災害時にトイレが「足りる見込み」の自治体は3割

大地震などが発生した場合、想定される避難者の数に対して災害用のトイレが「足りる見込み」だとする自治体は全国で3割にとどまることがNPO法人の調査でわかりました。
「命に関わる」としてトイレ対策の徹底を呼びかけています。

入口が閉鎖された避難所のトイレ(2016年 熊本地震)

災害時には断水などで水洗トイレが使えなくなることがありますが、トイレを我慢することは病気のリスクを高め災害関連死を引き起こす要因にもなりかねません。

NPO法人の「日本トイレ研究所」は関東大震災から100年となるのを前に全国の都道府県や市町村の防災担当者を対象に災害用トイレの備えについてアンケート調査を実施し、332の自治体が回答しました。

災害時のトイレの確保や管理に関する計画について「策定している」と答えた自治体は24%で、76%は「策定していない」と答えました。

また最大規模の災害が発生した場合想定される避難者の数に対して災害用トイレの備蓄について尋ねたところ「足りる見込み」と答えた自治体は31%にとどまっていました。41%が「不足する」、28%が「わからない」と回答し自治体でのトイレ対策が進んでいない現状が明らかになりました。

日本トイレ研究所は「トイレの確保は命にも関わるため首都直下地震などに備えて対策の徹底が喫緊の課題だ。備蓄が圧倒的に足りずほとんどの人が災害用トイレの使用経験もないと思われるので訓練も実施してほしい」と話しています。

東京・江戸川区は計画策定しトイレの備蓄進める

災害時のトイレに関し綿密な計画を策定している自治体もあります。

東京・江戸川区は、トイレを『命を支える社会基盤サービス』と位置づけ、2021年に「災害(震災)時トイレ確保・管理計画」を策定しました。

計画では災害用トイレを
▽耐震化された常設トイレ
▽マンホールを利用したトイレ
▽仮設トイレ
▽携帯トイレの
4つのタイプに分類しています。

災害発生直後は常設トイレや携帯トイレを使い、その後はマンホールトイレを組み立てて使用していくなど時間経過と被災状況に応じて切れ目なく提供する態勢をとるとしています。

また災害用トイレの場所を地図上で示し、徒歩5分圏内にトイレがある地域を明示しています。

首都直下地震が発生した直後の3日間では41万9100人分のトイレの確保が必要だと想定していて、公園に井戸水を利用するトイレを整備したり、避難所に携帯用トイレを17万3000個余り備蓄したりするなど対策を進めています。

江戸川区防災危機管理課の藤川則和課長は「首都直下地震が言われている中で区内の住宅の耐震化は進んでいるが、あわせてトイレの配備も命に直結する問題だと考えている。いちばん重要な社会基盤として今後も計画的に配備したい」と話していました。