“その人らしさは変わらない”認知症の母を介護の脳科学者語る

脳科学者の女性が認知症になった母を介護したみずからの経験を語る講演会が都内で開かれ、「認知症になってもその人らしさは変わらない。ことばだけで判断すると介護するうえでの本質を見逃す可能性がある」と訴えました。

今月21日の世界アルツハイマーデーを前に東京 新宿区で開かれた講演会には、東京大学大学院の特任研究員で脳科学者の恩蔵絢子さんがゲストに招かれ、会場には認知症の人の家族などおよそ260人が集まりました。

恩蔵さんは、8年前にアルツハイマー型認知症と診断された母がことし5月に亡くなるまで、自宅などで介護を続けた経験があります。

講演会で、恩蔵さんは「認知症によって記憶をことばにすることは難しくなるが、心が大きく動いたことばや体験は体が覚えていて感情は機能している。認知症になってもその人らしさは変わらず、ことばだけで判断すると介護するうえでの本質を見逃す可能性がある」と訴えました。

そのうえで「認知症になると人格が変わるという人もいるが誰でも自信を失うと攻撃的になる。不安をカバーできる安全基地のような場があると症状が緩和されることもある」と話しました。

講演を聴いた80代の男性は「認知症の人の感情が高ぶりやすいのは不安が原因だと分かった。今後は地域の活動などで認知症の人を受け止めるような話し方を実践してみようと思う」と話していました。

また、40代のケアマネージャーの女性は「服を着てといった指示だけでなく、一見むだに思える日常会話が本人や家族を安心させるきっかけになると分かった。担当する家族に講演の話を伝えたい」と話していました。