「火山調査研究推進本部」設置に向け国や研究者などが会合

火山の対策を強化するため来年4月に設置される「火山調査研究推進本部」の設置に向けて、国や研究者などによる会合が開かれ、長期間に及ぶ火山活動の予測の方法や必要な観測体制などについて議論が行われました。会合では来年春にかけて具体的な検討を進めることにしています。

国内にある活火山の観測や研究をめぐっては、気象庁や大学、研究機関がそれぞれ進めてきましたが、対策の強化に向けて一元的に分析や評価を行う「火山調査研究推進本部」が来年4月、文部科学省に設置されることになっています。

19日に開かれた会合には火山研究者や関係する省庁の担当者が参加し、火山本部が担う役割や具体的な内容について議論しました。

この中で、火山本部が一元的に行うとする火山活動の評価については、影響が数年単位におよぶおそれもあることから、噴火が起きたあとも含めた活動の評価が重要だとして、推移の予測に取り組むべきとの意見が出されました。

一方で、中長期的な活動予測に向けた手法は確立していないことから、開発に向けた研究も行っていくべきだとの意見もあり、今後さらに検討することになりました。

このほか、依然として観測体制が十分でない火山が多く、観測網の整備を早急に進めるべきだといった意見が相次ぎました。

会合は来年3月末に向けて数回開かれ、意見の集約を図ったうえで、議論の結果を4月に設置される火山本部に報告することにしています。

座長を務める九州大学の清水洋名誉教授は「火山では噴火が切迫した際や噴火したあとの推移が非常に重要で、社会の求めもあり、そこの評価は避けて通ることができない。災害の危険性の評価をどこまでできるのかなど議論を重ねながら、防災や減災に寄与できるよう意見を集約していきたい」と話していました。

「火山調査研究推進本部」とは

日本には世界のおよそ1割にあたる111の活火山があり、気象庁のほか研究機関や大学などが観測や研究を行っています。

国内の地震活動については「地震調査研究推進本部」があり、活動の評価やそのために必要な調査や研究のための予算などを一元的にとりまとめていますが、火山についてはこうした組織はありません。

このため、活火山を抱える自治体や研究者などからは長年、対策の強化を求める声があり、ことし6月には活動火山対策特別措置法が改正されて、来年4月から文部科学省に「火山調査研究推進本部」を設置することが決まりました。

本部には観測や調査の計画策定や予算の調整を行う政策委員会と、行政や大学の調査結果を集めて分析や評価を行う火山調査委員会が設けられますが、具体的な活動内容は今後、議論されることになっています。

火山推進本部について研究者からは「火山防災を前に進める大きな前進だ」などと設置を歓迎する声がある一方、後継者の減少など課題は深刻化していて、課題解決につながる組織をいかにつくるのか、今後の議論が重要だと指摘する声もあがっています。

専門家「一元的な体制づくりが必要」

「火山調査研究推進本部」の設置に向けた準備会の副座長を務める山梨県富士山科学研究所の藤井敏嗣所長によりますと、日本の火山の観測や研究は気象庁や大学などがそれぞれ行い、得られたデータを共有して火山活動の予測や防災に活用しているということです。

一方、観測機器の維持にかかる費用のほか、観測のための旅費なども大学の研究者それぞれで確保する必要があり、研究者からは満足な研究がしづらいという声が上がっているということです。

火山はひとたび噴火すると広範囲で長期的に影響が出るおそれもありますが、明確な前兆がないまま噴火する場合がある一方、火山性地震や地殻変動が観測されても噴火に至らないケースも多く、火山活動を正確に予測するのは難しいのが現状です。

▽2014年の御嶽山や
▽2018年の草津白根山の噴火は登山などの規制が必要ない噴火警戒レベルが「1」のときに発生し、御嶽山では死者・行方不明者が63人にのぼり、草津白根山でも1人が亡くなっています。

また、噴火の規模や噴火後の活動の推移を予測する手法も確立されておらず、藤井所長は
▽観測を充実させるほか
▽過去の噴火履歴を詳細に調べることや
▽火山を専門とする研究員の確保や育成が必要だと指摘しています。

藤井所長は「日本では100年近く大規模な噴火が起きていないが、これから先、必ず起こるものだ。その前に一元的な体制づくりが必要だ。気象庁や火山研究者たちで協力をして、きちんとした本部を作らなければいけない」と話していました。