コロナ オミクロン株派生型対応ワクチン 全世代で接種開始へ

新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される冬を前に、20日から生後6か月以上のすべての人を対象にしたワクチンの接種が始まります。使用されるのはオミクロン株の派生型に対応したワクチンで、希望する人は自己負担なしで接種することができます。

新型コロナウイルスはことし5月に法的位置づけが5類に変更されましたが、厚生労働省は今年度末まで自己負担なしで接種することができる特例接種を続けています。

そして、冬に懸念される感染拡大に備え、20日から希望する生後6か月以上のすべての人を対象にした接種が始まります。

使用するのはオミクロン株の派生型「XBB」系統に対応するファイザーとモデルナのワクチンで、接種を希望する場合は自治体から接種券を受け取り、病院などで接種を受けることができます。

ただ、今回の接種から、厚生労働省は自治体が住民に接種を勧める「接種勧奨」や、接種を受けるよう努めなければならないとする「努力義務」については、高齢者など重症化リスクの高い人にのみ適用します。

また、多くの自治体で10月から始まるインフルエンザワクチンと新型コロナワクチンを同時に接種しても、安全性や有効性に問題はないとしています。

厚生労働省は「接種の機会は生後6か月以上の全員に提供されるので、接種を悩まれている方はこれまでと同様に、国のリーフレットなどを参考に個人の判断で検討してほしい」と話しています。

接種受けるには

厚生労働省によりますと、これまでに国はファイザーのワクチンを2000万回分、モデルナのワクチンを500万回分確保しているということです。

接種を受けるためには今回も自治体が発行する接種券が必要です。

接種できる場所は地域の病院や診療所などが中心ですが、一部の自治体では集団接種会場を設置するところもあるということです。

厚生労働省は接種を希望する場合は自治体の相談窓口やホームページなどを確認してほしいとしています。

「XBB.1.5」ワクチンどう考える

20日、接種が始まるワクチンは新型コロナウイルスのオミクロン株の一種、「XBB.1.5」に対応した成分が含まれたワクチンです。

国立感染症研究所によりますと、現在、流行の主流となっているのはXBB系統からさらに変異した「EG.5」と呼ばれる変異ウイルスで、今週の時点では、このうち「EG.5.1」が63%を占めると推定されています。

この「EG.5」はWHO=世界保健機関が「VOI=注目すべき変異ウイルス」に指定して監視しています。

「XBB.1.5」対応のワクチンを開発したアメリカの製薬会社2社はワクチンの効果について、臨床試験などの結果として「EG.5」や「BA.2.86」など、新たに広がりをみせる変異ウイルスに対しても免疫の反応がみられたとしています。

また、東京大学医科学研究所の佐藤佳教授が主宰する研究グループ「G2P-Japan」によりますと、培養細胞を使った実験から「EG.5.1」は、染力がこれまでの「XBB」系統より下がっていた一方で、免疫を逃れる能力は高くなっている可能性があるとしています。

佐藤教授は「EG.5.1」について、「何度も感染するおそれもあり、感染対策に気をつけるしかない」としたうえで、「ワクチンの接種によって重症化予防の効果は期待できるだろう」としています。

また、感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎特任教授は「ワクチンの効果には重症化予防と感染予防があるが、『XBB.1.5』対応のワクチンは『EG.5』に対しても重症化予防の効果は十分に期待できる。高齢者や慢性疾患のある人などは感染すると重症化のおそれがあり、できるだけ接種を受けてほしい。それ以外の人たちも感染予防の効果がある程度、期待できるし、感染した場合に後遺症を防ぐことも期待できる。接種するかどうかは副反応と効果をてんびんにかけて各自で判断することになるが、メリットのほうが上回っているのではないかと考えている」と話していました。