月=0.5%の利上げ》
その後発表された消費者物価指数は上昇率が前の月を下回る傾向が続いたことなどから去年12月の会合では利上げ幅を縮小し、0.5%の利上げを決めました。去年3月にゼロ金利政策を解除し利上げを開始して以降、利上げ幅の縮小は初めてでした。
《2023年》
《1月・2月=0.25%の利上げ》
さらに、ことし1月31日と2月1日に開いた会合では0.25%の利上げと、上げ幅を縮小し、会合後の会見でパウエル議長は「インフレが収まっていく過程が始まった」と言及しました。しかし、その後ふたたびインフレの根強さを示す経済指標が相次ぎ、パウエル議長は3月7日の議会証言で今後の経済指標しだいで「利上げのペースを加速させる用意がある」と述べました。市場ではインフレを抑え込むために0.5%の大幅な利上げに踏み切るという観測が高まりました。
《3月=0.25%の利上げ》
この議会証言の直後、3月10日と12日に「シリコンバレーバンク」、それに「シグネチャーバンク」と銀行破綻が相次ぎました。3月の会合では利上げが金融システムに及ぼす影響を踏まえ0.25%の利上げにとどめました。
《5月=0.25%の利上げ》
また5月の会合では直前に「ファースト・リパブリック・バンク」が史上2番目の規模で経営破綻しましたが、FRBは再び0.25%の利上げを決めました。去年3月以降、利上げは10回連続でした。
《6月=利上げ見送り》
6月の会合では利上げなどそれまでの金融政策の影響を評価するためなどとして利上げを見送りました。FRBが金利を据え置くのは去年3月に利上げを開始して以降、初めてでした。
《7月=0.25%の利上げ》
しかし、前回・7月の会合では、インフレの要因である人手不足が続いていることなどから0.25%の利上げを決定しました。これによって政策金利は5.25%から5.5%の幅となり、2001年以来、22年ぶりの高い水準となっています。

今回の会合では、FRBが重視する変動の大きい食品やエネルギーを除いた先月の消費者物価指数がおととし9月以来、1年11か月ぶりの低い水準となったことや▽人手不足に改善の兆しが出ていることから市場ではFRBが利上げを見送るとの見方が強まっていました。