新型コロナ オミクロン株派生型対応ワクチン 全世代で接種開始

新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される冬を前に、20日から生後6か月以上のすべての人を対象にしたワクチンの接種が始まりました。使用されるのは、オミクロン株の派生型に対応したワクチンで、希望する人は、自己負担なしで接種することができます。

新型コロナウイルスは、ことし5月に法的位置づけが5類に変更されましたが、厚生労働省は今年度末まで自己負担なしで接種することができる特例接種を続けています。

20日から冬に懸念される感染拡大に備え、希望する生後6か月以上のすべての人を対象にした接種が始まりました。

東京 港区のクリニックでは午前9時から予約していた住民が訪れ、医師がワクチンの種類などを説明した上で接種を行っていました。

使用されるのは、オミクロン株の派生型「XBB」系統に対応するファイザーとモデルナのワクチンで、接種を希望する場合は、自治体から接種券を受け取り、病院などで接種を受けることができます。

厚生労働省は自治体が住民に接種を勧める「接種勧奨」や、接種を受けるよう努めなければならないとする「努力義務」について、今回の接種からは高齢者や基礎疾患がある重症化リスクの高い人にのみ適用し、それ以外の65歳未満の健康な人には接種勧奨や努力義務を適用しないことになりました。

また、多くの自治体で来月から始まるインフルエンザワクチンと新型コロナワクチンを同時に接種しても、安全性や有効性に問題はないとしています。

接種した65歳の男性は「コロナに感染するととてもつらいと知人が話していたので怖いです。ワクチンを接種しましたが、手洗いなどの対策も続けたいです」と話していました。

全額公費での特例接種は今年度末までで終了することが決まっています。

厚生労働省は、来年度以降の新型コロナワクチンの接種については、一部自己負担が生じるケースもある「定期接種」に移行することも含めて、検討しています。

「XBB.1.5」対応ワクチンとは 「EG.5.1」への効果は

20日、接種が始まるワクチンは、新型コロナウイルスのオミクロン株の一種、「XBB.1.5」に対応した成分が含まれたワクチンです。

国立感染症研究所によりますと現在、流行の主流となっているのはXBB系統からさらに変異した「EG.5」と呼ばれる変異ウイルスで、今週の時点では、このうち「EG.5.1」が63%を占めると推定されています。

この「EG.5」はWHO=世界保健機関が「VOI=注目すべき変異ウイルス」に指定して監視しています。

「XBB.1.5」対応のワクチンを開発したアメリカの製薬会社2社は、ワクチンの効果について、臨床試験などの結果として「EG.5」や「BA.2.86」など、新たに広がりをみせる変異ウイルスに対しても免疫の反応がみられたとしています。

また、東京大学医科学研究所の佐藤佳教授が主宰する研究グループ「G2P-Japan」によりますと、培養細胞を使った実験から「EG.5.1」は、感染力がこれまでの「XBB」系統より下がっていた一方で、免疫を逃れる能力は高くなっている可能性があるとしています。

佐藤教授は、「EG.5.1」について「何度も感染するおそれもあり、感染対策に気をつけるしかない」としたうえで「ワクチンの接種によって重症化予防の効果は期待できるだろう」としています。

また、感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎特任教授は「ワクチンの効果には、重症化予防と感染予防があるが『XBB.1.5』対応のワクチンは『EG.5』に対しても重症化予防の効果は十分に期待できる。高齢者や慢性疾患のある人などは感染すると重症化のおそれがあり、できるだけ接種を受けてほしい。それ以外の人たちも、感染予防の効果がある程度、期待できるし、感染した場合に後遺症を防ぐことも期待できる。接種するかどうかは副反応と効果をてんびんにかけて各自で判断することになるが、メリットのほうが上回っているのではないかと考えている」と話していました。

接種を受けるためには?

厚生労働省によりますとこれまでに国はファイザーのワクチンを2000万回分、モデルナのワクチンを500万回分確保しているということです。

接種を受けるためには、今回も自治体が発行する接種券が必要ですが、接種券が対象者全員に送付されるとは限らず、対象者からの申請を受けて接種券を発行したり、接種会場で接種券を発行したりするところもあり、各自治体の判断によって対応が分かれます。

接種できる場所は地域の病院や診療所などが中心ですが、一部の自治体では集団接種会場を設置するところもあるということです。

厚生労働省は接種を希望する場合は自治体の相談窓口やホームページなどを確認して欲しいとしています。

東京都の大規模会場でも接種開始

都は新型コロナワクチンの大規模接種会場を都庁北展望室と千代田区にある三楽病院の2か所に設けています。このうち、都庁の北展望室の会場には、20日午前、事前に予約をした人が次々と訪れ、接種を受けていました。

都によりますと、20日は500人分の予約枠はすべて埋まっているものの、空きがあれば予約がなくても接種を受けられるということです。

接種を受けた20代の女性会社員は「去年の秋から接種を受けていなかったので来た。営業職で人と接する場面も多いので気をつけたい」と話していました。

都の木村圭介ワクチン担当課長は「感染症法上、5類に移行されたが、現在も感染は拡大している。今回のワクチンは、感染の主流になっているXBB系統の「EG.5」にも効果があると言われているので、接種の検討をしてほしい」と話していました。

ワクチン接種 これまでに4億700万回余

政府のまとめによりますと新型コロナワクチンの接種は、9月17日までの時点で合わせて4億700万回余り行われたということです。

このうち、42%にあたる1億7400万回余りが65歳以上の高齢者に対する接種です。また接種した回数別にみると「初回接種」にあたる2回目の接種を終えている人は79.8%、3回目の接種を終えている人は68.8%です。

一方で高齢者の接種率は高く、3回目の接種を終えている人は91.5%にのぼります。

これまで使用の従来型対応ワクチン 廃棄へ

オミクロン株の派生型に対応した新型コロナワクチンの接種が始まるのに合わせて、厚生労働省は、これまで使っていたワクチンの廃棄について発表しました。

このうち、従来株に対応したファイザーのワクチンは、購入したおよそ2億7480万回分のうち、使用しなかった830万回分を廃棄します。

また、オミクロン株に対応した2価ワクチンについては、ファイザーから購入したおよそ1億2510万回分のうち21%あまりにあたるおよそ2650万回分と、モデルナから購入したおよそ7000万回分のうち73%余りにあたるおよそ5150万回分は、有効期限をむかえたものから順次廃棄する予定です。

厚生労働省は「感染が拡大する中で色々な可能性を視野に入れて必要なワクチンの量を確実に確保できるよう購入を進めてきたので、廃棄されるものもあるが購入した行為自体は無駄ではないと考えている」としています。

松野官房長官「正確で分かりやすい情報発信に努める」

松野官房長官は午前の記者会見で「重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患をお持ちの方にはワクチン接種を検討いただきたい。政府としては引き続き、ワクチンの有効性や安全性について科学的知見に基づいた正確で分かりやすい情報発信に努めることとしており、さまざまな媒体を通じて発信していく考えだ」と述べました。