【詳しく】自転車の悪質な違反に“青切符”?反則金制度検討へ

「あ、危ない!」

携帯電話を操作しながらの自転車に、ヒヤッとしたことがある人も少なくないのではないでしょうか。自転車に関係する事故は2年連続で増加しています。

警察庁は自動車と同じように、いわゆる「青切符」による取締りを行う反則金制度の導入を検討することになりました。

どんな違反が対象に?実効性ある取り締まりにつながるの?詳しくまとめました。

自転車が関係する交通事故 2年連続で増加

今回、反則金制度の導入を検討する背景には、交通事故の件数が減少傾向にあるなかで、自転車の交通違反が事故につながるケースが相次いでいることがあります。

警察庁によりますと「自動車の関係する事故」は交通ルールの浸透や事故を回避する技術の進歩などに伴って、毎年、減少を続けています。

一方で、去年全国で発生した「自転車が関係する交通事故」は6万9985件と、2年連続で増加しました。

事故全体に占める割合も6年連続で上昇していて、去年は23.3%と同じ方法で統計を取り始めた2003年以降、最も高くなりました。

7割が自転車側の交通違反

さらに、去年全国で起きた自転車が関係する死亡・重傷事故7107件のうち、73.2%で「前方不注意」や「信号無視」「一時不停止」など、自転車側に交通違反が確認されたということです。

重大な事故につながる悪質な自転車の違反を減らすことが、喫緊の課題となっています。

警察庁 反則金制度の導入を検討へ

自転車の取締りは、刑事罰の対象となる交通切符、いわゆる「赤切符」を交付するなどして行われているものの、実際に罰則が適用されるケースは少ないのが実情です。専門家などからは「責任の追及が不十分だ」という指摘もありました。

こうした状況を受けて、警察庁は自動車やオートバイのようにいわゆる「青切符」による取締りを行う反則金制度の導入を検討することになりました。

実効性のある取締りにつなげるのが狙いで、月内にも有識者で作る検討会を設けて、取締りの対象とする違反の内容や年齢など具体的な議論を始めることにしています。

検討会では▼自転車の交通ルールをどのように周知するかや▼自転車が安全に走行できる道路環境などについても議論し、年内に提言を取りまとめる予定です。

警察庁は提言の内容を踏まえ、来年の通常国会での法改正を視野に準備を進めることにしていて、反則金制度が導入されれば身近な交通手段のあり方の大きな転換点となります。

「導入はいいこと」「違反の基準を定める必要」

一方、東京都内で取材すると、自転車に乗りながら携帯電話を操作したり、歩道の歩行者の間を縫うように速度を上げて走ったりするなど、交通違反にあたる自転車が複数見られました。

警察庁が反則金制度の導入の検討を始めることについて、70代の女性に話を聞くと。

(70代女性)
「スマートフォンを見ながら運転したり、急に止まったりする人がいて危ないのでどんどん取り締まってほしい。制度がないと改善されないと思うので、『青切符』の導入はいいことだと思う」

一方で、40代の男性は。

(40代男性)
「自転車による違反は比較的軽微な内容も含めてたくさんあると思うので、すべての違反を取り締まるのは無理があると思います。取り締まる違反の基準などをしっかりと定める必要があると思います」

専門家「注意喚起の有効な手段に」

自転車に関わる政策の調査・提言などをしているNPO法人「自転車活用推進研究会」の理事長で、警察庁の検討会で委員を務める小林成基さんは「現在は交通違反で取締りを受けてもほとんど罰則は適用されず、一部では自転車はルールを守らなくてもよいという風潮があると感じている。『青切符』の導入は、注意喚起の有効な手段になる」と述べました。

その上で「取締りにあたる警察官の数は限られているので軽微な違反と命に関わるような重大な違反をしっかりと区別し、重点的に取り締まる対象を絞り込む必要がある」と述べました。

一方で、自転車の交通ルールが複雑で実態にあっていない内容もあるとしたうえで「取締りの議論だけでなく、複雑すぎるルール自体を見直すことや、自転車がルールを守って快適に走れる道路環境を整備していくことも重要だ」と指摘しました。

谷国家公安委員長「良好な交通秩序を実現することが重要」

谷国家公安委員長は「交通事故の件数は減っているが、自転車と歩行者の事故はむしろ増えている。交通ルールを無視する自転車利用者に対して厳しい批判が寄せられていて、交通の安全を確保するためには良好な交通秩序を実現することが重要だ」と述べました。

その上で「交通安全教育や交通規制のあり方も含めて議論してもらう。幅広い立場からの意見を踏まえて検討を進め、よりよい方策が取りまとめられることを期待している」と話しました。

検討の背景など 社会部記者が解説

制度の導入を検討する背景など、社会部の周英煥記者にQ&Aで聞きます。

Q.自転車の交通違反の取締り 今はどのように行われている?

A.大きく分けて2つあります。

1つは、罰則を伴わない専用のカードを使った「警告」です。比較的軽微な違反に対して、警察官がカードを使って指導します。去年、指導を受けたのは全国でおよそ131万件でした。

もう1つが、交通切符、いわゆる「赤切符」による取締りです。信号無視や飲酒運転など特に悪質な違反が対象です。取締りを受けると刑事罰の対象として検察庁に送られます。

去年、「赤切符」などで検挙されたのは全国で2万4549件でした。ただ、ほとんどが不起訴となっていて、実際に罰則が適用されるケースは少ないということです。

Q.今回 導入が検討される反則金制度とは?

(左から警告カード・赤切符・青切符 いずれも見本)

A.反則切符、いわゆる「青切符」による取締りです。

いまも自動車などの交通違反に対して行われています。取締りを受けた違反者には「青切符」が交付され、期限内に反則金を納付することになります。納付しないと刑事罰の対象として扱われることになります。

自転車には運転免許がないため、ことし7月から新たな制度が始まった電動キックボードと同じように違反点数は設けられないものとみられます。

Q.なぜ導入しようとしている?

A.今回、反則金制度の導入を検討する背景には、交通事故全体の件数が減少傾向にあるなかで、自転車の交通違反が事故につながるケースが相次いでいることがあります。

去年、全国で起きた自転車が関係する死亡・重傷事故7107件のうち73.2%で前方不注意や信号無視、一時不停止など自転車側に交通違反が確認されたということです。

重大な事故につながる悪質な自転車の違反を減らすことが、喫緊の課題になるなか、専門家からは「自転車の違反に対する責任追及が著しく不十分な状況」として「違反金を課すなど違反を抑える実効性のある方法の検討が必要だ」などと指摘がありました。

そこで、現在の「警告」と「赤切符」に加えて、新たに反則金の制度を導入することで、実効性のある取締りにつなげる狙いです。

Q.導入されたら どのような違反が取締りの対象になる?

A.自転車の交通違反には、例えば次のようなものがあります。

▼信号無視
▼徐行せず歩道を通行
▼一時不停止
▼酒酔い運転
▼右側通行、などです。

これらの違反行為から今後、重点的に取締りにあたるものを検討していくことになります。

反則金制度の導入については専門家などの検討会が議論を始めることになっていますが、取締りだけでなく、自転車の交通ルールの周知のあり方や道路環境で改善できる点はないのかなどについてもあわせて議論が行われることになっています。