高校野球 仙台育英が履正社に競り勝つ ベスト8進出

夏の全国高校野球、大会11日目の第1試合は、去年、東北勢として初優勝し、連覇を目指す宮城の仙台育英高校が大阪の履正社高校に4対3で競り勝って、ベスト8に進みました。

優勝経験があるチームどうしの対戦となった試合は仙台育英が2回、2年生の7番・鈴木拓斗選手がレフトにツーランホームランを打って、2点を先制しました。

履正社はそのウラ、7番・小川輝選手のタイムリーヒットなどですぐに同点に追いつくと、さらに3回、1点を勝ち越し、3対2とリードを奪います。

対する仙台育英は直後の4回、2アウト満塁のチャンスで1番・橋本航河選手のタイムリーヒットで再び同点に追いつきました。

履正社はレフト、西田大志選手が好返球で二塁ランナーをホームでアウトにして勝ち越しを許さず、試合は一進一退の攻防となります。

それでも仙台育英は8回、5番・尾形樹人選手がスクイズを決めて1点を勝ち越しました。

投げては6回からリリーフしたエースの高橋煌稀投手が140キロを超えるストレートで押していくピッチングで履正社に得点を与えず、連覇を目指す仙台育英が履正社に4対3で競り勝って、ベスト8に進みました。

《両チーム談話》

仙台育英 須江航監督「ロースコアにチャンス」

仙台育英の須江航監督は「相手は強かったです。まだベスト8なんだという気持ちが強いです。前半に守備のミスがたくさん出て、そこで奇跡みたいに1点しか取られなかったので、神様に勝てと言われたと思って冷静に戦えたと思います」と試合を振り返りました。

また、8回に勝ち越しとなるスクイズを決めた尾形樹人選手について「キャッチャーとしてもゲームをふかんして見ることができていたので、打席に入る前に『スクイズいくぞ、カウントは任せろ』と伝えました。ビッグプレーでした」とたたえました。

そのうえで「1回戦、2回戦と厳しい試合を経験していたので競った展開に持ち込めば絶対に大丈夫だという話を選手たちにはしていました。きょうのようにロースコアで試合に入ればチャンスがあると思うので、選手一人一人が自分のやるべきことを再確認して次の試合も臨みたい」と意気込みを話していました。

仙台育英 尾形樹人選手「スクイズの準備できていた」

8回に勝ち越しとなるスクイズを決めた仙台育英の5番、尾形樹人選手は「きょうは打線がつながるような試合にはならないだろうとチームで話していたので、あの場面ではスクイズのサインが来ると準備ができていました。メンバーを外れた選手たちがきょうの朝も室内練習場でボールを投げてくれて、その練習のおかげでスクイズが決まったと思っているので、チーム全員に感謝したいです」と話しました。

そして、次の試合に向けては「準々決勝からが本当の戦いになると思っているので、優勝旗をもう一度取り戻すという気持ちで、抜かりのない準備をして最高の状態で試合に臨みたい」と意気込みを話していました。

履正社 増田壮投手「自分たちの野球でき後悔はない」

7回途中まで3失点だった履正社高校の先発、増田壮投手は「とにかくチームを勝たせるという思いでマウンドにあがりました。先制されたあともすぐに同点に追いついてくれて味方が声をかけてくれました。勝てなかったことは非常に悔しいですが、自分たちの野球ができたことに後悔はないです」と話していました。

また、大会を振り返って「きょうもいい応援をしてくれて支えてくれる人がいることが目に見えてわかったので、感謝をして、これからも野球をしていきたい」と話していました。

履正社 福田幸之介投手「少し浮いた球が捉えられてしまった」

7回途中から登板した履正社高校の福田幸之介投手は継投の場面について「増田から頼むぞと言われていたので増田の分まで背負ってマウンドに上がりました。きょうは体や肩の調子も良く、いい球がいっていましたが、少し浮いた球が捉えられてしまい、申し訳ない気持ちです」と話していました。

また、8回ウラにヒットを打った場面については「自分が打たれたので次はバットで取り返したいと思い、なんとかつなぎました」と話していました。

仙台育英 須江監督 尾形選手に全幅の信頼を寄せる

3回に守備のミスが相次ぎ、相手に勝ち越しを許しながらも接戦を制した仙台育英高校。チームに勝利を呼び込んだのは、去年の優勝を経験した、キャッチャーで5番、尾形樹人選手の冷静な判断でした。

仙台育英は、2回に2点を先制。しかし、そのウラ、同点に追いつかれると、3回には守りで3つのエラーを出して1点を勝ち越される苦しい展開となりました。

須江航監督はこの展開について「守備のミスがたくさん出たのに、奇跡みたいに1点しか取られなかった。神様に勝てと言われたと思った」と振り返ったうえで、当時、選手たちに「自信を持って落ち着いてプレーすれば大丈夫」と声をかけたといいます。

冷静な判断が光ったのは尾形選手でした。

先発の湯田統真投手は履正社高校の強力打線を5回まで3点にしのぐ力投を見せます。

ところが、尾形選手は「5回は湯田投手がよくない時の傾向が出ていた」と須江監督にピッチャーの交代を提案したといいます。

そして、尾形選手は6回からマウンドに上がったエースの高橋煌稀投手をリードしました。

高橋投手が試合中に行ったピッチング練習で、スピードに乗ったストレートを投げ込んでいたのに手応えを感じたという尾形選手。

8回2アウト一塁三塁のピンチでも、高橋橋投手にストレートのサインを4球連続で出して、相手バッターを空振り三振に打ち取りました。

さらに、決勝点をもたらしたのも尾形選手でした。

3対3の同点で迎えた8回、先頭バッターの3番、湯浅桜翼選手がツーベースヒットで出塁すると、5番の自分の打席でスクイズの指示が出ると確信していたといいます。

須江監督の戦略を先読みし「監督がスクイズのサインを出しやすいカウントをつくることだけ考えました」と尾形選手。初球のボール球をしっかり見極めたあと、2球目を転がしてスクイズを成功させました。

須江監督も「周りがふかんできて、チームを勝たせることができるキャッチャーは、なかなかいない」と全幅の信頼を寄せる尾形選手。

連覇に向け「ここからが本当の甲子園。落ち着いて自分の持ち味を出したいです」と話した尾形選手の表情は、頼もしさにあふれていました。