「国際卓越研究大学」認定候補に東北大学が選定 文科省

国が設立した10兆円規模の基金の運用益を活用し、世界トップレベルの研究水準を目指す「国際卓越研究大学」について文部科学省は初の認定に向けた候補として、全国の大学10校の中から東北大学が選定されたと発表しました。今後、一定の条件を満たせば正式に認定されることになります。

「国際卓越研究大学」は、国が設立した10兆円規模の基金「大学ファンド」の運用益を活用し、世界トップレベルの研究水準を目指して重点的に支援する大学です。

去年から公募が始まり、東京大学や京都大学など申請があった10の大学について、海外の大学の学長経験者などからなる有識者会議が審査を続けてきましたが、このほど審査結果がまとまり、永岡文部科学大臣は1日の会見で、認定に向けた初の候補として東北大学が選ばれたことを明らかにしました。

選定された理由については、教授を筆頭とした「講座制」と呼ばれる体制から、教員それぞれに学生や研究員などを配置して、若手や中堅の研究者がみずから挑戦できる体制に変更することや、大学全体で財政を把握できる仕組みを整えているなど改革に取り組む姿勢を明確に示した点が評価されたということです。

一方、有識者会議は提出された計画をより具体化することも求めていて、正式な認定に向けて今後、助言などを行いながら進捗(しんちょく)状況を確認していくとしています。

東北大学が正式に認定されれば、文部科学省からの支給額は年間およそ100億円が想定されています。

文部科学省は来年度、改めて2回目の公募を行うことにしていて、最終的に数校を「国際卓越研究大学」に認定する計画です。

東北大学 大野総長「大変光栄で身の引き締まる思い」

国際卓越研究大学の認定に向けた候補に選ばれたことについて東北大学の大野英男総長は「大変光栄で身の引き締まる思いだ。世界をリードする研究大学を目指し、今後も全学一体となって引き続き力を尽くして参りたい」と述べました。

その上で、認定候補に選ばれた理由については「すばらしい研究成果、社会的に大きなインパクトがあることを、これからもやってくれるだろうと思っていただいたのではないか」と述べました。

そして「日本の大学といえば東北大と言われるよう世界トップレベルの大学にできるだけ早くなれるようにしたい」と意気込みを語りました。

「国際卓越研究大学」とは

「国際卓越研究大学」は、日本の研究力の低下が指摘される中、先進的な取り組みを行う大学に優先的に資金を配分し投資することで、研究環境を整備し世界トップレベルの大学を育てようと、3年前から政府全体で本格的に検討が始められました。

財源は国が設立した10兆円規模の「大学ファンド」で見込まれる運用益のうち、年間最大で2800億円が「国際卓越研究大学」の制度に使われる予定です。

各大学へは、大学が寄付や共同研究などで外部から獲得した金額とおおよそ同じ額が配分される予定で、大学の研究基盤の強化や若手研究者への支援などに活用することができます。

「国際卓越研究大学」には将来的に、大学が独自に基金を運用し、資金を獲得していくことなども期待されていて、審査の中では大学全体での財務管理の状況や財務戦略なども審査の対象となっています。

文部科学省によりますと、海外の大学では寄付などの資金をもとに大学独自で基金を運用し、学生の経済的支援や研究費に充てるなどの取り組みが行われていて、アメリカのハーバード大学では、大学独自の基金の運用益から年間およそ20億ドル、日本円でおよそ2900億円が配分され、大学の収入のおよそ4割を占めているということです。

永岡文科相「各大学の挑戦を後押ししたい」

永岡文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で「東北大学について『国際卓越研究大学』の認定候補とすることが適当との判断に至ったと報告を受けた。今回の公募では10の大学からそれぞれに意欲的な提案があった。多様で重みのある『研究大学群』の形成に向けて対話を継続するとともに、各種事業や規制緩和を通じて各大学の挑戦を後押ししていきたい」と述べました。

文科省の有識者会議 申請あった大学に意見示す

文部科学省の有識者会議は今回、申請があった10の大学のうち初の認定に向けた候補に選ばれた東北大学のほかに、東京大学と京都大学の合わせて3つの大学には現地視察も行って研究現場の状況を把握しており、候補に選ばれるか注目が集まっていました。

有識者会議は、申請があった大学からの提案に対する意見を示していて、このうち東京大学の提案については「新しい大学モデルの具現化に向け、分野横断・学際的なアプローチなど、大学全体の変革を駆動する構想としては高く評価できる」とした一方、「研究力が国内でも高いポテンシャルを有する大学として、既存組織の変革に向けたスケール感やスピード感については必ずしも十分ではなく、工程の具体化と学内調整の加速・具体化が求められる」と指摘しています。

また、京都大学の提案については「研究力強化のための研究組織改革と人材・研究環境への積極投資を掲げるなど、執行部の変革への強い意志は高く評価できる」とする一方、「旧来の体制から国際標準の研究組織へ適切に移行するためには、新たな体制の責任と権限の所在の明確化が必要である」と指摘しています。

今回の結果を受けて、東京大学の藤井輝夫総長は「今般の国際卓越研究大学の審査において、本学が認定候補として選定されなかったことは残念に思います」とコメントしています。

その上で「これまでの蓄積を生かし、自律的で創造的な活動を拡大する『新しい大学モデル』の実現を目指して、引き続き全学を挙げて改革に取り組んでまいります」としています。

一方、京都大学は「審査状況についての詳細を承知していないため、その点を十分把握したうえで今後の対応を検討していきたい」としています。