9月からのコロナワクチン接種 子ども含め幅広く対象に【Q&A】

オミクロン株の派生型に対応した新型コロナウイルスのワクチン接種について、厚生労働省は、重症化リスクが高くない人にも一定程度重症者が確認されていることから、生後6か月以上のすべての人を対象に9月20日から実施する方針を決めました。

これまでの接種と何が変わるのか、今後はどうなるのか詳しくまとめました。

オミクロン株の派生型に対応したワクチン接種 9月から

新型コロナのワクチン接種は来年3月まで無料で行われ、現在は高齢者や基礎疾患のある人など重症化リスクが高い人を対象に実施されています。

一方、国内でオミクロン株の派生型を中心に感染が拡大し、重症化リスクが高くない人にも一定程度、重症者が確認されていることから、厚生労働省は、9日の専門家分科会でオミクロン株の派生型に対応したワクチン接種について、生後6か月以上のすべての人を対象に9月20日から行う方針を示し、了承されました。

使用するワクチンは流行の主流となっているオミクロン株の派生型の「XBB」系統に対応するもので、今後、承認の手続きが行われます。

また、法律に基づいて、自治体が接種券を送付するなどして勧める「接種勧奨」や接種を受けるよう努めなければならないとする「努力義務」の規定については、今回は、重症化リスクの高い人にのみ適用するということです。

一方、来年度以降の接種については、対象者や費用負担のあり方などについて、あらためて部会で議論したうえで決めることにしています。

【Q&A】9月からの接種で何が変わる?

Q.コロナワクチン 現在の接種は?

A.新型コロナウイルスのワクチン接種は、まん延を予防するために緊急の必要があるとして、接種費用を全額公費で負担する「特例臨時接種」として2021年2月から行われています。

さらに国はまん延防止のため接種に協力をしてもらおうと、予防接種法上の「努力義務」と「接種勧奨」という2つの規定を適用してきました。

この2つの規定は、ワクチン接種についての国からの関与を定めたもので、日本脳炎や風疹などにも適用されているものです。

このうち「努力義務」は対象の国民は接種を受けるよう努めなければならないと規定しているものです。

ただし強制ではなく、あくまで本人や保護者が有効性や安全性を考慮して接種するかどうかを決めることになっていて、受けなかったとしても罰則はありません。

また「接種勧奨」は市町村が対象となっている住民に対して接種券やチラシを送るなどして接種を勧めることを規定したものです。

ことし5月から始まった今年度の接種では、基礎疾患がある人や高齢者など重症化リスクのある人や、医療従事者が対象となり、2つの規定は次のように適用されました。

▼一度も接種をしていない人への「初回接種」
 →接種可能なすべての年齢の人に「接種勧奨」「努力義務」を適用

▼2回の接種を済ませた人の3回目以降の「追加接種」
 →高齢者など重症化リスクの高い人に「接種勧奨」「努力義務」を適用

Q.9月からの接種では何が変わる?

A.9日に開かれた厚生労働省の専門家分科会では生後6か月以上のすべての人を対象に9月20日から接種をおこなうとしたうえで、高齢者や基礎疾患がある重症化リスクの高い人にのみ「努力義務」や「接種勧奨」を適用することを決めました。

一方で昨年度までの接種では「努力義務」「接種勧奨」が適用された65歳未満の人や6か月から11歳の子どもも健康であれば、9月の接種からはこうした規定の対象となりません。

こうした人たちは、接種の対象にはなるものの、これまでのように接種券やチラシを送るかなどは自治体ごとに判断されることになるのです。

これについて厚生労働省の専門家分科会では委員から次のような意見が聞かれました。

「接種勧奨を適用しない人たちに『接種しないほうがいいのだ』という誤ったニュアンスで伝わらないようにすべきだ」

「『接種勧奨』の対象でなくても希望者が接種の機会を確保できるように、自治体から住民に対して、ワクチン接種の情報提供を引き続き行うべきだ」

また小児科学会の関係者は、生後6か月から17歳まですべてのこどもに接種を推奨するとしたうえで、「ワクチン接種についてはかかりつけ医や近くの小児科医などとも相談し、納得した上で判断することが重要だ」と意見を述べていました。

今回この方針を決めた背景には、ことし3月にWHO=世界保健機関が次のように新たな指針を示したことがあります。

WHOが示した新たな指針
「高齢者などにはさらなる追加接種を推奨する一方、健康な乳幼児、子ども、大人に対するさらなる追加接種は定期的には推奨せず、健康な乳幼児、子どもについては、初回接種についても、疾病の負荷などを踏まえた上で各国で検討すべき」

その理由については以下をあげています。

▽多くの人がこれまでのワクチン接種や感染によって免疫を獲得したこと
▽現在流行しているオミクロン株は感染力が高い一方で重症度が低いこと
▽主に高齢者などの重症化リスクの高いグループで感染による死亡が生じていること

WHOはこの新たな指針を示した上で、今後のウイルスの変異やワクチンの効果などを考慮し、将来の政策を検討することを各国に推奨していました。

では、9月20日以降の接種についてどう考えればいいのでしょうか。
厚生労働省は次のようにコメントしています。

厚生労働省コメント
「重症化予防することを目的に『努力義務』などの適用範囲を変更するが、これまで重症化リスクが高くない人であっても重症となった人が一定程度は生じています。
接種の機会は生後6か月以上の全員に提供されるので、接種を悩まれる方は、これまでと同様に国のリーフレットなどを参考に個人の判断で検討してほしい」

Q.現在の流行の主流は?

A.現在、国内で流行の主流となっているのはXBB系統と呼ばれる変異ウイルスです。

XBB系統にはさらに枝分かれした複数の種類の変異ウイルスがあり、これらが同時に流行する状態となっています。

国立感染症研究所が民間の検査会社のデータをもとにまとめた資料によりますと、7月16日までの1週間に検出された変異ウイルスは、91.8%がXBB系統だったということです。

さらに、これらのデータをもとに、現時点の流行状況を推定した結果です。

▼XBB.1.9系統 37%
▼XBB.1.16系統 36%
▼XBB.2.3系統 15%

このXBB系統の変異ウイルスは海外でも流行しています。

国立感染症研究所によりますとことし2月以降、XBB.2.3系統が世界的に増加しているということです。

さらに、WHO=世界保健機関はXBB.1.9系統からさらに枝分かれしたEG.5という変異ウイルスが増加傾向にあるとして、7月、「VUM=監視下の変異ウイルス」に追加しました。

Q.来年度以降の接種はどうなる?

A.まん延を予防するために緊急の必要があるとして無料で受けることができる「特例臨時接種」は来年3月末が期限となっています。

厚生労働省は来年度以降について、これまでの「特例臨時接種」から、平時からまん延を予防する観点で、病気ごとに接種期間や対象を定めて行う「定期接種」に変更するかどうか、年内に結論を出す方針です。

「定期接種」には2つの類型があります。

・「A類」 集団の予防に重点
    「努力義務」と「接種勧奨」が適用
     はしかや結核、日本脳炎など感染力が強い病気

・「B類」個人の重症化の予防に重点
    「努力義務」と「接種勧奨」適用なし
     季節性インフルエンザなど

また、接種の費用については、国は地方交付税で費用の一部を支援していますが、自治体は住民からも費用を徴収することができます。

・「A類」 交付税が9割
     自治体が実質無料にするケースが多い

・「B類」 交付税が3割
     自治体が一部自己負担を求めるケースもある

このため、来年度から定期接種となった場合、現在は無料で受けられる新型コロナウイルスのワクチンが、一部接種費用の自己負担が必要になる可能性があります。

定期接種について、9日の厚生労働省の専門家分科会で委員からは次のような意見が。

「ワクチンの有効性だけではなく安全性も含め総合的に検討していくべきだ」
「新しい変異株が発生したときに大きく方針が変わりうることは念頭に置く必要がある」

厚生労働省は今後、新型コロナの流行状況や、ワクチンの効果が継続する期間などを見極めたうえで、来年度以降の対象者や費用負担のあり方、スケジュールなどについて議論を行う見通しです。