新型コロナの患者支援 10月から見直し 治療薬の一部自己負担に

新型コロナウイルスの患者への支援について、厚生労働省は、これまで全額公費で負担してきた高額のコロナ治療薬の一部自己負担を求めるなど、来月から見直すことになりました。

新型コロナウイルスは感染症法上の位置づけが、ことし5月に「5類」になりましたが、厚生労働省はその後も患者や医療機関への支援を一部継続してきました。

厚生労働省は15日、来月から行う支援の縮小の具体的な内容を公表しました。

患者への支援見直し

このうち、患者への支援の見直しでは、現在、全額公費で負担している高いもので9万円を超える高額なコロナ治療薬について、来月からは一部自己負担を求めることになりました。

年齢や所得に応じて、3000円から9000円の自己負担を求めるということです。

また、入院医療費については、これまで、1か月当たりの医療費が高額になった場合、「高額療養費制度」を適用したうえで、さらに最大2万円を補助してきましたが、来月からは補助額を半額の最大1万円にすることにしています。

医療機関への支援見直し

一方、医療機関への支援の見直しでは、これまで医療機関が新型コロナの入院患者の受け入れに備えて病床を空けた場合、「病床確保料」として補助金を支払う、いわゆる「空床補償」をしてきましたが、来月からは感染状況が一定の基準を超えて拡大するまで支給しないことになりました。

このほか、特例で加算していた診療報酬や、高齢者施設への支援についても見直します。

厚生労働省は、新型コロナウイルスへの支援策を、来年4月からは季節性インフルエンザなどの感染症と同様の対応とする方向で見直しを行うことにしています。

治療薬の一部自己負担 処方断る人が出てくる懸念

これまで重症化リスクのある患者に新型コロナの治療薬を処方してきた都内のクリニックの医師は、今後、薬の一部が自己負担となると処方を断る人や受診を控える人が出てくるのではないかと懸念しています。

東京・渋谷区のみいクリニック代々木では、発熱外来で一日20人から30人ほどの患者を受け付けています。

新型コロナ陽性と診断される患者の割合は、8月は3割程度でしたが、9月に入ってからは4割と増加しているということです。

クリニックではこれまで、新型コロナに感染した人のうち、基礎疾患がある人や高齢者などの重症化リスクが高い患者、それに症状が重い患者に対しては自己負担なしで利用できる新型コロナの治療薬を処方してきたということですが、医師によりますと、患者の多くは服用後、のどの痛みが緩和したり、熱が下がったりしているということです。

来月からこの治療薬の一部が自己負担になることについて、みいクリニック代々木の宮田俊男理事長は「財政上やむをえない部分もあると思うが、新型コロナの治療薬は新薬で高額なので、薬が一部自己負担になると薬を飲むことを断る人が出るかもしれない。感染初期でないと投与の対象にならない薬もあるため、治療の選択肢を広げる意味でもクリニックにかかってほしい。家で我慢したことで重症化してしまうのではないかと懸念している」と話していました。

医療機関の労力は今でも大きい 支援策のあり方検討すべき

今回の支援策の見直しについて、感染症が専門で、厚生労働省の感染症部会の委員も務める国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は「新型コロナの患者を受け入れる医療機関は、十分に増えているとは言えない。さらに来月から、病床確保料などの支援策が削減され入院患者を受け入れる医療機関が減り、ベッドを探すのが難しくなるおそれがある。新型コロナの患者を受け入れる医療機関の労力は今でもとても大きいので、それに見合うような支援策のあり方ついては今後も検討するべきだ」と指摘しました。

また「医療のひっ迫を防ぐためには、重症化リスクの高い人が適切に治療薬を使うことも大切だ。来月からは治療薬に自己負担が求められ薬を使うべきか悩む患者も出てくると思うので、医療従事者側がどのような人に治療薬を使うべきなのか理解をしたうえで、丁寧に患者とコミュニケーションを取ることが求められる」と話していました。

そのうえで「新型コロナに関する情報が減ってきていると感じているが、現在でもリスクの高い人が感染すると命に関わる病気であることに変わりはない。そのことを認識し対策を行ってほしい」と話していました。