北朝鮮 キム総書記 海軍に戦術核兵器 配備の方針示す

北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記は、海軍の司令部を訪れて演説し、先の首脳会談で共同訓練の定例化に合意した日米韓3か国を非難した上で、海軍への戦術核兵器の配備を進めていく方針を示しました。

北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは、28日の海軍の記念日を前にしてキム・ジョンウン総書記が27日、娘を伴って海軍司令部を訪問し演説を行ったと、29日に映像とともに伝えました。

それによりますと、キム総書記は演説で、日米韓3か国が今月18日にアメリカで開かれた首脳会談で共同訓練の定例化に合意したことについて「アメリカなど敵対勢力の無謀な策動によって、朝鮮半島周辺は核戦争危険水域と化した」と非難しました。

その上で「戦術核運用の拡張政策に基づき部隊に新たな武装手段が引き渡されるだろう。海軍は今後、国家核抑止力の構成部分となる」と述べ、海軍への戦術核兵器の配備を進めていく方針を示しました。

具体的な内容は明らかにされていませんが、北朝鮮はSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルの開発を続けているほか、低空を長時間飛行することができ戦術核弾頭の搭載を想定した戦略巡航ミサイルを海軍の艦船から発射する訓練が行われたと、今月21日に発表したばかりです。

キム総書記としては、軍内部の士気を高めるとともに、31日までの日程で合同軍事演習を行っている米韓両国に日本を加えた3か国の安全保障協力を強くけん制するねらいがあるとみられます。

キム総書記 韓国を「大韓民国」正式な国名で呼ぶのは初めてか

キム・ジョンウン総書記は、海軍司令部で行った演説の中で、日米韓3か国の首脳会談を非難する文脈で韓国を従来の「南朝鮮」などではなく「大韓民国」と呼びました。

キム総書記が演説で「大韓民国」と正式な国名で呼んだのは初めてとみられます。

キム総書記の妹、キム・ヨジョン(金与正)氏も先月の談話で「大韓民国」と呼んでいて、その際、韓国メディアは「統一の対象である同じ民族」としてではなく、突き放す形で「別の国家」と見なす立場を公式化したのではないかという見方を伝えていました。

一方、去年12月の朝鮮労働党の中央委員会総会で要職から解任された軍の重鎮、パク・チョンチョン氏が、今回、元帥の肩書でキム総書記に同行し宴席で演説を行ったと伝えられ、復権したことが確認されました。

パク氏は、キム総書記の側近の一人として党の政治局常務委員や中央軍事委員会副委員長などを務めていましたが、韓国の情報機関は、戦闘準備態勢の不備などの責任を問われ解任されたという見方を示していました。

キム総書記は、これまでも更迭した側近らを主要ポストに復帰させることを繰り返していて、忠誠度や求心力を高めるねらいがあるとみられています。

松野官房長官「日米韓で連携し北朝鮮の非核化目指す」

松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「北朝鮮の動向は軍事動向を含め、平素から重大な関心を持って情報収集、分析に努めているが、コメントは差し控えたい。今後とも日米、日韓、日米韓で緊密に連携し、国際社会とも協力しながら関連する国連安保理決議の完全な履行を進め、北朝鮮の非核化を目指す」と述べました。

また、北朝鮮側が東京電力福島第一原発にたまる処理水の海洋放出を批判していることについて、「科学的根拠を欠く独自の主張がなされていることは極めて遺憾だ。今後とも科学的根拠に基づき、海洋放出の安全性について丁寧な発信を続けていく」と述べました。