静岡 “竜巻の発生確認” 広範囲で突風被害 気象台が調査

台風7号の影響で静岡市駿河区では突風による被害が相次ぎました。気象台は、竜巻の発生が確認されたとしたうえで、被害が広範囲に及んでいることから、すべてが竜巻によるものなのか調査を進めています。

静岡市によりますと、15日午前11時すぎ、市内の駿河区で突風による被害が相次いで確認されました。

住宅の屋根瓦が剥がれたり、ゴルフの練習場のネットが破れたりしたということです。また、電線の断線などにより最大で2170戸の停電が発生しました。

市では被害状況の把握を進めていて、今後、被害件数はさらに増える見通しだということです。

静岡地方気象台は、駿河区で竜巻の発生が確認されたとしたうえで、被害が広範囲に及んでいることから、すべてが竜巻によるものなのか調査を進めています。

午前10時50分ごろに静岡市のマンションの22階から撮影した映像では、川の周辺で、上空を覆う雲から白く細い筋がのびている様子が確認でき、竜巻が発生しているとみられます。

撮影者によりますと、当時、雨が降り、風も吹いていたものの、部屋の中から音が聞こえるほどの強さではないということです。

強風で車横転 男性が病院に搬送

消防によりますと、午前11時すぎ、静岡市駿河区のレンタルDVDなどを扱う店舗の駐車場で、「強風で車が横転し、男性が出血して車内に取り残されている」と、近くに住む人から通報がありました。

男性は50代で、市内の病院に搬送されました。意識はあるということです。

駐車場では横転した車のほかにも複数の車の窓ガラスが割れているのが確認され、消防は竜巻とみられる突風が発生したとみて現場周辺を調べています。

また、中部電力パワーグリッドによりますと、午前11時の時点でこの地域を含め駿河区で2170戸が停電していて、電線が切れたという情報もあり、確認を進めています。

事業所「建物の屋根が飛んだ」

静岡市駿河区西島の事業所では「建物の屋根が飛んだ」と従業員から消防に通報がありました。

NHKが入手したドライブレコーダーの映像では、突然、建物の屋根が舞い上がるように吹き飛ばされる様子が確認できます。

近くに住む50代の女性は、「クリーム色のトタン屋根が下からあおられるように飛んできているのが見えた。電線にからまったときに火花も出ていたので、とても怖かったです」と話していました。

また、この事業所の周辺では停電も発生し、信号機が消えたため、警察官が手信号で交通整理をしていました。

工場「窓ガラスが散乱」

静岡市駿河区西脇にある金属加工会社の工場では、突風で窓ガラスが割れるなどの被害が出ました。

会社の関係者によりますと、午前11時半ごろ、警備会社から窓ガラスが割れていると連絡があり、従業員が確認したところ、工場の事務所の窓ガラスが粉々に割れていたということです。

工場は15日は休みで事務所に人はおらず、けが人はいませんでした。

屋根の一部も飛んだとみられ、従業員が飛び散ったガラスを集めるなど片づけに追われていました。

50代の従業員は「連絡を受けて来たら窓ガラスが散乱していた。初めてのことでここまでの被害とは思わなかった。工場の機械が壊れていないかこれから確認します」と話していました。

ゴルフ練習場 ネット破れ臨時休業に

静岡市駿河区中田本町のゴルフ練習場では、突風の影響で、ネットが破れる被害が出ました。

ネットは天井にあたる部分から裂けるように破れ、支柱がむき出しになっていました。

練習場の経営者の男性は「きょうは臨時休業することになりました。お客さんが来る予定だったので台風には備えていましたが、突風には対応しきれないです」と話していました。

“竜巻のような雲 別の場所で再び目撃”

午前10時50分ごろ、気象庁が竜巻が発生したとしている静岡市駿河区で、マンションの25階から撮影された映像では、「ろうと型」の雲が地上に向かってのびて、渦を巻きながら移動している様子が確認できます。

撮影した男性によりますと、午前10時50分ごろに竜巻のような雲が発生し、渦を巻きながら移動したあと、見えなくなったということです。

その後すぐに、近くの別の場所で再び竜巻のような雲を目撃したということです。

男性は、「風でトタン板が飛ばされていて、竜巻が発生したと気がつきました。一度は消えたと思ったあと、今度は黒いビニールの破片などを巻き込んだ竜巻を目撃しました」と話していました。

また、「2回目に見た竜巻のほうが大きかったです。被害が出ているのではないかと心配しながら様子を見ていました」と話していました。

専門家「台風に伴う竜巻の典型的な事例」

静岡市で確認された竜巻について、突風のメカニズムに詳しい防衛大学校の小林文明教授は、「積乱雲からのびる『ろうと雲』と呼ばれる渦が確認でき、台風に伴う竜巻の典型的な事例だ」と指摘しました。

その上で、車が横転するなどの被害が出ていることから、「屋根瓦が飛ぶようなものではなく、瞬間風速でいうと30メートルや50メートルを超えるような、比較的弱い住宅が倒壊するくらいの強さだった可能性がある」と話していました。

小林教授は、6段階で判定する「日本版改良藤田スケール」と呼ばれる指標で、下から2番目の「1」か、3番目の「2」にあたる可能性があるとしています。

今回、静岡県や鳥取県で突風が確認されていますが、小林教授は今後の注意点として、「台風に伴う竜巻は中心から離れた場所でも発生し、統計的にみると、台風の中心から100キロから600キロくらいの間で起こりやすい。台風の東側で起きることが多いが、今回鳥取でも確認されたように西側でも発生する可能性がある。台風が離れていても、気象情報に注意し、積乱雲が近づく兆しがあるか判断することが大事だ。さらに今回は台風の進行がゆっくりなので、長期間注意してほしい」と呼びかけていました。

現地に職員を派遣し被害状況を調査

静岡市駿河区で突風の被害が相次いだことを受けて、静岡地方気象台は現地に職員を派遣し、瓦が飛んだ住宅など被害状況を調査しました。

静岡地方気象台は職員4人を駿河区の西脇地区と西島地区に派遣し、職員たちは、瓦が飛んだ住宅を撮影したり、被害を受けた事業所の関係者から当時の様子を聞き取ったりして被害状況を確認していました。

駿河区の突風をめぐっては、SNSで映像の投稿が相次ぎ、気象庁は「竜巻」の発生が確認されたとしたうえで、被害が広範囲に及んでいることから、すべてが竜巻によるものなのか調べています。

静岡地方気象台の上清直隆次長は「どういった現象が起きたかはまだわからないが、撮影された竜巻以外のダウンバーストなどの現象が起きた可能性がある。被害をおこした現象が映像の竜巻と関係あるのかないのか検討していきたい」と話していました。