両親殺害の19歳の長男に懲役24年の判決 佐賀地裁

ことし3月、佐賀県鳥栖市の住宅で両親を殺害したとして殺人の罪に問われた19歳の長男に対し、佐賀地方裁判所は「父親の虐待行為によって追い詰められたことについては同情すべき部分があるが、計画的で強い殺意に基づいた犯行で、長期間の実刑をもって臨むほかない」として、懲役24年の判決を言い渡しました。

19歳の被告は、九州大学の学生だったことし3月、佐賀県鳥栖市の実家で、50代の父親と40代の母親をナイフで刺すなどして殺害したとして殺人の罪に問われました。

これまでの裁判員裁判で、検察は「2人の命を奪った反社会性は著しい」と懲役28年を求刑した一方、弁護側は「事件は成績をめぐって父親から継続的に教育虐待と身体的・心理的虐待を受けた結果だった」として、保護処分か懲役5年が相当だと主張していました。

15日の判決で、佐賀地方裁判所の岡崎忠之裁判長はまず、争点となった母親に対する殺意について、「ナイフで4か所もの致命傷を負わせているうえ、その後も救命措置を行っておらず、殺意があったことは十分認定できる」としました。

そのうえで「少年院に収容した場合、その期間は長くて3年で、肉親を手にかけた罪の重さに向き合う期間として不十分であり、保護処分による更生の可能性は乏しい」と述べました。

そして「幼少期から父親の心理的・身体的な虐待を受けたことが殺害の決意に影響していて、殺害しようと考えるまで追い詰められたことについては同情すべき部分があるが、計画的で強い殺意に基づいた犯行だ。母親を巻き添えにした動機や経緯も身勝手で自己中心的であり、相当、長期間の実刑をもって臨むほかない」として、懲役24年を言い渡しました。

裁判長 “罪の重さに改めて向き合い 深く考えるための期間に”

判決を言い渡したあと、岡崎裁判長は「懲役24年は決して短い期間ではないと思いますが、両親を手にかけた罪の重さに改めて向き合い、深く考えるための期間にしてもらいたい」と述べました。

そのうえで、裁判の中で長男が、この先の人生について「消化試合」と述べたことに言及し「あなたがそのような気持ちで生きていくことは、あなたのことを思ってくれる妹や親族だけでなく、亡くなったお父さんやお母さんも望まれていないはずです。いつかあなたが人生の目標を持って生きられるようになってもらいたい。それが事件を担当した裁判員と裁判官の心からの願いです」と諭しました。

検事 “おおむね適切な判決”

判決について、佐賀地方検察庁の千代延博晃次席検事は「おおむね適切な判決であると受け止めている」としています。

弁護士 “本人や親族の意向踏まえ 控訴するか決めたい”

判決について、松田直弁護士は「こちらの主張が受け入れられず厳しい判決だったと思う。判決内容をよく検討し、本人や親族の意向を踏まえたうえで控訴するかどうか決めたい」と話しています。

両親の親族 “重い刑科す必要あるのか”

殺害された両親の親族は、長男の早期の社会復帰を望んでいました。

判決について、親族は弁護士を通じてコメントを発表し、この中で「到底受け入れられるような内容ではありません。長年、父親からの虐待に苦しんだ末の思い詰めた結果だということを、もっと重視してほしかったです。家族間の殺人は同じような事件の再犯率が極めて低いと聞いているので、ここまで重い刑を科す必要があるのか疑問です」とつづっています。