米大統領選 共和党候補者のテレビ討論 トランプ氏は欠席

来年のアメリカ大統領選挙に向けて野党・共和党の候補者が参加する初めてのテレビ討論会が日本時間の24日午前に行われます。

ただ党内で最も多くの支持を集めるトランプ前大統領は欠席を表明し、最有力候補が不在の中、指名争いに向けた論戦が始まります。

来年のアメリカ大統領選挙で政権奪還を目指す野党・共和党は、党の候補者選びに向けて主要候補が直接、論戦を交わす初めてのテレビ討論会を日本時間の24日午前、中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで開催します。

討論会の様子は全米で放送されることから有権者に広くアピールする場になり、立候補を表明しているフロリダ州のデサンティス知事やペンス前副大統領など8人が参加する予定です。

ただ、党内で最も多くの支持を集めるトランプ前大統領はすでに十分な知名度があるなどとして欠席を表明しています。

トランプ氏の側近で、陣営で上級顧問を務めるジェイソン・ミラー氏はNHKの取材に対し「トランプ氏はほかの候補者と比べ支持率が50ポイントも上回っており、真剣な討論につながらない」と述べてトランプ氏が討論会に参加する意義はないと強調しました。

最有力候補が不在となる中、共和党の指名争いに向けた本格的な論戦が始まることになり各候補者が巻き返しに向けて自身の政策やトランプ氏への評価をどのように打ちだしていくのか注目されます。

共和党 大統領候補者の支持率 トランプ氏50%超

政権奪還を目指す野党・共和党内ではトランプ前大統領が大統領候補として最も多くの支持を集め、ほかの候補者を引き離しています。

政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」のまとめによりますと、今月22日時点の各種世論調査の平均では、共和党の候補者選びでトランプ氏を支持するとした人が55.4%と最も多くなりました。

これに続いて、フロリダ州のデサンティス知事が14.3%、起業家のラマスワミ氏が7.2%、ペンス前副大統領が4.0%、ヘイリー元国連大使が3.2%、スコット上院議員が3.1%、ニュージャージー州のクリスティー前知事が3.0%などとなっています。

トランプ氏の支持率はことし3月9日時点で43%まで低下しましたが、3月末にニューヨーク州の大陪審に起訴される直前からこれまで上昇傾向が続いています。

一方、トランプ氏の最大のライバルとされる2番手のデサンティス氏は支持が伸び悩み、一時、12.8ポイントまで迫ったトランプ氏との差は現在、41.1ポイントに拡大しています。

トランプ氏の側近「真剣な討論につながらない」

トランプ前大統領の側近のジェイソン・ミラー氏は22日、ウィスコンシン州ミルウォーキーのテレビ討論会が行われる会場近くで、NHKのインタビューに応じました。

この中でミラー氏はトランプ氏が討論会への参加を見送った理由について「ほかの候補者と比べ支持率が50ポイントも上回っており、真剣な討論につながらないからだ。トランプ氏がバイデン大統領との政策の違いを話している時に、舞台上でトランプ氏を狙い撃ちにする候補者の支持率が1%くらいなのはジョークのようだ」と述べました。

一方でミラー氏は「トランプ氏の考えが変わって参加することになるかもしれない」とも述べ、今後行われる討論会には参加する可能性も示唆しました。

そして一連の起訴についてミラー氏は「司法制度を政治化している。政敵を攻撃するために政府を利用することはこれまでアメリカにはなかった。世論はそれに反対しており、トランプ氏をたたけばたたくほどトランプ氏の支持率は上がる」と述べ、トランプ氏にとって一連の起訴はむしろ追い風になると主張しました。

ほかの候補者は支持拡大の足がかりに

トランプ前大統領が共和党内の支持率で大幅にリードする中、ほかの候補者たちは初めてのテレビ討論会を支持拡大の足がかりにしたいと考えています。

このうち討論会に参加する候補者の1人の起業家のラマスワミ氏は前日の夕方、会場近くで集会を開きました。

ラマスワミ氏はこれまで政治経験がなく注目度が低かったにもかかわらず、軽快なトークと保守的な姿勢で支持を伸ばし各種世論調査の平均で現在、3番手につけています。

ラマスワミ氏は演説で「あす、私は討論会のステージの真ん中に立つ。選択はあす始まる。この国を救おう」と述べて支持を呼びかけました。

討論会に参加の8人は

今回の討論会に参加するのは、トランプ前大統領を除く8人の予定です。

フロリダ州のロン・デサンティス知事

▽トランプ氏を追いかけるフロリダ州のロン・デサンティス知事(44)は2018年、トランプ氏の全面的な支援を受け、知事に初当選。新型コロナの対応では経済回復を優先したほか、学校現場でLGBTなど性的マイノリティーの話題を規制する法案を成立させるなど保守的な政策を進めています。

2期目を目指した前回は共和党と民主党の支持率がきっ抗するフロリダ州で、民主党の候補に圧勝しました。

こうした勢いを背景に「トランプ氏の最大のライバル」と言われてきましたが、このところは支持率が伸び悩み、陣営の幹部を刷新するなど、巻き返しを図っています。

起業家のビベック・ラマスワミ氏

▽アメリカのメディアが今最も勢いがあるとしているのが、起業家のビベック・ラマスワミ氏(38)です。

インド系アメリカ人で、薬品の開発に携わる会社などを設立し富を築きました。

今回の選挙資金もみずからの資産を投じていて、その額は日本円で20億円以上にのぼっています。

軽快なトークと親しみやすさで人気を集めていると言われる一方、FBI=連邦捜査局や教育省の廃止を訴えるなどの政策が物議をかもしています。

トランプ氏を支持する立場で、ワシントン・ポストは「トランプ2.0」と称し、トランプ氏のように従来の政治家とは異なる手法でほかの候補との争いを勝ち抜こうとしているとしています。

マイク・ペンス前副大統領

▽マイク・ペンス前副大統領(64)は、地元インディアナ州の知事などを経て、2016年から4年間、トランプ氏を副大統領として支えました。

しかし、おととし、連邦議会にトランプ氏の支持者らが乱入した事件をきっかけに、距離を置くようになります。

このことで、トランプ氏の熱烈な支持者から反感を買っていることもあり、支持率は伸び悩んでいます。

キリスト教保守派の1つである福音派の信者で厳格に信仰を重んじていて人工妊娠中絶や同性婚には反対しています。

ニッキー・ヘイリー元国連大使

▽ニッキー・ヘイリー元国連大使(51)は、インドからの移民2世です。

南部サウスカロライナ州で女性初の知事となったあと、トランプ政権では国連大使を務めました。

前回はトランプ氏を支持しましたが、今回は世代交代を訴えています。

ニュージャージー州のクリス・クリスティー前知事

▽トランプ氏を批判する急先ぽうとして知られるのは東部ニュージャージー州のクリス・クリスティー前知事(60)です。

2016年の大統領選挙の指名争いは序盤で撤退し、その後はトランプ氏の政権移行チームの幹部を務めました。

サウスカロライナ州のティム・スコット上院議員

▽支持を伸ばしているサウスカロライナ州のティム・スコット上院議員(57)は、共和党の上院議員では唯一の黒人です。

シングルマザーの家庭で育ち、保険の代理店を経営したあと、政治家に転身しました。

アメリカのメディアはスコット氏を「前向きで明るい」などと表現し、ほかの候補者の攻撃的な姿勢が目立つ中、それとは一線を画した人柄が支持を伸ばしている理由だとしています。

アーカンソー州のエイサ・ハッチンソン前知事

▽南部アーカンソー州のエイサ・ハッチンソン前知事(72)は連邦検事を務めたあと下院議員などを経てことし1月まで知事を務めていました。

ノースダコタ州のダグ・バーガム知事

▽中西部ノースダコタ州のダグ・バーガム知事(67)はソフトウエア会社のトップとして事業を発展させ、一時、マイクロソフトの役員も務めていました。

専門家「どこまでトランプ氏を非難するか」

トランプ前大統領が共和党のテレビ討論会に参加しないことについて、アメリカ政治に詳しいラトガース大学のデイビッド・グリーンバーグ教授は「トランプ氏の立場からすれば討論会に参加しても、特にメリットはないということだろう。彼はほかの候補者よりも知名度があり、参加をしてもほかの候補者を引き立てて、相対的に自分の立場を弱めることになる」と分析しました。

そしてトランプ氏不在の討論会の位置づけについては「一種の『余興』のようなイベントとなることは否めないが、おもしろいものにはなり得る。大多数の視聴者は候補者のことをほとんど知らないので、彼らを知る機会にはなる」と指摘しました。

また、討論会の焦点についてグリーンバーグ氏は「どこまでトランプ氏を非難するかがもっとも重要なポイントとなるだろう。トランプ氏に寄り添って『起訴は政治的な動機によるものだ』という主張に同意する候補者もいれば、トランプ氏を突き放し、『共和党はこんな党ではなかった。トランプ氏の痕跡を消して、前に進む方法を探るべきだ』と訴える候補者もいるだろう」と述べ、トランプ氏に対し、各候補者がどこまで対決姿勢を示すかが焦点となるという見方を示しました。

そのうえで、党内支持率で2位につけるデサンティス氏については「選挙運動をして世間の目に触れれば触れるほど、支持を失っているという印象だ」と指摘するとともに「デサンティス氏であってもほかの候補者であっても、トランプ氏を今の地位から引きずり下ろしたければ、真っ向から激しく攻撃する以外にないだろう」と述べ、「トランプ1強」状態を打破するには対決姿勢を明確にするしかないという認識を示しました。

現地の人たちは

討論会の会場を訪れた男性
「トランプ前大統領が不在の中、トランプ氏の話題が中心になるのか、それとも政策論になるのか、討論がどのように進むかに関心がある。トランプ氏は大統領選挙に立候補する以上、討論会には参加しなければならないと思う」

討論会を会場で見るという女性
「トランプ氏にとっての課題は、一連の起訴を受けてアメリカ国民が将来の大統領候補としてそういう人を望むかどうかということだ。私は次の大統領候補は別の人がいいと考えている」

トランプ氏を支持する女性
「討論会には正直、関心がないので見る予定はない。私の願いはトランプ氏が大統領になることだ。彼は本心から話し、私たちのために立ち上がってくれる」