キム総書記とプーチン大統領が会談へ 双方のねらいは

北朝鮮は、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が近くロシアを訪問し、プーチン大統領と会談を行うと11日、国営メディアを通じて発表しました。キム総書記とプーチン大統領の会談は2019年4月以来4年ぶり、2回目です。

北朝鮮は、キム・ジョンウン総書記がロシアのプーチン大統領の招きで近くロシアを訪問し、プーチン大統領と会談を行うと11日、国営の朝鮮中央通信を通じて発表しました。
キム総書記の外国訪問は、新型コロナウイルスの感染拡大以降、これが初めてです。

一方、ロシア大統領府も11日、プーチン大統領の招きで、北朝鮮のキム総書記が近く、ロシアを公式訪問すると発表しました。

これに先立ち、韓国の通信社、連合ニュースは、韓国政府関係者の話として、キム総書記を乗せたとみられる専用列車がロシア極東のウラジオストクに向けて出発したことを情報当局が把握していると、11日、伝えていました。

北朝鮮の発表では、具体的な日程や場所は明らかにされていません。

ロシアと北朝鮮はウクライナ侵攻のあと、関係を急速に深めていて、ことし7月には、朝鮮戦争の休戦から70年にあわせて、ショイグ国防相が率いるロシアの代表団が訪朝していました。

“通訳だけ交えた1対1の会談も” ロシア通信

国営のロシア通信は、大統領府のペスコフ報道官の話として、プーチン大統領とキム総書記が首脳会談を行うとしたうえで会談は、代表団を含めた形式以外にも必要に応じて、通訳だけを交えた1対1の会談も行われるという見通しを示しました。

北朝鮮のねらいは

北朝鮮は、アメリカなどとの対決姿勢を鮮明にする中、キム総書記が中国と並ぶ後ろ盾のロシアを4年ぶりに訪問することで、両国の結束を誇示するとともに「国防5か年計画」の実現に必要な軍事技術の支援などを取りつけるねらいがあるとみられます。

北朝鮮は、朝鮮半島有事を想定して先月末まで行われたアメリカと韓国の合同軍事演習に反発し、日本を含む3か国が進める安全保障協力を「アジア版NATO=北大西洋条約機構」と呼んで強くけん制するなど、対決姿勢を鮮明にしています。

こうした中、北朝鮮は、中国と並ぶ伝統的友好国で後ろ盾のロシアとの関係強化を重視していて、キム総書記が新型コロナウイルスの感染拡大前の最後の外国訪問先だったロシアを4年ぶりに訪れることで、両国の結束を誇示したい考えです。

また、北朝鮮は、おととし1月に打ち出した「国防5か年計画」に、固体燃料を用いたICBM=大陸間弾道ミサイルなどの開発に加え、初めてとなる軍事偵察衛星や原子力潜水艦の保有を盛り込んでいますが、軍事偵察衛星の打ち上げにはことし5月と先月の2回連続で失敗したほか、キム総書記が今月6日にさらに拍車をかけると強調した原子力潜水艦の建造も北朝鮮の技術力だけでは容易でないとみられています。
このためキム総書記がプーチン大統領に対し、砲弾などの提供と引き換えに、人工衛星や原子力潜水艦に使われる先端技術の支援を求めるのではないかという見方が出ています。

一方、北朝鮮のGDP=国内総生産は、長引く経済制裁や新型コロナウイルスの影響などで去年まで3年連続でマイナス成長だったと、韓国の中央銀行が推計していて、北朝鮮としては、最大の貿易相手国である中国への過度な依存を避ける上でも、ロシア側から食料支援などの経済協力を取りつけるねらいもありそうです。

ロシアの思惑は

プーチン大統領は、キム総書記との会談を通じて、軍事分野での結びつきを強化したい思惑があるとみられています。

ロシア軍は、ウクライナへの軍事侵攻の長期化で、砲弾など弾薬不足が深刻化していると指摘され、ロシアが弾薬や兵器不足解消のため北朝鮮に接近しているとみられています。

アメリカ政府は去年11月、ロシアの民間軍事会社ワグネルが、北朝鮮からロケット弾やミサイルを調達していたと指摘しています。

また、アメリカ政府は、ロシアのショイグ国防相がことし7月、北朝鮮を訪問した際に武器を売却するよう働きかけていたという見方も示しているほか、プーチン大統領とキム総書記が両国の関係強化を約束する書簡を交換し、武器売却の交渉が進められていると懸念を示していました。

さらに、アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは、アメリカの当局者の話として、プーチン大統領が北朝鮮に対しウクライナへの軍事侵攻のための砲弾や対戦車ミサイルを求めている一方で、キム総書記はロシアに対し人工衛星や原子力潜水艦に使われる先端技術や、食料の提供を求めているとしています。

一方、ロシアのショイグ国防相は今月、北朝鮮との間で合同の軍事演習が検討されていると明らかにしています。

ロシアとしては、北朝鮮との軍事的な関係強化を示すことで、ともに対立するアメリカをけん制するねらいもあるとみられます。