【11日詳細】ハワイ山火事 55人死亡 “不明者の救助に全力”

ハワイのマウイ島で起きた山火事で地元当局は10日、これまでに55人の死亡が確認されたと発表しました。ハワイのグリーン州知事は「州の歴史上、最大の自然災害とみられる」と述べ、引き続き、行方不明者の捜索や救助に全力を挙げる方針を示しました。

ハワイのマウイ島で8日に発生した山火事では、火がハリケーンに伴う強風の影響で市街地に急速に燃え広がり、地元当局は10日、これまでに55人の死亡が確認されたと発表しました。

このうち、市街地のほとんどが山火事に巻き込まれた西部のラハイナの中心部は立ち入りを規制して、行方不明者の捜索などが続けられています。

ハワイのグリーン州知事は記者会見で、「州の歴史上、最大の自然災害とみられる」と述べ、引き続き、行方不明者の捜索や救助に全力を挙げる方針を示しました。

一方、島の7か所に設けられた避難所には少なくとも2100人の住民が身を寄せています。

このうち、最も大きな体育館はすでに避難してきた人でいっぱいになっていて、体育館の外や駐車場の車のなかで過ごしている人も大勢いました。

体育館の敷地には、生活用品や食料の寄付を受け付けるテントが設置され、市民が次々に物資を寄せていました。

また、島の空港は10日午前、島外に向かう航空便を待つ観光客で混雑していました。

サンフランシスコから息子と島を訪れていた男性は「バスで焼けた町の脇を通りました。すべてが焦げ、破壊され、平らになっていました。戦場のようでした」と話していました。

NHKの取材班は10日、マウイ島に入りました。

島の空港は島外へ避難しようと航空便を待つ観光客で混雑していました。

ロサンゼルスから家族と訪れていた男性は「ホテルから町が燃えるのが見えました。空は煙で覆い尽くされ、炎が押し寄せているのが見えました」と話していました。

また、サンフランシスコから息子と島を訪れていた男性は「バスで焼けた町の脇を通りました。すべてが焦げ、破壊され、平らになっていました。戦場のようでした」と話していました。

ハワイの観光当局はマウイ島への不要不急の渡航は控えるよう呼びかけています。

ホノルルにある日本の総領事館によりますと、これまでに日本人がけがをしたなどという情報はないということです。

ハワイ諸島で2番目に大きなマウイ島とは

マウイ島はハワイ州の州都・ホノルルがあるオアフ島の南東に位置し、ハワイ諸島では2番目に大きな島です。

ダイビングやサーフィンなどマリンスポーツが盛んで、ハワイ州によりますと、去年1年間でおよそ290万人の観光客が訪れたということです。

また、山火事で大きな被害を受けた西部ラハイナは、かつてのハワイ王国の首都が置かれ、アメリカの歴史保護区に登録されていて、100年以上前に日本からの移民が建てたお寺があることでも知られています。

現地に住む日本人「何も持たずに着の身着のままで逃げた」

山火事の被害が起きたラハイナに自宅がある日本人の浅川かおりさん(56)は現在、夫や長女、愛犬と一緒に知人の家に避難しています。

浅川さんは「娘が1人で家にいたが、煙が家の中に入ってきたので急いで車で逃げた。当初は連絡がつかなかったので、ずっと心配していた。再会できたときは『ただただ、よかった』と抱き合った。すごく安心した」と、当時の緊迫した状況について話していました。

浅川さん夫妻は地元のマーケットでビーガン向けの料理を提供していて、家には調理用の機材や店のテントなどが保管されていました。

浅川さんの自宅があるラハイナは立ち入りの規制が続いていて、家の様子は確認できていません。

浅川さんは「パスポートも現金も何も持たずに、着の身着のままで逃げた。家には大事なものがたくさんありました。すべて焼けているのか、少しは残っているのかわからないが、とにかく早く家を見に行きたいです」と話していました。

また、浅川さんは「観光客も戻り、街が活気づいたところだった。私たちもつい2週間ほど前まで、1年間日本に長期で帰っていたが、マウイに戻ってきて、これから店を頑張ろうと思っていた矢先だった。本当に悲しいです。くよくよしていてもしょうがないので、頑張ろうと思います」と話していました。

山火事が発生した8日に避難する際の映像

NHKが住民から提供を受けた映像です。

この映像はNHKのインタビュー取材に応じた浅川かおりさんの娘、明海さんが山火事が発生した8日に避難する際に撮影しました。

映像からは激しい炎から逃れようと海岸に避難している住民たちの姿が確認できます。

また、別の映像にはラハイナの街に煙が押し寄せ、高く立ちのぼっている様子が捉えられています。

山火事の被害が広がった背景

今回、山火事の被害が広がった背景には、ハワイの近くを通過していたハリケーンに伴う非常に強い風と、マウイ島で乾燥した気候が続いていたことが関係していると指摘されています。

地元の消防の責任者によりますと、今回の山火事は現地時間の8日未明に島の複数の場所で発生しました。

午前11時ごろには、風速25メートルほどの非常に強い風によって火の勢いが強まり、火災の範囲は2.7平方キロメートルに及びました。

消防は島の各地から消防士を確保したものの、そのあとも複数の場所で同時に火災が広がり、それぞれの場所で少ない人数での対応を余儀なくされたということです。

風に加えて、被害が広がった原因と指摘されているのが乾燥した気候です。

AP通信はマウイ島の一部が、急激なスピードで乾燥が進む「フラッシュ干ばつ」に見舞われ、火事が広がりやすい状態になっていたのではないかという専門家の見方を伝えています。

それによりますと、マウイ島の一部は2023年5月は通常の状態だったのに対し、8月に入ると急速に乾燥状態が広がっていったということです。

専門家は「降水量の少なさや蒸発の進行で地面や植物の乾燥が急速に進む『フラッシュ干ばつ』が起きたものとみられる。気候変動は異常な状況を加速させるため、洪水や干ばつの頻度が高くなる」と指摘しています。