北朝鮮 “24日以降 人工衛星打ち上げ” 防衛省 沖縄に部隊展開

北朝鮮は24日以降、「人工衛星」を打ち上げるとしています。防衛省は万が一、日本に落下する場合に備えて、迎撃ミサイルの部隊などを展開しています。

北朝鮮は今月24日午前0時から31日の午前0時までの間に「人工衛星」を打ち上げると、22日海上保安庁に通報しました。

落下物のおそれがあるのは、日本のEEZ=排他的経済水域の外側にある黄海や太平洋の3つの海域で、打ち上げのおよそ10分後には沖縄県の先島諸島付近の上空を通過するとみられています。

防衛省は打ち上げには弾道ミサイルの技術が用いられているとしていて、万が一、日本に落下する場合に備えて、
▽迎撃ミサイルを搭載したイージス艦を日本の近海に
▽地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」を沖縄県などに 展開しています。

また、政府は日本の上空を通過すると判断した場合などには、Jアラート=全国瞬時警報システムなどを通じて、情報を発信することにしています。

北朝鮮はことし5月31日にも打ち上げを行いましたが、新型の衛星運搬ロケットのエンジンの異常で推力を失い、黄海に墜落したとして失敗しています。

沖縄県 24時間態勢で警戒

沖縄県は北朝鮮による通報を受けて、22日夕方から夜間も防災危機管理課に職員1人を配置して24時間態勢で警戒にあたっています。

また、通報期間に入る24日午前0時以降は警戒を強化し、管理職を含む職員3人が24時間態勢で対応にあたることにしています。

「PAC3」展開の石垣島では

迎撃ミサイル「PAC3」の部隊が展開している沖縄県石垣島の新港地区では23日午前、2機ある発射機がいずれも上空に向けられていたほか、レーダーを搭載した車両の近くで自衛隊員が作業している様子が確認できました。

一方、200メートルあまり離れたビーチでは、海水浴を楽しむ人や砂浜で遊ぶ人の姿が見られました。ビーチと部隊が展開する敷地の間はフェンスやシートで遮られていますが、PAC3の発射機やレーダーなどを間近にのぞむことができます。

家族旅行で熊本県から訪れたという14歳の女の子は「ビーチの近くにミサイルがあることは知りませんでした。びっくりしています」と話していました。

自衛隊員 隣接の市道は通行しないよう呼びかけ

石垣市によりますと、部隊が展開する敷地は市道と隣接していて、Jアラートで北朝鮮による人工衛星の打ち上げの情報が発信された場合、PAC3の発射に備えて安全を確保するため、自衛隊員が市道を通行しないよう呼びかけるということです。

石垣市の担当者は「車や人の事前の通行規制などを行う予定はなく、万が一Jアラートが発出されたら、防衛省が責任を持って安全を確保するということで了承している」と話しています。

一方、部隊が展開する敷地は使用の期限が今月31日までとなっていて、23日、防衛省から市に対し使用延長の可能性について問い合わせがあり、市は今後対応を検討することにしています。

宮古島市でも警戒

沖縄県宮古島市でも、迎撃ミサイルPAC3の部隊が展開している航空自衛隊の宮古島分屯基地で23日午前10時すぎ、発射機が上空に向けられている様子が確認できました。

宮古島市では、前回、ことし5月に北朝鮮が人工衛星の打ち上げを通報したときから緊急事態連絡室を継続して設置していて、22日は座喜味一幸市長をはじめ幹部が集まり、今後の対応などを確認したということです。

そして、市のホームページで市民や観光客に対し、テレビやラジオなどの情報に注意するほか、防災行政無線などで県内に落下が予測されると放送された場合には、屋内に避難するよう呼びかけています。

松野官房長官 「警戒監視に全力」

松野官房長官は23日、宮古島市を訪れて座喜味市長と会談し、「人工衛星」が宮古島市を含む先島諸島付近の上空を通過する可能性が高いとされていることを踏まえ、国と自治体が協力して住民に避難行動の周知などを徹底していくことを確認しました。

このあと松野官房長官は記者団に対し、「弾道ミサイル技術を用いた発射は衛星打ち上げが目的だとしても関連する国連安保理決議に違反するものだ。アメリカや韓国などと緊密に連携しつつ、北朝鮮に発射の中止を求めていく」と述べました。

その上で「万が一、わが国の領域に落下する場合に備え、自衛隊のイージス艦や沖縄県内のPAC3の部隊がすでに必要な態勢を構築している。国民の生命・財産を守り抜くため、情報の収集・分析、警戒監視に全力にあげる」と強調しました。

与那国町 防災無線で住民に呼びかけ

沖縄県与那国町は北朝鮮による通報を受けて、22日、「緊急事態連絡室」を立ち上げていて、24日午前0時からの予告期間中、職員を配置して24時間態勢で警戒と情報収集にあたることにしています。

そして23日午後1時には、担当の職員が防災無線を使って住民に呼びかけを行い、「あす以降はテレビやラジオの情報に注意し、北朝鮮が発射した場合にはJアラートや防災無線で知らせるので、屋内に退避してください。万が一、近くに何かが落下した場合には近づかないで、警察や役場に連絡してください」と伝えていました。

北朝鮮 事前予告は過去5回

北朝鮮が「人工衛星」の打ち上げを事前に予告したケースは、これまでに5回あります。

このうちことし5月と2012年4月の2回は、打ち上げ直後に墜落するなどして失敗しています。

一方、2009年4月と2012年12月、それに2016年2月の3回は、日本の上空を通過したとみられています。

防衛省はことし5月については衛星の打ち上げを試みたものの失敗し、ほかの4回については人工衛星と称して発射した弾道ミサイルだったとしています

国交省 日本周辺飛行の航空機に注意呼びかけ

国土交通省は24日午後、日本周辺を飛行する航空機に対し注意を呼びかける航空情報を出しました。

このほか、沖縄本島と宮古島、石垣島、与那国島に展開している自衛隊の迎撃ミサイル部隊の周辺では、小型機やヘリコプターなど、目視で飛ぶ航空機を対象に、飛行を自粛するよう求める航空情報も出しています。

この航空情報では、警察や消防のヘリコプターやドクターヘリなどは対象になっていません。