日大アメフト部の寮を捜索 大麻取締法違反容疑など 警視庁

日本大学アメリカンフットボール部の部員が大麻などの違法薬物を所持していた疑いがあるとして、警視庁は都内にある学生寮を捜索しました。

「アメフト部の部員が寮で大麻を使用している」と情報

捜索を受けたのは、東京・中野区にある日本大学アメリカンフットボール部の学生寮です。

捜査関係者などによりますと「アメフト部の部員が寮で大麻を使用している」という情報が寄せられ、大学側が調べたところ、先月、植物片と錠剤が見つかり、相談を受けた警視庁が鑑定を行っていました。

その結果、植物片は大麻と確認され、錠剤からは覚醒剤の成分が検出されたということで、警視庁は、3日午後、捜査員およそ20人態勢で大麻取締法違反と覚醒剤取締法違反の疑いで寮を捜索しました。

警視庁は押収した資料を分析するとともに関係者から話を聞くなどして、使用の実態や入手ルートの解明を進めることにしています。

日本大学のアメフト部は5年前に悪質なタックルをした重大な反則行為で公式戦への出場資格停止の処分を受けるなどしたあと、再出発していました。

学生「またか」

学生からは落胆の声が聞かれました。

スポーツ科学部の男子学生は「同じ大学の学生として就職先の企業に悪い印象を与えてしまう可能性もあるので悲しい。同じスポーツマンとして、長年練習してきてプロになれそうな人もいるのに残念です」と話していました。

危機管理学部の男子学生は「SNSで薬物を使用したという投稿は見かけるので若者の間で増えてるのかなと思う。アメフト部は悪質なタックルをした問題もあったので、不祥事が続いていて悲しい」と話していました。

また、別の男子学生は「またかと思いました。部活も活動停止になると思うしやめてほしい」と話していました。

日大広報部「警察の捜査に全面的に協力」

日本大学広報部はNHKの取材に対し「警察がアメリカンフットボール部の学生寮に来たことは事実です。寮内でのことについてはお答えすることはできません。警察の捜査については全面的に協力いたします」とコメントしています。

大学運動部で相次ぐ検挙

大学の運動部の部員が大麻を所持して検挙されたり、使用して処分されたりするケースは相次いでいます。

先月には東京農業大学のボクシング部に所属する19歳の男子部員2人が大麻を販売する目的で所持したとして逮捕されました。

2020年には日本大学のラグビー部の部員が大麻を所持していたとして逮捕・起訴され、ラグビー部は活動を一時的に停止していました。同じ年には、近畿大学のサッカー部や東海大学の硬式野球部の複数の部員がそれぞれ大麻を使用していたことが明らかになり、部は一時、無期限の活動停止処分を受けました。

大麻の所持・使用で検挙 全体の7割超が20代以下

警察庁によりますと、去年1年間に大麻の所持や栽培などで全国の警察に検挙されたのは5342人で、過去最多だったおととしの5482人に次いで過去2番目に多くなりました。

年代別にみると、▼10代が912人、▼20代が2853人と、20代以下の若年層が全体の70%余りを占めています。

警察庁の分析では、10代で初めて大麻を使用するケースが増加傾向にあり、使用した動機も「興味本位」や「その場の雰囲気」など安易に手を出している実態があるということです。SNSで入手先を知ったり、「友人・知人」から入手しているケースも目立つということです。

警察庁は、「乱用防止に向けてインターネット上の違法有害な情報の排除や広報啓発を進めていく」などとしています。

専門家「友人など身近な人から誘われるケース多い」

薬物の危険性や依存に詳しい、湘南医療大学薬学部の舩田正彦教授は、若い世代の人たちが大麻に手を出してしまうことについて「SNSなどを通じて、海外では合法化されているといった情報を得て、危険性を低く見積もっているのではないか。大麻は、覚醒剤のように合成するのではなく、栽培できることなどから流通量も増えていて、入手しやすいという背景から安易に手を出してしまうケースが多いと考えられる」と指摘しています。

また、大学の寮などで大麻が広がることについては、「友人など身近な人から使用を誘われるケースが多いが、関係性を壊したくないプレッシャーなどから断りにくい状況が生まれやすい。非常に近しい人が集まっている状況に薬物が入り込むことによって多くの人が薬物を使用してしまうことが十分に考えられる」と分析しています。

学習や記憶に悪影響 依存リスク十分認識を

そのうえで、舩田教授は「合法化されている国もあるが、年齢や使用場所、所持量は制限されている。大麻を使うと、学習や記憶に悪影響が生じたり幻覚や多幸感から依存に陥ったりするリスクがあることを十分認識してほしい」と訴えています。

そして、「夏休みになると行動範囲が広がり、薬物に誘われるケースも出てくると思う。誘われたら断る。場合によっては、その場から逃げることが必要だ。家族の中でも薬物問題について話し、手を出さないことを徹底してほしい」と話していました。