中国 日本の水産物の輸入全面停止 処理水放出受け

福島第一原子力発電所にたまるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水について、東京電力が基準を下回る濃度に薄めた上で海への放出を始めたことを受けて、中国の税関当局は、日本を原産地とする水産物の輸入を24日から全面的に停止すると発表しました。

中国の税関当局は、発表の中で「福島の『核汚染水』が食品の安全に対してもたらす放射性物質による汚染のリスクを全面的に防いで中国の消費者の健康を守り、輸入食品の安全を確保する」として日本を原産地とする水産物の輸入を24日から全面的に停止すると明らかにしました。

また税関当局は「日本の食品の汚染リスクの確認を続け、日本から輸入される食品に対する監督管理を強化する」としていて、水産物以外の食品の輸入にも影響が及ぶおそれがあります。

中国ではすでに7月から、各地の税関当局が日本産の水産物を対象に放射性物質の検査が強化されていて、7月、日本から輸入された水産物は去年の同じ月と比べて金額にしておよそ3割減ったことが明らかになっています。

これまで中国は水産物については福島、宮城、それに東京など10の都県からの輸入を停止してきましたが、今回の措置でそれが全国に拡大された形で、日本の漁業に影響が出ることは避けられず、今後の日中関係のさらなる悪化も懸念されます。

中国向けに輸出している水産加工会社では影響を懸念

函館市川汲町にある水産加工会社では、近年、需要が高まっているホタテを中国向けに輸出していました。

しかし、中国が先月、日本から輸入する水産物などの食品について規制強化を示して以降、中国向けの輸出が滞り、工場にある冷凍庫には数十トンほどの冷凍ホタテが出荷待ちとなっています。

会社では、対応策として国内の消費者向けに新たにインターネット販売なども行っていくということですが、今回の中国政府による輸入停止の措置で今後、さらに影響が出ることを懸念しているといいます。

水産加工会社「きゅういち」の餌取達彦取締役は「すごく厳しく中国らしい対応だと感じるが、北海道産の水産物は中国の人たちに人気があると思うので早く元の状態に戻ることを願っている。今後の日本政府の対応なども注視していきたい」と話していました。

福岡の仲卸会社「対象にはならないと思っていた 頭が真っ白」

福岡市中央区にあり“博多の台所”とも呼ばれる長浜鮮魚市場では、アジアに近く福岡空港へのアクセスがよい立地を生かし、多くの仲卸会社が輸出の拡大に力を入れています。

このうち、福岡市に本社のある「昭徳」は競りを行う仲買人に中国人を雇うなど、特に中国や香港向けの輸出を強化してきました。

今では会社の売り上げの4割を輸出が占めていて、中国が水産物の輸入を停止することで事業への影響は避けられないといいます。

社長の湯浅俊一さんは「福岡は対象にはならないと思っていたので、突然の発表に頭が真っ白の状態です。今後は香港も輸入を停止する可能性があり、今の時点では対策も考えられていません。この地域の水産業者への影響はかなり大きいと思います」と話していました。

大分の養殖業者 出荷先を中国から台湾や国内に切り替えへ

この発表に大分県内の水産関係者も対応に追われています。

このうち中国に2万匹のハマチを輸出する手続きを進めていた大分県佐伯市の養殖業者は、出荷先を台湾や国内に切り替えることにしました。

浪井大喜社長は「風評被害に近いものがある。輸出する予定だった魚を国内向けにも出すことになるので価格が値崩れすることが心配です」と話していました。

大分県では昨年度、養殖クロマグロの輸出額が中国向けを中心に大幅に伸びるなど、水産物の輸出が拡大していただけに中国の輸入停止の影響が懸念されます。

東電 小早川社長「被害発生した場合 適切に賠償 相談応じたい」

中国の税関当局が、原産地が日本の水産物の輸入を24日から全面的に停止すると発表したことについて、東京電力の小早川智明社長は、記者団に対して「詳細はまだ把握できていないが、外国からの禁輸措置で事業者に被害が発生した場合は、適切に賠償していく。しっかり相談にも応じていきたい」と述べました。

そのうえで「中国は日本にとって非常に重要な貿易相手国なのでそうした判断が早期に撤回されるよう安全性について、しっかりと説明を尽くしていきたい」と述べ、安全性に関する情報発信に引き続き取り組んでいく考えを強調しました。