楽天 半年間決算1399億円赤字

楽天グループが発表したことし1月から6月まで半年間の決算は、最終的な損益がおよそ1300億円の赤字となりました。携帯電話事業で赤字が続いていることが要因で、この時期としては4期連続の赤字となりました。

楽天グループの三木谷浩史社長は決算会見で、今後の会社の経営についてみずからの考えを説明し、「絶対的な自信を持っている」と述べました。

1399億円の最終赤字 主な要因は携帯電話事業に

楽天グループのことし1月から6月まで半年間の決算は、ネット通販や金融事業が好調で、売り上げが9728億円と、去年の同じ時期よりも9.5%増えました。

一方、最終的な損益は1399億円の赤字となりました。

赤字幅は前の年の同じ時期と比べて300億円余り縮小したものの、この時期としては4期連続の赤字です。

携帯電話事業で基地局の整備などの負担から赤字が続いていることが主な要因となっています。

会社はことし6月から、高速のデータ通信を無制限に低価格で利用できる新プランの運用を始めるなど契約者数の拡大を目指しています。

基地局の整備のために発行した多額の社債の償還を来年以降に控えるなか、財務基盤の強化と携帯電話事業の早期の黒字化が経営課題となっています。

楽天グループの三木谷浩史社長は10日に開いた決算会見で、今後の会社の経営についてみずからの考えを説明しました。

三木谷社長「黒字化し国内ナンバーワンへ」

(三木谷社長)
「携帯電話事業は1週間、2週間のうちに500万回線が実現するのではないかと思っている。黒字化したうえで、国内ナンバーワンのモバイルキャリアへの道を突き進んでいこうということだ」

クレジットカード事業などグループ再編で財務強化図るねらいか

また、中核のクレジットカード事業とスマホ決済事業を一体的に運営するため、グループの再編を行うことを正式に発表しました。

カード子会社の株式の上場を今後、検討し、携帯電話事業が経営を圧迫するなか、財務の強化を図るねらいがあるものとみられます。

楽天の会見より

発表によりますと、楽天グループはクレジットカード事業を行う「楽天カード」の傘下にスマホ決済事業を行う「楽天ペイメント」を子会社として置き、ことし11月にグループの再編を行うことを10日の取締役会で決めました。

事業を一体的に進めることで、いわゆる“ポイント経済圏”の競争力強化につなげるねらいです。

楽天はこれまでも、▽傘下の銀行や証券会社の株式の上場や、▽3000億円規模の増資など資金の調達を急いできました。

今回のグループ再編について会社は発表で、「第三者との戦略的パートナーシップや、必要に応じた独自の資本調達などについて柔軟に検討する」としていて、中核となるカード子会社で株式の上場を今後、検討するものとみられます。

こうした財務基盤の強化策を一段と進めるとともに、赤字が続く携帯電話事業の立て直しをどのように進めていくかが、グループ全体の課題となります。

総合キャッシュレス決済カンパニーへ進化させていく

(三木谷社長)
「オンラインとオフラインにマーケティングデータをどうやって組み合わせていくかということが大変重要なポイントだ。カード、ペイ、ポイントなどを一元化し、総合キャッシュレス決済カンパニーへ進化させていく」

4期連続の赤字経営への懸念については

一方、三木谷社長は4期連続で赤字となったことに関連し、ネット上で経営状況に懸念の声があることについてはー

「経営に絶対的な自信」

(三木谷社長)
「僕はインターネットとかニュースとか見ないので、よくわからないです。正直言って。経営に絶対的な自信を持っているということしか言えない。楽天モバイルは巨大なネットワークを3年でつくるという未曽有のプロジェクトだ。そこに果敢に挑んでいる理由は、利益を上げることと世の中のニーズと社会的な要求があるからだ」

「財務的にも、まもなくグループ全体で黒字化が復活し、それによる実際のキャッシュフローもポジティブになっていくことが見えてくる。銀行、証券、そして今回のカードやペイメント事業に関しても、言い方は悪いが、やろうと思ったらいつでもマネタイズできるというメッセージをマーケットに送っているというのも多少ある」

楽天の財務支えるクレジットカード事業とは

「楽天カード」が手がけるクレジットカード事業は急速に利用者を伸ばし、グループの中核に成長しています。

ことし6月末時点のカードの発行枚数は2900万枚余りとなり、去年1年間の売り上げは2900億円余りに拡大しました。

楽天カードを使った決済を行うと、グループのECサイトで商品を購入する際などにポイントの還元率が増えるというメリットを利用者にアピールしています。

会社としてはクレジットカードをきっかけに、グループ内のさまざまなサービスの利用拡大につなげるねらいがあり、カード事業は「ポイント経済圏」と呼ばれる顧客の囲い込みの中心的な役割を果たしてきました。

一方、「楽天ペイメント」はQRやバーコードでのスマートフォン決済などの事業を手がけ、専用のアプリを使って加盟店舗で買い物の決済のほか、ポイント還元のサービスを提供しています。

ただ、この分野では、別のグループの傘下にある「PayPay」が5800万人以上の登録者を集めて先行するなど競争が激しくなっていて、「楽天ペイメント」の去年1年間の決算は、最終的な損益が69億円の赤字となっています。

このため楽天はグループのポイントカードとスマホ決済を同時に使った場合のポイント還元率を引き上げるなど、さらなる利用者拡大に向けた動きを加速させていました。

「ポイント経済圏」で顧客囲い込み 各社で競争激化

各社の間では、利用が拡大するスマートフォン決済と自社のクレジットカードを結び付けることで、「ポイント経済圏」と呼ばれる顧客の囲い込みを強化する動きが激しくなっています。

▽スマホ決済のPayPayはこのところ急速に利用者を拡大し、存在感を高めています。

去年10月にはクレジットカード事業を子会社化したうえで、スマホ決済の支払い元を今後、自社のクレジットカードに限定する方針を打ち出しています。

スマホ決済の利用者をクレジットカードの発行に促すことで、自社の経済圏に囲い込もうというねらいです。

▽カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営するTポイントは来年春、クレジットカードも扱う三井住友フィナンシャルグループのポイントサービスと統合することで合意し、陣営としての会員数を一気に広げる戦略を進めています。

各社ともさまざまな決済手段を結び付けることで利用者を囲い込むねらいがあり、その戦略の中心としてスマホ決済とクレジットカードとの連携を強化する動きはさらに激しさを増しそうです。