プールの安全対策は?学童クラブ マニュアル策定37%どまり

先月、学童クラブの活動中に小学生がプールで溺れて死亡した事故を受けて、こども家庭庁が全国の学童クラブを対象に調査したところ、プール活動を行っている4300か所余りのうち、安全対策のマニュアルを策定しているクラブは37%にとどまることがわかりました。

専門家は「マニュアルの大切さが浸透していない」と指摘しています。

プールの死亡事故を受け全国調査すると…

先月、滋賀県のプールで放課後児童クラブ、いわゆる学童クラブの活動で来ていた小学1年生の男子児童が溺れて死亡した事故を受けて、こども家庭庁は全国2万5000か所余りの学童クラブを対象にプール活動の実施状況を調べました。

その結果、プール活動などを行っているクラブは全体のおよそ17%にあたる4315か所で、このうち安全対策のマニュアルを策定しているのは1597か所と37%にとどまることがわかりました。

こども家庭庁は、子どもの安全を守るための対策が十分に講じられていないとして、18日付けで全国の自治体に通知を出し、学童クラブへの指導を求めました。

通知では、学童クラブでプール活動を行う場合は、▽監視体制や緊急事態への対応などを定めたマニュアルを策定し、必要に応じて研修や訓練を実施するほか、▽使用するプールの状況や参加する児童の泳力を事前に把握するなどして、重大事故の防止に努めるよう求めています。

こども家庭庁は今後、すでにあるマニュアルの内容を広く共有するとともに、滋賀県の事故の検証結果を踏まえて、必要な再発防止策の検討を進めるとしています。

東京 八王子 学童クラブのマニュアルは…

東京 八王子市では、学童クラブのプール活動で過去に起きた事故を受け、独自の安全対策を行っています。

八王子市では、13年前の2010年、学童クラブのプール活動に参加していた小学2年生の女の子が一時意識を失う事故が起きました。

事故を受け、八王子市はこの年、学童クラブの安全管理のマニュアルにプール活動での対策を追記しました。

マニュアルには、プール活動中の子どもの見守りについて、
▽児童数にあわせ、死角をつくらないよう、適正な人数の指導員を配置すること、
▽監視する担当エリアを指導員どうしで確認し合うこと、
▽指導員は1か所に気をとられず広く監視することなどが記載されています。

さらに、
▽保護者からの情報を含め、児童の体調を当日必ず確認すること、
▽活動後の児童の体調変化に目を配ること、
▽プールの設備に異常がないか、当日の使用前に確認することも書かれています。

このマニュアルは市がガイドラインとして作成していて、それぞれの学童クラブでさらに詳細に策定するよう求めています。

また、市内の学童クラブでは、溺れるリスクを減らすため、全長10メートル、深さ70センチほどの短く浅いプールで活動を実施することにしています。

以前は、全長25メートル、深さ90センチほどのプールも使っていましたが、事故の翌年から、短く浅いプールを使うようになったということです。

さらに、プール活動の前には学童クラブから市に対し、毎回、計画書を提出することが義務づけられています。

これも翌年から実施されていて、計画書には、
▽参加する児童と指導員の人数
▽心肺蘇生法を含めた救急救命の講習を受けた指導員が当日現場に何人いるか
▽緊急時に搬送する病院を2か所記載することが求められています。

市が計画書を見て、十分ではないと判断した場合は、プール活動を認めていないということです。

市の委託を受けて学童クラブを運営している、城山学童保育所の小島祐輔所長は「以前は大きなプールを使っていましたが、事故後は小さいプールを使っています。リスクはじゅうじゅう感じていますが、子どもたちはプールを楽しんでいて、いろいろな経験をさせてあげたいと思っています。安全を確認して実施していきたいです」と話していました。

専門家「マニュアル作るだけなく活用を」

安全工学が専門で子どものプール事故にも詳しい東京工業大学の西田佳史教授は、調査結果について「37%というのはとても低い数字で、マニュアル整備の大切さが浸透していないことを示している。マニュアルがないと、また今回のような事故につながってしまう」と話しています。

また、マニュアルには
▽泳力がない子どもにはライフジャケットを使うこと
▽監視の際は限られた範囲を分担すること
▽水面が光っている場合は水の中が見えにくくなるので場所を変えて見ること
▽大きな浮き輪などは下が見えにくくなるので使わないことといった、
具体的な注意点を書き込む必要があるとしています。

そのうえで、マニュアルは作るだけでは意味がなく、しっかり活用することが大切だとしています。

そして、今後は人の力に頼るだけではなく、技術の力も使うべきだとしていて、「人工知能を使ったカメラで溺れた人を見つけられるようにもなってきているので、そういったテクノロジーの導入を検討することも大切だ」と指摘しています。