濱口竜介監督作品が「審査員大賞」ベネチア国際映画祭

世界3大映画祭の一つ、イタリアのベネチア国際映画祭で、濱口竜介監督の「悪は存在しない」が、最高賞の金獅子賞に次ぐ銀獅子賞にあたる「審査員大賞」を受賞しました。

イタリア北部のベネチアで、ことし80回目となるベネチア国際映画祭は、最終日の9日、最高賞にあたる金獅子賞を競うコンペティション部門など、各賞の発表が行われました。

そして、濱口竜介監督の長編作品、「悪は存在しない」が、金獅子賞に次ぐ銀獅子賞にあたる「審査員大賞」を受賞しました。

「悪は存在しない」は、主人公が暮らす自然豊かな村の近くにキャンプの宿泊施設を建設する計画が持ち上がり、それが村の水資源や生態系に影響をもたらすことが明らかになるという物語です。

授賞式の壇上で濱口監督は、「キャストやスタッフなどすべての人たちの力があってすばらしい賞をいただけた」と感謝のことばを述べました。

濱口監督は、2021年にドイツのベルリン国際映画祭とフランスのカンヌ映画祭でも、監督した作品が主要な賞を受賞していることから、世界3大映画祭のすべてで受賞を果たしたことになります。

また金獅子賞は、ギリシャのヨルゴス・ランティモス監督の「哀れなるものたち」に贈られました。

濱口監督「このチームでやってきてよかった」

授賞式のあと報道陣の取材に応じた濱口監督は、授賞式の壇上での心境を問われると、「となりに主演の大美賀さんがいて、観客席にチームのメンバーの姿も見えて、このチームでやってきてよかったと、胸がいっぱいになる思いだった」と振り返りました。

また、「金獅子賞がよかったか」という質問に対しては、「そんな気持ちは少しもない。当初は、映画祭のコンペティション部門に選ばれることも、賞をもらえるとも思っていなかったので、一番いいものをいただいた」と満足した表情で話していました。

「移民や難民」題材の映画が受賞

今回の映画祭のコンペティション部門では、移民や難民を題材にした映画が、相次いで主要な賞を受賞しました。

監督賞を受賞したのは、イタリアの、マッテオ・ガローネ監督で、今回ノミネートされた、「イオ・カピターノ」では、セネガル人の若者を主人公に、砂漠や地中海を超えて、ヨーロッパを目指す人々の物語です。

主演を務めたセネガル出身のセイドゥ・サールさんは、新人俳優賞も受賞しました。

授賞式でガローネ監督は、「この映画は2人の移民の旅を私たちとは異なる視点から描いた。声を上げることができない人に声を与えるためだ」と述べました。

また、審査員特別賞を受賞したのは、ポーランドのアグニェシュカ・ホランド監督らの「グリーン・ボーダー」で、陸路でヨーロッパを目指す中東やアフリカからの人々が、ベラルーシの国境で翻弄される姿を描いています。

ホランド監督は、授賞式のスピーチで「難民危機が起きて以降、ヨーロッパを目指して多くの人が命を落としたが、いまも映画と同じような状況が続いている。助けることができないのではなく助けるつもりがないのだ」と述べ、観客から拍手が起きました。

映画をみた海外メディアの男性は、「2つの作品とも映画としていい映画だったが、今のヨーロッパにとって移民や難民は重要なテーマなので、映画祭はその点も評価したのだろう」と話していました。