ハワイ 山火事の死者93人に 2200棟以上の建物が損壊

ハワイのマウイ島で起きた山火事による死者は、これまでに93人に上り、アメリカで起きた山火事の犠牲者としては過去100年余りで最多だと地元メディアが伝えました。被害が大きい西部の観光地では、これまでに2200棟以上の建物が損壊したとみられ、影響の長期化が懸念されています。

93人死亡 損壊2200棟余“影響の長期化懸念”

ハワイのマウイ島で8日に発生した山火事では火がハリケーンに伴う強風にあおられて市街地に急速に燃え広がり、12日現在で確認された死者の数は93人に上っています。

地元当局は、11日時点で高校や教会などに1400人余りが避難したと発表し、地域で食料や水の配布が行われているとしています。

また、この週末には、コミュニティーセンターで家族が行方不明になっている人への支援も行うということです。

山火事による被害を調査しているPDC=太平洋災害センターなどは12日、市街地のほとんどが山火事に巻き込まれた西部の観光地ラハイナでの被害の推定値を発表しました。

それによりますと、焼失面積はおよそ880万平方メートルに上り、4500人が避難を必要としているということです。

また、被害を受けた建物の86%が住宅で、2207棟が損壊し、再建には55億2000万ドル、日本円でおよそ8000億円の費用が必要だとしていて、山火事による影響の長期化が懸念されています。

過去100年余で犠牲者最多 アメリカの山火事で

アメリカで起きた山火事の犠牲者としては過去100年余りで最多だと、CNNテレビなどが伝えました。

ハワイ州のグリーン知事は12日の記者会見で、さらに死者が増える可能性があるとしたうえで「私たちがいままで経験したことのない大規模な自然災害で、復旧には途方もない時間がかかる」と述べました。

また、同じ記者会見で消防当局は「火が地面から低い位置で水平に移動し、信じられないほどの速さで燃え広がった」と説明しました。

今回の山火事では、ラハイナにある日系人ゆかりの寺「ラハイナ浄土院」も被害を受け、本殿などのほか、町のシンボルの1つだった三重の塔が消失しました。

寺で撮影された当日の映像には、やしの木が強い風にあおられて激しく揺れている様子が捉えられています。

寺の主任開教使の原源照さん(87)は「ことばにならない状況ですが、避難した人たちが持ちこたえている姿に励まされました。ラハイナの復興にどのように寺が貢献できるのか考えていきたいです」と話していました。

米政府 150人以上を派遣 捜索 救助続く

アメリカのFEMA(フィーマ)=連邦緊急事態管理庁によりますと、これまでに捜索救助隊を含む150人以上が派遣されたほか、沿岸警備隊など10を超える組織が救援活動を続けているということです。

マウイ島では1400人余りが6か所に分かれて避難していて、ボランティアによる支援も行われています。

このうち、最大の避難所が置かれている体育館では、体調を崩すなどした人のための医療相談を受け付けているほか、市民や企業の関係者がペットボトルの水や赤ちゃん用のおむつなどを届けていました。

一方、壊滅的な被害を受けたラハイナでは、一時、住民の帰宅が認められたものの、混乱が起きたとして再び立ち入り禁止となり、ラハイナに向かう道は12日も、大勢の住民が車で詰めかけて数キロにわたる渋滞が発生しました。

警察の検問によって作業にあたる車両以外は通行できず、住民は引き返すことを余儀なくされていて、住民の1人は「きょうこそは自宅に戻れるのではないかと思っていますが、通してもらえるのかよく分かりません」と話していました。

空港に近いカフルイの避難所 約200人が避難

マウイ島の空港に近いカフルイにある避難所には山火事の被害を受けた地域の住民やホテルに宿泊していた観光客などおよそ200人が身を寄せていました。

避難所では親戚や友人の家に避難している人たちにも寄付された物資を配給したり、シャワーを提供したりしていて、大勢の人が訪れていました。

避難所の責任者のシャノン・モロッコさんは「多くの人々が逃げられなかったことを考えると恐ろしいです。避難してきた人たちは命からがら逃げてきて、途中で車のガソリンがなくなり、海に飛び込んだ人もいます。携帯電話が使えず、停電している地域もあり、多くの家族がいまも行方のわからない人となんとか連絡をとろうとしています。先が見えません」と話していました。

そのうえで「私はこの島で生まれ、育ち、この島が大好きです。人々を思いやり助け合うアロハ・スピリットが大好きです。ただこんな事態は初めてです。とにかく信じられません」と話していました。