スポーツクライミング世界選手権 楢崎智亜が銅 五輪代表内定

スポーツクライミングの世界選手権、男子ボルダー&リードの決勝が行われ、東京オリンピック代表の楢崎智亜選手が得意とする前半のボルダーで4つの課題すべてを完登し、銅メダルを獲得して、来年のパリオリンピック代表に内定しました。

スイスで開催されたスポーツクライミングの世界選手権は最終日の12日、「課題」と呼ばれるコースを制限時間内にいくつ登ったかを競う「ボルダー」と1回のトライで壁を登り、制限時間内に登った高さを競う「リード」の2種目の合計点で争う、男子ボルダー&リードの決勝が行われました。

3位以内に入ればパリオリンピックの代表に内定する決勝には、東京オリンピック代表でエースの楢崎選手と今大会のリード種目で銀メダルを獲得した16歳の高校生、安楽宙斗選手の日本勢2人が進出しました。

このうち楢崎選手は、得意とする前半のボルダーで、持ち味のパワーとダイナミックな動きを生かして4つの課題すべてで完登し99.7でトップに立ちました。

そして、後半のリードでは、多くの選手が苦しんだ中盤の傾斜の最後のホールドで落下したものの57点を獲得し、合計を156.7として銅メダルを獲得しました。

この結果、楢崎選手は2大会連続のオリンピックとなる来年のパリ大会代表に内定しました。

一方、今シーズン、ボルダーとリードそれぞれのワールドカップで1回ずつ優勝を果たすなど、急成長を見せている安楽選手は、ボルダーで3つの課題を完登して3位につけましたが、得意のリードで得点を伸ばすことができず、合計149.1で4位となり、今回の世界選手権でのパリオリンピック代表内定はなりませんでした。

優勝はオーストリアのヤコブ・シューベルト選手で合計183.6でした。

楢崎智亜 プロフィール

楢崎智亜選手は栃木県出身の27歳。

小学4年生のときに、兄の影響で、近所のジムでクライミングを始めました。

パワーが要求されるボルダー種目を得意としていて、小さい頃に習っていた体操で培った身のこなしや、運動能力の高さを生かしたダイナミックな動きが持ち味です。

国際大会で実績を残しクライミングが初めて採用された東京オリンピックには日本男子のエースとして臨んだものの、ミスもあって4位に終わり、期待されていたメダル獲得はなりませんでした。

「パリオリンピックで金メダルを取って雪辱を果たす」と再スタートを切った楢崎選手は弟の明智選手とともにトレーニングを積んでレベルアップを図り、ことしのワールドカップではボルダー種目で年間3位に入りました。

一方で今回の世界選手権では、ボルダーで13位、リードでは12位といずれも決勝に進めていませんでしたが、パリオリンピックの代表選考がかかるボルダー&リードでは勝負強さを見せました。

妻はスポーツクライミング女子の東京オリンピック銅メダリスト、野口啓代さんでことし5月には第一子が誕生しました。

楢崎「まさかの3位となり本当にうれしい」

男子ボルダー&リードで銅メダルを獲得した楢崎智亜選手は「ボルダーが終わった段階で、リードが得意な選手が得点を稼いでいたので、本当に厳しい戦いになるだろうなと思っていた。まさかの3位となり本当にうれしい」と振り返りました。

メダル獲得が期待されながら4位に終わった東京オリンピックに続き、2大会連続でオリンピック代表に内定したことについては「僕にとって今までで一番悔しかったのは、東京オリンピックで金メダルを取れなかったことなので、その気持ちはオリンピックでしか返せない。この冬、さらにリードの力をつけることが、パリでの金メダルへ向けて大事かなと思っている」と来年を見据えました。

安楽「力が入っていたかな」

男子ボルダー&リードで4位となった安楽宙斗選手は「得意とするリードでほかの選手とのポイント差を開くことができなかったのでこの結果は妥当だと感じている。何も考えずにいこうと思っていたが、力が入っていたかなと思う」と悔しさをにじませました。

そのうえで「今シーズンはワールドカップも残り2戦あり、パリオリンピックのアジア予選もあるので、モチベーションを下げずに、特にリードを練習していきたい」と前を向いていました。