中国 8月の新築住宅価格指数 52都市で下落 市場低迷の影響は

中国の8月の新築の住宅価格指数は、主要な70都市のうち、52都市で前の月から下落しました。下落した都市の数は、前の月から3都市増えており、不動産市場の低迷が中国経済にとって大きな懸念材料となっています。

新築住宅価格指数 52都市で前月から下落

中国の国家統計局が15日発表した先月の新築の住宅価格指数は、主要な70都市のうち、およそ74%にあたる52都市で前の月から下落しました。
下落した都市の数は、前の月の49都市から3都市増えました。一方、上昇したのは17都市で1都市は横ばいでした。

都市別に見ますと、大都市では、
▽上海が0.1%上昇した一方
▽北京が0.2%
▽広州が0.3%
▽深センが0.6%、それぞれ下落しました。
▽規模の小さい地方の都市の平均は0.4%下がり、不動産価格の下落が各地に広がっていることを示しています。

また国家統計局は15日、ことし1月から先月までの不動産投資額も発表し、投資額は、去年の同じ時期と比べて8.8%減少しました。
下落幅は、7月までの8.5%から拡大していて、不動産市場の低迷が続いていることが改めて裏付けられました。
中国では不動産大手の経営悪化が深刻になっていて、不動産市場の低迷が回復のペースが鈍化している中国経済にとって大きな懸念材料となっています。

不動産市場の低迷 地方財政の悪化も…

不動産市場が低迷し、大手企業の経営悪化が相次いで明らかになる中、地方財政の悪化も懸念されています。

中国では、土地は国が所有し、地方政府が土地の使用権を不動産開発会社に売ってその収入をインフラ開発などの財源にあててきました。しかし、不動産会社の業績悪化に伴って、この使用権の売却収入が落ち込んでいて、不動産業界に依存して経済を成長させてきた地方政府にとって、大きな痛手となっています。

こうした中、地方政府の傘下で資金調達を行い、インフラ開発を担う「融資平台」と呼ばれる投資会社の債務の増加が問題視されています。

「融資平台」の借金 「隠れ債務」も多く含まれると指摘

「融資平台」は銀行から融資を受けたり、債券を発行したりして、財源を確保し、公共事業などを行って地域経済を支えてきました。
「融資平台」の借金には地方政府が実質的に返済を保証する、「隠れ債務」も多く含まれると指摘されています。

IMF=国際通貨基金は、「融資平台」の債務の残高が、ことしは、66兆人民元、1320兆円になるという見通しを示しています。「融資平台」の経営が悪化してデフォルト=債務不履行が起きれば債務保証を通じて地方政府の財政が悪化し、地域の経済に深刻な打撃を与えるとも指摘されています。

地方財政の悪化が深刻な都市は

中国内陸部 貴州省の遵義

地方財政の悪化が深刻になっている都市の1つ、中国内陸部、貴州省の遵義です。2012年に中央政府が地域間の格差を埋めるため、貧困層が多い地方を中心に投資を呼びかけたことを受け、インフラ投資を加速させました。

市内の複数の大規模プロジェクトが建設途中で放置

オリンピックセンター

高速道路などのインフラが次々と整備されたほか、市の郊外には、「オリンピックセンター」と名付けられた巨大なスポーツ施設や、豪華な国際会議場などが建設されました。開発を手がけたのは、地方政府の傘下にある投資会社、「融資平台」です。ただ、採算性の乏しい事業への投資も多く、「オリンピックセンター」の体育館や陸上競技場、それに屋内プールなどの設備では利用している人の姿は見られませんでした。国際会議場も使われている形跡はなく、ひっそりとしていました。

建設が止まった高速道路

不動産市場の低迷によって土地の使用権の収入が減少し、地方財政が悪化したことで、「融資平台」に対する支援余力が低下。さらに債務を急拡大させてきた「融資平台」は、資金繰りが急速に悪化し、去年、遵義傘下の「融資平台」は、銀行から融資された3000億円にのぼる債務の返済を20年繰り延べることを決めました。

市内では、新市街と旧市街を結ぶ高速道路など、複数の大規模プロジェクトが建設途中で放置され、止まったままとなっています。中国国内では、1万以上にものぼる「融資平台」があるとされ、中国経済の大きな懸念材料となっています。

「工業生産」「小売業の売上高」はプラスに

一方、国家統計局が発表した先月の工業生産は前の年の同じ月と比べて4.5%のプラスとなり、伸び率は、前の月の3.7%から拡大しました。

輸出は減少が続いているものの、中国国内でのEV=電気自動車などの需要拡大を背景に、自動車の生産が伸びていることなどが主な要因です。

また、消費の動向を示す「小売業の売上高」は、ゼロコロナ政策の解除後、初めての夏休みを迎え、レジャーなどの需要が高まったことから、前の年の同じ月と比べて4.6%のプラスとなりました。