知床観光船事故「意見聴取会」 “事故は人災” 指摘相次ぐ

知床半島沖の観光船の沈没事故について、原因を調査している国の運輸安全委員会は、重大事故が起きた際に開催される「意見聴取会」を26日、船舶事故で初めて開きました。識者や被害者の家族からは「事故は人災だ」という指摘が相次ぎました。

知床半島沖で観光船が沈没し、20人が死亡、6人の行方がわからなくなっている事故について、国の運輸安全委員会は去年12月、留め具に不具合があったハッチから海水が流入したなどとする経過報告書を公表し、6月には事故の詳しい事実関係を示した報告書を公表しています。

26日は、事実関係の報告書の内容が適切かどうかや再発防止策について、「公述人」として選定された識者や被害者の家族5人から意見を聞く「意見聴取会」が開かれました。

意見聴取会は「日航ジャンボ機墜落事故」など重大な事故の際に開かれてきたもので、今回は2007年に「JR福知山線の脱線事故」の聴取会が開かれて以来、16年ぶりで船舶事故では初めてです。

聴取会では、失敗学が専門の東京大学大学院の中尾政之教授が「事故は人災に近い」と指摘したうえで、船の水密隔壁の不備など技術的な原因のほか、悪天候が予想される中で出航した点などを組織的原因としてあげました。

また非公開で行われた聴取では、被害者の家族が「人が止めることができた事故であり、人災である。このような会社は運航を許可されるべきではなかった」としたうえで、悪天候の中での出航判断について「なぜ船長は『やめます』と言えなかったのか。パワハラ的な環境でなかったか調査してほしい」と述べたということです。

運輸安全委員会は26日の意見を踏まえ、最終報告書をとりまとめることにしています。