「やっと来れたよ」熱海 土石流 警戒区域の解除後初の月命日

おととし、静岡県熱海市で発生した大規模な土石流の被災地に設定された「警戒区域」が解除されてから初めての月命日を迎え、遺族や被災者が自宅の跡地などで犠牲者を悼んで黙とうをささげました。

おととし7月3日に熱海市伊豆山地区で発生した大規模な土石流の被災地では、土砂が流れ下った川の周辺に設定された「警戒区域」が9月1日に解除され、住民たちがおよそ2年2か月ぶりに自由に行き来できるようになりました。

解除されてから初めての月命日となった3日、遺族や被災者が自宅の近くなどを訪れ、消防に最初の通報があった午前10時半ごろに28人の犠牲者を悼んで黙とうをささげました。

このうち、80歳の母親が犠牲者の中でただひとり、長期にわたって行方不明となった太田朋晃さん(57)は、妻や子どもたちとともに、流された自宅の跡地を訪れました。

そして、花を手向けたあと静かに手を合わせて母親を悼みました。

太田朋晃さんは「今まではなかなか来ることができなかったので、母親には『やっと来ることができたよ』と報告しました。きょうはいつもとは違った一日になると思います」と述べました。

そのうえで、今後の生活再建については「まだここに帰るかどうか決められずにいますが、自分たちの生活をどうするのか、決めていかなくてはいけないと思っています」と話していました。

熱海市によりますと、「警戒区域」が設定された当初は158世帯が避難していましたが、8月30日の時点で解除された区域に戻る意向を示しているのは、41世帯にとどまっているということです

「手を合わせたい場所で祈ることができた」

土石流で自宅が全壊する被害を受けた、太田滋さん(67)と、妻のかおりさん(58)も自宅の跡地を訪れました。

2人は、これまで毎月の月命日に被災現場の近くに集まって黙とうしてきましたが、「警戒区域」の解除を受けて3日は自宅の跡地の前で手を合わせました。

太田滋さんは「被災者それぞれが自分がいちばん手を合わせたい場所で祈ることができたと思います」と話していました。

妻のかおりさんは「知り合いの方の顔を思い浮かべながら近くで手を合わせられたので本当によかったです。ただ景色は何も変わっておらず、むなしさを感じながら手を合わせました」と話していました。