北朝鮮 戦略巡航ミサイルの発射訓練実施と発表 米韓けん制か

北朝鮮は、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の立ち会いのもと、海軍による戦略巡航ミサイルの発射訓練を行ったと発表しました。
キム総書記が海軍の強化・発展方針を示したとしていて、21日から始まったアメリカ軍と韓国軍による定例の合同軍事演習を強くけん制するねらいがあるとみられます。

21日付けの北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、日本海で任務にあたる海軍の艦隊による戦略巡航ミサイルの発射訓練が行われ、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が立ち会ったと伝えました。訓練が行われた日付には触れていません。

北朝鮮の戦略巡航ミサイルは、戦術核弾頭の搭載を想定したもので、1500キロから2000キロの距離を飛行させる形で発射が繰り返されているとされ、だ円や8の字の軌道で低空を長時間飛行することから迎撃が難しく命中精度も高いとみられています。

公開された写真には、細長いミサイルを発射する艦船が写っていて、韓国の通信社、連合ニュースは、レーダーで捉えにくいよう設計された新型の艦船だとする見方を伝えています。

立ち会ったキム総書記は、有事の際に敵の戦意をくじくとともに、現代的な攻撃と防御の手段を備えるための海軍の強化・発展方針を示したとしていて、21日から始まったアメリカ軍と韓国軍による定例の合同軍事演習を強くけん制するねらいがあるとみられます。

また、1週間後の今月28日には、海軍の記念日を控えていて、士気を高めたい思惑もありそうです。

北朝鮮の戦略巡航ミサイルとは

北朝鮮の戦略巡航ミサイルは、戦術核弾頭の搭載を想定したもので、だ円や8の字の軌道で低空を長時間飛行することから、専門家などの間では迎撃が難しく命中精度も高いとみられています。

北朝鮮は、おととし1月に打ち出した「国防5か年計画」で中長距離の巡航ミサイルの開発を掲げており、ことしに入って朝鮮語で「矢」を意味する「ファサル」と呼ぶ戦略巡航ミサイルの発射訓練の実施を相次いで発表しています。

まず2月に軍の戦略巡航ミサイル部隊が移動式発射台から日本海に向けて「ファサル2型」4発を発射しました。

ミサイルは2時間50分余り、距離にして2000キロ飛行し、日本海に設定された目標に命中したとしています。

続く3月、春の米韓合同軍事演習が始まる前日に、日本海で初めて潜水艦から戦略巡航ミサイル2発が発射されました。

その10日後には、米韓両軍の演習のさなかに、日本海に向けて「ファサル1型」2発と「ファサル2型」2発のあわせて4発が発射され、最長で2時間半余り、距離にして1500キロから1800キロ飛行し、海上の目標に命中したと発表しました。

この際、初めて公開された映像では、塗装の異なる2種類のミサイルが海岸に設置された移動式発射台から次々と発射され、低空で飛んでいく様子が確認できます。

北朝鮮の戦略巡航ミサイルについて、専門家からは、朝鮮半島有事の際に米韓両軍を背後からたたくとともに、在日アメリカ軍の基地などを攻撃する狙いがあるとする見方が出ています。

北朝鮮が戦略巡航ミサイルの艦船からの発射訓練を行ったと明らかにしたのは今回が初めてで、攻撃態勢の多様化が進んでいると誇示したい思惑もあるとみられます。

韓国軍「誇張されており事実と異なる部分が多い」

北朝鮮が艦船から戦略巡航ミサイルを発射する訓練を行ったと明らかにしたことについて、韓国軍の合同参謀本部は「誇張されており、事実と異なる部分が多い」と発表しました。ただ、具体的な言及は避けました。

これに関連して、韓国軍の関係者は「小さな艦船から核弾頭を搭載できる『戦略巡航ミサイル』を発射することは常識的にない」と説明しています。

そのうえで、今回発射されたのは艦船から敵の艦船を攻撃する艦対艦ミサイルだとして、北朝鮮側の発表を否定し、ミサイルが目標に命中したとする主張についても「探知の結果、命中していない」と指摘しました。

また、発射を行った艦船については「この10年以内に建造されたものではない」として、従来からあるもので新型ではないとしています。

韓国の通信社、連合ニュースは、北朝鮮が発射したミサイルについて、ロシア製のミサイルをもとにした、すでに配備されている艦対艦ミサイルか、その改良型の可能性があると伝えています。