ふるさと納税 10月から返礼品の寄付額値上がり?廃止の品も…

10月からふるさと納税の寄付額を引き上げたり一部の返礼品を廃止したりする自治体が相次いでいます。

総務省が過度な返礼品競争を防ぐため、基準を厳格化することによるもので、駆け込みで寄付をする動きも広がっています。

「10月から値上げ予定」いったいなぜ?

ふるさと納税の仲介サイトには今、寄付額について「10月から値上げ予定」などと記載する自治体が相次いでいます。

総務省が過度な返礼品競争を防ぐため、返礼品の調達費用や送料など経費の総額を寄付額の5割以下とするよう来月から基準を厳格化することにともなう対応です。

ことし6月、総務省は寄付の受領書の発送費用や仲介サイトへの手数料なども含めるよう、自治体に通知しました。

これを受け、山形県最上町は米やサクランボ、芋煮のセットなどおよそ350ある返礼品のうち、300ほどの寄付額を来月から引き上げることにしているということです。

山形県最上町の担当者
「“値上げ”が、寄付額にどの程度、影響してくるのかどうかは、なかなか予測できません。事業者も例年の寄付額を見て対応してくれていることもあり担当者としては周知から制度の変更までもう少し時間がほしかった」

また、大分県杵築市も「10月から値上げ予定」などと柑橘類をはじめとした返礼品の寄付額を引き上げることについてサイトで周知を始めています。

大分県杵築市の担当者
「広告費など、今になって変更ができないものもあり、例年にない作業が発生したが、全国で同じ条件での変更なので制度にのっとった対応をするしかない。『お得感』というより、地域柄が出る特産品を引き続き、返礼品にしていきたい」

“駆け込み”で寄付の動きが…

10月から寄付額の引き上げなどが行われるのを前に、“駆け込み”で寄付をする動きも広がっています。

ふるさと納税仲介サイト「ふるさとチョイス」の運営会社によりますと、例年、年末にかけて寄付額が急増しますが、ことし7月から今月中旬までの寄付金額は、前の年の同じ時期と比べておよそ1.5倍に増えているということです。

紋別市で人気のホタテも…

ふるさと納税の寄付額が昨年度、全国で2位だった北海道紋別市は10月からおよそ700品目のうちホタテやいくらなど9割ほどで寄付額を引き上げる予定です。

一方で、先月は、前の年の同じ時期の2倍近くに、寄付額が増加しているといいます。

市によりますと、10月からの基準の厳格化を前にした“駆け込み”の寄付の動きに加え、処理水の問題を受けて中国が水産物の輸入を停止していることに対する応援の動きもあるとみています。

北海道紋別市の担当者
「紋別市を知らなかった人もふるさと納税をきっかけに応援の気持ちを持ってくれるのはうれしいことで、これからもその気持ちに応えられるよう取り組んでいきたい」

返礼品として認められない…危機感強める泉佐野市

一方、必要経費の基準に加え、10月から返礼品の基準も改正され、「熟成肉」と「精米」は原材料が同じ都道府県内で生産されたものでなければ返礼品として認められなくなります。

この変更に危機感を強めているのが、大阪・泉佐野市です。

泉佐野市

泉佐野市では昨年度の寄付総額137億7200万円のうち、「熟成肉」が28億円、「精米」が4億5000万円で合わせて全体の24%にのぼりますが、このままでは返礼品の廃止を余儀なくされる状況です。

「熟成肉」は新たに返礼品として贈る地場産品を生み出そうと市が企業を募集して「熟成肉」をつくる施設がおととし完成したばかりでした。

このうち「熟成庫」だけでも設備投資には数千万円がかかっているといいます。

2021年3月 完成した「熟成肉」をつくる施設

泉佐野市によりますと、10月から基準が変わることで、市の返礼品として「熟成肉」と「精米」を扱う4つの事業者が、昨年度の寄付額ベースで合わせておよそ10億円の売り上げを失うことになり、事業所の規模縮小や雇用の維持が難しくなることも考えられるといいます。

大阪・泉佐野市 ふるさと納税担当 塩見健 理事
「1次産品が豊富ではなくても“ないならつくろう”と取り組みを進めてきて、これまでは認められていたのに突然『出したらあかんよ』となっている現実がある。事業者の影響をなんとか最小限にできないか総務省や大阪府と相談を続けていきたい」

“駆け込み”寄付の前に上限額の見極めを

ふるさと納税は、寄付額のうち2000円を超える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度ですが、その金額には上限があります。

例年は、年収が確定し、実質負担が2000円で寄付できる上限が確定する12月に、最も多く寄付が集まります。

ことしは10月からの基準の厳格化に伴い、寄付が増えていますが、“駆け込み”寄付をする場合には、それぞれの上限額を見極める必要がありそうです。

ふるさと納税の仲介サイトの担当者は「控除の上限額のシミュレーション機能もあるので、うまく活用してほしい」と話しています。

納税者が寄付先を選び、税の使われ方について考えるきっかけとなるふるさと納税制度。

返礼品はもちろん魅力的ですが、皆さんはどこの地域を応援したいですか?