臨時国会召集せず違憲の裁判 判断せず上告退ける 最高裁

6年前、野党議員が憲法の規定に基づいて臨時国会の召集を求めたにもかかわらず、当時の安倍内閣が3か月余りにわたって召集しなかったことが憲法違反かどうかが争われた裁判について、最高裁判所は憲法違反かどうかの判断をせずに上告を退ける判決を言い渡し、議員側の敗訴が確定しました。一方、裁判官の1人は「憲法違反になり得る」とする反対意見を述べました。

2017年6月、通常国会の閉会後に衆議院の120人、参議院の72人の野党議員が森友学園などの問題について審議する必要があるとして臨時国会の召集を求めましたが、当時の安倍内閣はすぐには応じず98日後の9月に召集し、冒頭で衆議院を解散しました。

憲法53条は衆参いずれかで議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は臨時国会の召集を決定しなければならないと規定しているため、野党議員などは「憲法違反だ」などとして東京と岡山県、沖縄県で国に賠償を求める訴えを起こしていました。

12日の判決で最高裁判所第3小法廷の長嶺安政裁判長は、憲法53条の規定について「臨時国会の遅れによって個々の国会議員の権利や利益が侵害されたということはできない。召集を要求した国会議員が、遅れを理由に国に賠償を求めることはできない」として上告を退け、野党議員側の敗訴が確定しました。

当時の安倍内閣の対応について、憲法違反かどうかの判断はしませんでした。

一方、5人の裁判官のうち宇賀克也裁判官は反対意見を述べ「内閣は議員の要求から20日以内に召集決定をする義務を負う。今回は臨時国会の審議は全く行われなかったので、要求は拒否されたと見ざるをえず、特段の事情がないかぎり違法といわざるをえない」として、憲法違反になり得るとしました。

原告側 反対意見を評価

判決後の会見で原告側の伊藤真弁護士は「国会議員1人1人の国に賠償を求める権利は認められず、少し物足りないところがある。ただ宇賀裁判官の反対意見は、ほぼ全面的に私たちの考えを認めた。裁判所としての役割を一定限度で果たしてくれた」と話していました。

原告の1人で沖縄選挙区選出の伊波洋一参議院議員は「沖縄では、米軍基地などさまざまな問題があり、国会が開かれないと、審議や問題提起ができない。反対意見で、内閣が臨時国会を召集しなければならない期間について、20日間が妥当だと示されたことは大きな成果だ」と話していました。

松野官房長官「原判決の結論が維持された」

松野官房長官は午後の記者会見で「原告の請求をいずれも認めなかった原判決の結論が維持された。判決が言い渡されたばかりで詳細を承知しておらず、これ以上のコメントは差し控えたい」と述べました。

立民 岡田幹事長「召集規定法案 成立させたい」

立憲民主党の岡田幹事長は記者会見で「裁判官のうち1人は反対意見として『内閣は議員の要求から20日以内に召集決定をする義務を負う』としており、安倍内閣が長期にわたり要求を無視し、召集した瞬間に解散するという乱暴なことに対し、厳しい批判となっている。われわれは、日本維新の会を含め、ほかの野党とも一緒に、臨時国会の召集要求から20日以内に内閣が召集しなければならないという規定を盛り込んだ法案を国会に提出しており、ぜひ成立させたい」と述べました。

共産 小池書記局長「法改正も必要になるのでは」

共産党の小池書記局長は国会内で記者団に対し「この判決により、政府が対応を正当化しているような話もあるが、筋違いだ。核心部分は、憲法53条に基づく召集要求があれば、内閣は応えなければならないという点であり、今後、法改正も必要になってくるのではないか」と述べました。