ビッグモーター店舗前の街路樹 各地で枯れる 除草剤成分検出も

中古車販売会社「ビッグモーター」の店舗前の街路樹や植え込みが枯れているのが各地で確認されていて、ビッグモーターは店との関わりがあるかどうか調べる考えを示しています。一方、国や各地の自治体も調査に乗り出しています。

保険金の不正請求の問題が発覚し、創業者の兼重宏行氏が社長を引責辞任した中古車販売会社の「ビッグモーター」。

全国各地の店舗のそばで街路樹や植え込みが枯れているのが各地で確認されていて、このうち群馬県太田市の店舗前では土木事務所の調査の結果、除草剤の成分が検出されて、警察が器物損壊の疑いで捜査しています。

会社側は、25日に開いた会見の中で当時、専務取締役の和泉伸二新社長が「店の出入り口や歩道の雑草やゴミなどがあれば毎朝、取り除いている。雑草に対して、本来は手で抜けばよいがちょっと甘い認識で除草剤をまいてしまって、影響を与えてしまったことはあると思う」などと述べて、店との関わりがあるかどうか、調査する考えを示しています。

一方、街路樹や植え込みを管理する国や自治体も相次いで調査に乗り出しています。

国土交通省が、国道沿いの店舗前の街路樹の状況などについて、確認を進めているほか、東京都や大阪府など、状況の確認などを行う方針を示しています。

店舗オープン前後「ストリートビュー」で比較すると

埼玉県所沢市のビッグモーターの店舗前の様子をグーグルマップの「ストリートビュー」を見ると、2017年2月時点では歩道脇に50センチほどの高さの植え込みの草木が茂っています。

しかし翌年の7月には、明らかに葉の量が少なくなっていて、去年11月には、植え込みが消えてしまったように見えます。

埼玉県八潮市の道路沿いの街路樹は、2019年7月、別の自動車販売の店舗があった時期は葉が青々と茂っていました。

しかし、ビッグモーターの店舗がオープンしたあとの2020年7月には、葉の量が少なくなっています。

おととし8月、近隣の住民から「街路樹が枯れている」という市民からの連絡があり、埼玉県が伐採を行いました。

伐採4か月前のおととし4月のストリートビューでは、新緑の季節にもかかわらず、葉がほとんどない状態の街路樹が立っているのが確認できます。

元社員「1センチの雑草もアウト」

関東地方の「ビッグモーター」の店舗に勤務していた元社員の男性は、社内で月に1度、会社幹部が店を訪れて実施していた「環境整備点検」と呼ばれる点検で、店の敷地や周辺の清掃も評価項目の1つになり、社員のプレッシャーになっていたと明かした上で「店や店舗前の歩道のアスファルトの隙間から1センチの雑草でもはえているのが見つかったらアウトです。点検の前は雑草を抜いたり、ごみを拾ったりしますが、本当にピリピリして、終わるまで戦々恐々としていました」と話しました。

自分自身は、店舗前で除草剤をまいたことなどはなかったとした上で、「毎月雑草抜くくらいなら、除草剤をまいてしまったほうが効率的だと感じる気持ちもわからなくはない」などと語りました。

経営計画書に「会社の周り10メートルは毎日清掃」

ビッグモーターの経営陣を含む会社幹部が店を直接訪れて行っているという「環境整備点検」の点検項目のリストには、「敷地回り、歩道はゴミや草、砂が無くお客様目線で整備できているか」などと書かれています。

また、会社がすべての社員に毎年配布していた「経営計画書」という冊子では職場の環境整備の方針が示され、「会社の周り10メートルは毎日清掃する」と書かれています。

国土交通省 国道で同様のケースないか調査

中古車販売会社、「ビッグモーター」の店舗前の街路樹が枯れたり伐採されたりしているという指摘を受け、国土交通省は国道で同様のケースがないか調査を始めています。

調査は、26日から全国の国道事務所を通じて国が管理する国道を対象に行っています。

この中では、▽国道に面する「ビッグモーター」の店舗がどの程度あるかや、▽店舗前の国道沿いの街路樹が枯れたり伐採されたりしたケースがあったかなどについて、確認を進めているということです。

国土交通省は、同様のケースが国道でも見つかった場合には、除草剤の成分が出るかどうか土壌調査を行うなど、因果関係を調べた上で対応を検討するとしています。

群馬 太田 街路樹17本枯れる 警察が器物損壊で調べ

群馬県太田市で去年、国道沿いの街路樹17本が枯れているのが見つかり、土から除草剤の成分が検出されたことから、警察が器物損壊の疑いで調べています。

街路樹があった場所の前には中古車販売会社の「ビッグモーター」の店舗があり、会社は店との関わりがあるか調査する考えを示しています。

群馬県太田土木事務所によりますと、去年8月、太田市の国道の歩道で街路樹が枯れていると近くの住民から連絡があり、土木事務所が確認したところ、数百メートルにわたって合わせて17本の木が枯れていました。

土木事務所が枯れた街路樹の根元近くにある土を調べたところ、除草剤の成分が検出されたことから、去年11月、警察に被害届を出したということです。

警察は被害届を受理し、器物損壊の疑いで調べています。

土木事務所では、倒木のおそれがあったため、ことし3月に枯れた街路樹を伐採し、今年度中にも新しい木を植え直すことにしています。

街路樹があった場所の前には中古車販売会社の「ビッグモーター」の店舗があり、会社は25日の会見で店との関わりがあるか調査する考えを示しています。

全国13道府県 22店舗の前で確認

「ビッグモーター」の店舗前の街路樹や植え込みが枯れているのが
各地で確認されている問題。
27日までに少なくとも全国13の道府県にある合わせて22の店舗の前で確認されています。

その内訳です。

▼北海道では札幌市清田区と厚別区の2つの店舗前の街路樹。
▼神奈川県では平塚市の店舗前の街路樹。
▼埼玉県ではさいたま市と本庄市、八潮市の3つの店舗前の街路樹。
▼群馬県では太田市の国道沿いの店舗前の街路樹。
▼長野県では松本市の国道沿いの店舗前の街路樹。
▼大阪府では大阪市東住吉区と城東区、貝塚市、大阪狭山市の4つの店舗前の街路樹。
▼兵庫県では神戸市北区の店舗前の街路樹。
▼滋賀県では草津市の店舗前の街路樹。
▼愛知県では名古屋市名東区や西尾市など4つの店舗前の街路樹。
▼福井県では越前市の店舗前の街路樹。
▼福岡県では春日市の店舗前の街路樹。
▼佐賀県では佐賀市の店舗前の街路樹。
▼長崎県では諫早市の店舗前の街路樹。
このほか
▼東京都の小池知事は都内の16の店舗前にある街路樹の状況を確認するよう担当部局に指示したほか、
▼兵庫県では神戸市以外にも尼崎市、伊丹市、加古川市、宝塚市にある4つの店舗前の街路樹が周辺と比べて少なく、枯れている可能性があるということです。

東京都知事「都内店舗前の街路樹の確認指示」

東京都の小池知事は、27日午後記者団に対し「もうすでに担当に指示しているが、どういう状況にあるのか、その調査を見ながら、土壌の調査までするかどうか決めていきたい」と述べ、都内の店舗前にある街路樹の状況を確認するよう担当部局に指示したことを明らかにしました。

都の建設局によりますと、「ビッグモーター」の店舗は都内に18あり、このうち16の店舗が都道に面していて、27日午前から職員が確認作業を進めたということです。都は28日にも街路樹を確認した結果について公表したいとしています。

大阪 横山市長「いつから枯れたのかなど調査」

大阪府と大阪市が確認したところ「ビッグモーター」の府内の一部の店舗の前でも街路樹が枯れていたことなどが分かり、府と市は今後、土壌調査を行って、原因などを調べることにしています。

大阪府が、管理している街路樹の状況を確認したところ「ビッグモーター」の府内の2つの店舗の前で、それぞれ、
▽街路樹が枯れて府が撤去していたことや、
▽街路樹がなくなっていたことが分かったということです。

このため府は今後、土壌調査を行って、街路樹が枯れた原因や詳しい経緯などを調べることにしています。

また、大阪市の調査でも、市内の2つの店舗の前で、街路樹が枯れていたことが分かりました。

このうち、大阪 東住吉区の店舗の前では、市の職員が平成30年の10月ごろに街路樹が枯れているのを見つけ、倒れるおそれがあったことなどから、その後撤去したということで、大阪市も今後、土壌調査を行うことにしています。

大阪市の横山市長は、27日記者団に対し「街路樹は、住民の憩いの空間のために税を投資してつくっている。いつから枯れていたのかや、どういう土壌になっているのかを調査した上で市として、被害があったのかどうかを確認していく」と述べました。

札幌 秋元市長「損害賠償などの対応も」

札幌市が市内にある「ビッグモーター」の4つの店舗の周辺の状況を調査した結果、27日までに2つの店舗で、店の前の街路樹、あわせて3本が枯れて、伐採されていたことがわかりました。

札幌市によりますと
▽清田区の店舗の前では15本あった街路樹のうち1本が枯れていたためことし春ごろに伐採し、
▽厚別区の店舗の前では4本あった街路樹のうち2本が枯れて、去年と3年前にそれぞれ伐採したということです。

また、伐採した街路樹の近くでは、枯れてはいないものの弱っている街路樹があわせて3本、確認されたということです。

市は警察に相談するとともに、土壌のサンプル調査を行い、除草剤などが含まれていないか調べることにしています。

これについて、秋元市長は、27日の記者会見で、「除草剤をまいたことが事実ならば器物損壊ということにもなる。調査を進め、因果関係があるということであれば、損害賠償などの対応をとっていかなければいけない」と述べました。