自民 安倍派「常任幹事会」設置 塩谷元文科相が取りまとめ役に

会長不在の状態が続く自民党安倍派は、当面は会長を置かずに主要なメンバーが参加する「常任幹事会」を新たに設置し、取りまとめ役を塩谷 元文部科学大臣が務めることになりました。

自民 安倍派 「常任幹事会設置」新たな運営体制へ

自民党最大派閥の安倍派は、安倍元総理大臣が亡くなった去年7月から会長不在の状態が続き、幹部の間で今後の派閥運営をめぐる協議が行われてきました。

17日党本部で開かれた派閥の総会で、会長代理を務める塩谷 元文部科学大臣は「結束して1人でも欠けることなく最大派閥として岸田政権を支えていきたい」と述べました。

そのうえで、新たな運営体制として、当面は会長を置かずに主要なメンバーが参加する「常任幹事会」を設け、取りまとめ役の「座長」をみずからが務める案を提案しました。

これに対し、出席者からは「新たな会長を選ぶべきだ」という意見や「『座長』の名称は対外的に分かりにくい」といった指摘が出されましたが、最終的には「常任幹事会」を設置し、塩谷氏が取りまとめ役を務めることを確認しました。

そして塩谷氏に、「常任幹事会」の規模や人選、それに塩谷氏の役職の名称などを一任することになりました。

塩谷氏は記者団に対し、派閥の通称は「安倍派」のままになるという見通しを示したうえで「安倍さんが突然亡くなり会長をやる人を選ぶのは難しい。しっかり運営できる体制を提案して基本的には賛同してもらったと思う。常任幹事会のメンバーは閣僚経験者を中心に選任したい」と述べました。

新体制の背景は?政治部 立石顕記者が解説【QA】

Q.派閥の会長だった安倍元総理大臣が亡くなって1年以上がたちますが、時間がかかったのはなぜですか?

A.衆目の一致する後継者がいなかったというのが最大の要因です。

今後の内閣改造や党役員人事を前に最大派閥としての存在感を示すためには新たな会長を決めるべきだという声もあったのですが、有力議員が複数いる中で、無理に決めれば、分裂を招きかねないという懸念もありました。

“集団指導体制”とも言える17日に決まった体制は派内の事情を踏まえた「折衷案」と言えそうです。

Q.会長不在の状態はいつまで続きますか?

A.「常任幹事会」のメンバー構成もこれから決めるということですので、いつまでこの状態が続くのかは見通せません。

派閥のなかには、新たな会長をできるだけ早く決めなければ党内での影響力を発揮しにくくなるという声も根強くあります。

かつて派閥の領袖(りょうしゅう)を務めた森元総理の意向も取り沙汰される中、新たな体制でどこまで派閥の結束を図れるかが今後の焦点となります。

”安倍派” 派閥の歴史は

福田赳夫 元首相

安倍派の正式名称は「清和政策研究会」で、福田赳夫 元総理大臣が立ち上げました。

党内でも保守的な政策グループとされています。

2000年以降は、森喜朗氏、小泉純一郎氏、安倍晋三氏、福田康夫氏と総理大臣を次々輩出し、現在は100人が所属する党内最大派閥となっています。

左:三塚博 元大蔵相 右:加藤六月 元農相

一方、過去には分裂の歴史もあり、1990年代には、2代目の会長を務めた安倍晋太郎・元外務大臣の後継をめぐって、三塚博 元大蔵大臣と加藤六月 元農林水産大臣の実力者2人が激しく対立し、三塚氏が会長に就き、加藤氏が派閥を離れました。

また、三塚氏の後継会長をめぐっては、森氏と亀井静香 元政務調査会長が激しく争い、森氏が会長に就き、亀井氏はおよそ20人を引き連れて派閥を離脱しました。

さらに安倍氏が再び選出された2012年の総裁選挙では、分裂こそ免れたものの、当時の派閥会長の町村信孝・元衆議院議長も立候補し、派を二分する争いとなりました。

出席した議員の受け止めは

今回の新たな運営体制について、総会に出席した議員からは歓迎の声や「会長」を求める声などが聞かれました。

柴山 元文科相「納得の結論で歓迎」

柴山 元文部科学大臣は記者団に対し「皆さんが納得する結論になったことは歓迎している。安倍元総理大臣が亡くなって1年がたち、代わる人材を据え育てていくことが難しい中でこの判断は私は正しかったと思う」と述べました。

松島 元法相「塩谷氏は派閥を代表する存在に」

松島 元法務大臣は記者団に対し「私が新聞記者をしていた時代から何十年と派閥内の抗争を見てきたが、このように穏健に決まってよかった。塩谷氏も『会長になる』とは口にしないが、とにかく派閥を代表する存在になってもらうということだ」と述べました。

大塚衆院議員「派閥の危機 乗り切った」

大塚拓衆議院議員は記者団に対し「安倍元総理大臣の一周忌から1か月余りでまとまり、適切なタイミングで新しい体制を決めることができた。派閥として危機だったが、メンバー全員で力を合わせて乗り切った。みんなで力を合わせて仕事をしていきたい」と述べました。

高鳥衆院議員「順当な結論 派閥の力発揮を」

高鳥修一衆議院議員は記者団に対し「順当な結論だ。いろいろな意見があって会長を簡単に決められない事情もあるのは理解する。派閥として結束していくことが極めて大切なので、1つの結論を得たことは貴重な一歩で、派閥としての力を示してほしい」と述べました。

衛藤 元衆院副議長「会長を速やかに決めるべき」

安倍派の最高顧問を務める衛藤征士郎 元衆議院副議長は、記者団に対し、17日の総会での決定には同意するとしながらも「私は会長をできるだけ速やかに決めたほうがいいと思う。人事の交渉でも、『座長』が行くより会長のほうがいい」と述べました。

大西衆院議員「これからも 会長決定へ努力」

大西英男衆議院議員は記者団に対し「安倍元総理大臣の遺志を受け継ぎ、日本の政治の中心でリーダーシップを取って派閥を運営していくというのが一致した気持ちだ。安倍氏が偉大だっただけに次の会長を決めるのは大変だが、これからも会長を決めるためさらに努力を続けていく」と述べました。