大阪・枚方、暑いのなんでなん?
ことしもとっても暑い夏。
そのなかで、この夏2回も全国1位の暑さを観測したのが、大阪の北東部にある枚方市(ひらかたし)。※2023年8月25日現在
え?枚方が全国1位?
関西では京都市や兵庫県豊岡市が暑いイメージがあるけれど、人口およそ40万人、大阪都心部のベッドタウン・枚方がなんでそんなに暑いのか?
ローカルな事情を深掘りしてきました。
(なんでなん取材班 大阪放送局記者 的場恵理子/ディレクター 山岸聖也)
ことしの夏も暑い枚方

7月27日と8月1日。
枚方市の最高気温が全国で最も暑くなった日です。
7月1日から8月22日までの間で、35度以上の猛暑日となったのは計29日。
枚方はこの夏、実に2日に1度、猛暑日だったことになります。
枚方市内で取材をすると、「サウナにいるくらい暑い」
「暑すぎて暑さについてしゃべりたくない」
さらには、「沖縄から来たけれど、沖縄よりも暑く感じる」という声まで。
8月下旬、私たちが枚方市内を取材した日も、最高気温は36度。
夕方になってもなかなか気温が下がらず、吹き出る汗がとまりませんでした。


まちの人から相次いだ“盆地説”

なぜ、枚方が暑いのか。
まず街の人に聞いてみました。
すると多くの人が口にしたのは「盆地だからでは?」ということ。
「盆地」と答えてくれた人以外は「わからない」という人がほとんどで、枚方市民の中には、ある程度「盆地説」が根づいていると感じました。
暑さについて調べるならと、私たちは、大阪管区気象台に向かいました。
この「盆地説」についてたずねてみると・・・・。
そもそも盆地じゃない?

大阪管区気象台 海老政徳 主任予報官
「盆地ではないですよ。枚方市の後ろに山があるので、そういうイメージで捉えられるのかもしれませんね」
枚方市の西側には平野が広がっていて、四方を山に囲まれている場所を示す「盆地」にはあたらないということです。
盆地説は早くも覆ってしまいました。
海老主任予報官に、全国1位を記録した7月27日の気象状況について聞いてみると。
「当時は枚方含めて近畿地方で連日晴れた日が続き、最低気温も下がらず、さらに翌日気温が上がるという日が繰り返されていました。まさに、気温が上がりやすい状況だったんです」
「また、7月27日は枚方はよく晴れていた一方、同じように暑くなりやすいお隣の京都は少し曇っていました。こうした天気の微妙な違いも最高気温ランキングに影響するのかもしれませんね」

取材班は枚方のアメダス観測所にも行ってみました。
気温を測る場所そのものが、暑いのではないかと考えたのです。
アメダスは住宅地の一角にあり、確かに暑かったですが、特に日ざしを集める要素もなく、この場所から理由を推測することはできませんでした。
枚方市からは気になる説も!?


取材を進めるなかで、私たちは枚方市の広報紙に、ある説を見つけました。
『大阪市内のヒートアイランドで熱せられた空気が海風で流入し、生駒山系にぶつかって滞留するために暑くなるとも言われており・・・/枚方市の7月号の広報紙より』
ということは、枚方の暑さの背景には、大阪市のヒートアイランドの影響があるということなんでしょうか?

枚方市 広報プロモーション課 佐藤喬史 係長
「枚方の暑さの原因はさまざまあると思いますが、あくまでそのひとつに、こういう説もあるのではと考えています。個人的には枚方市民の熱い気持ちも影響しているのかもしれないと思っていますが(笑)。枚方の暑さの原因、私たちとしても、解明してほしいです」
カギを握る“海風”
なぜ枚方が暑いのか。
さまざまな説を検証してもらおうと、関西の都市環境の研究を行っている神戸大学の竹林英樹准教授にも話を聞きました。

竹林准教授は、前提として、枚方も大阪も都市化によって、気温が上がっていると指摘。
そのうえで、枚方が暑いのは、大阪から熱い空気が入ってくるからというよりは、枚方に冷たい風が入ってこないからだといいます。
どういうことなのか?
竹林准教授は、大阪平野の夏の風の動きや気温の変化を再現したシミュレーション画像を見せてくれました。

正午の段階では枚方市も大阪市もオレンジ色。

午後2時にかけてさらに気温は上昇。
大阪平野のほどんどが高い気温を示す濃いオレンジ色になっています。
一方、大阪湾からは涼しい風が、海沿いの地域に届きはじめます。

そのため、午後6時になると、大阪市など海から近い地域は気温が下がっていきます。
しかし、海から約30キロ離れた枚方にはまだ風が届かず、気温が高いままだといいます。
暑さがほかの地域より長く続くことが分かりました。
さらに枚方は、北側と東側に山があります。
このため、海側だけでなく、別の方角からも、あまり風が見込めません。
神戸大学 竹林英樹 准教授
「地表であたためられた空気は、風など空気を動かすものがあれば拡散されて、気温が下がる。しかし、枚方の場合は、空気を動かす要素がほとんどなく、暖かい空気がとどまってしまうと考えられます。風が弱いという点では盆地に近いといえますね」

枚方は盆地とはいえませんが、海から遠く、山に挟まれたような地形。
盆地ではないけど、盆地っぽい・・・。
枚方市民のみなさんの「盆地説」は、あながち間違っていなかった?!
全国一の暑さの理由は
枚方暑いの、なんでなん?
大阪平野の奥にある枚方の地形や、その日の気象条件、海からの風の流れなどさまざまな要因が重なり合い、枚方の「全国一の暑さ」につながっているようです。
今回さまざまな専門家の方に取材しましたが、みなさんが口をそろえていたのは「これからも枚方は暑いだろう」ということ。
神戸大学の竹林准教授は「この暑さを前提に、地域で熱中症対策などを戦略的に考えていく必要がある」と指摘していました。
枚方だけでなく、日本列島はまだまだ残暑が続いています。
どうか、みなさん、暑さに気をつけてお過ごしください!
