2040年に建設・土木や介護など7職種で担い手不足の予測

いわゆる団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年に、建設・土木や介護など暮らしに欠かせない7つの職種の担い手が全国の21の道府県で30%以上不足するとした予測が明らかになりました。不足率が40%を超える府県も3つあり、担い手不足が地域社会に与える影響が浮き彫りになっています。

2040年の担い手不足の予測をめぐっては、情報サービス大手の研究機関「リクルートワークス研究所」がことし3月、全国であわせて1100万人余りに上るとした予測を公表しましたが、研究所は、地域社会への影響をより詳しく調べるため、暮らしに欠かせない7つの職種に絞った担い手の不足率の予測結果を新たにまとめました。

7職種は「輸送」「建設・土木」「生産」「販売」「介護」「接客・調理」「医療」でこれらの職種を合わせた将来の労働力の需要と供給を都道府県ごとにシミュレーションし、どれだけ不足するか予測しました。

各都道府県の不足率は

東京、神奈川、千葉、大阪の4つの都府県以外で軒並み不足するとしています。

不足率が最も高かったのは新潟で42%、次いで京都が41.4%、岩手が40.9%で3つの府県は、本来人手が100人必要なところ、40人足りないという深刻な担い手不足に陥る可能性があります。

また、長野が39.9%、兵庫と福島が37.1%、愛媛が36.4%、岐阜が35.9%、青森が35.3%、山形が34.9%、北海道と宮崎が34.7%、徳島が34.3%、栃木が32.4%、広島と鳥取が31%、茨城が30.9%、高知が30.8%、山口が30.6%、熊本が30.3%、群馬が30%となり、不足率が30%を超える地域は21の道府県に上り、不足している地域の半分近くを占めます。

このほか、岡山が29.8%、静岡が29.7%、愛知が29.6%、宮城が29.3%、鹿児島が28.9%、沖縄が28.2%、富山が26.9%、香川が26.4%、秋田が26.3%、長崎が26.2%、滋賀が23.3%、和歌山が22.7%、奈良が22.4%、石川が21%、山梨が20.8%、大分が20.7%、佐賀が19.8%、三重が18.4%、福井が18%、島根が10.9%、福岡が6.9%、埼玉は4.4%となっています。

都市部では不足率が低くなる傾向があるとしています。

専門家「生活維持困難に」

リクルートワークス研究所の古屋星斗主任研究員は、今回の予測結果を踏まえて、「これまでのような生活を維持するのは難しくなる」と指摘しています。

その上で古屋氏は、担い手不足が及ぼす地域社会への影響について「例えば、道路工事が滞り橋りょうやトンネルの崩落事故が多発し、それによって人々の移動にかかる時間が増えるかもしれない。こうした事態に陥った場合、生活の利便性が低下し、現役世代が仕事にかけられる時間がますます減っていく。そんな地域社会になってしまう恐れがある」と分析しています。

そして、古屋氏はこの影響を打開する方策として「都市から地方への移住や、産業間の労働力の移動だけでは解決は困難だ」と指摘した上で「女性やシニア、それに外国人の方々などに活躍してもらう必要がある。加えて、ロボットやAIなどの最先端の技術を使って機械の力を借りるのも重要だ。さらに、1人の人がさまざまなコミュニティーや会社で活躍できるような社会にしていくことが日本社会にとって必要だと考えている」と述べ、あらゆる手段を活用して担い手不足対策を進める必要性があると強調しました。

長野市 水道管のメンテナンスに最新技術

すでに担い手不足が深刻になっているのが、水道管のメンテナンスをする職員です。

7職種のうち「建設・土木」に含まれ、インフラの老朽化を加速しかねない事態となっています。

ことし5月、長野市松代町で地中の水道管が破裂しているのが見つかりました。

影響は、およそ1000世帯に上り給水車が出動する事態に陥りました。

長野市によりますと、破裂した水道管は今から56年前に設置され、老朽化していたということです。

法律で水道管の耐用年数は40年と決められていますが、それを超えていたのです。

厚生労働省によりますと、耐用年数を超えて使われている水道管は、全国で20%を超えています。

原因の1つが、水道管をメンテナンスする職員の不足です。

こうした職員は1980年のおよそ7万5000人をピークに今ではおよそ4万7000人まで減っています。

このため老朽化した水道管の交換や水漏れなどを確認する点検作業などが追いついていないのです。

こうした中、長野市では宇宙から地中にある水道管の漏水箇所を見つけ出す
イスラエルのIT企業が提供している最新技術の活用を始めました。
この技術は人工衛星から地面に向けてレーダーを放射します。
地面に向けて放射されたレーダーが水に当たった際の動きを感知し、解析すると半径100メートルの範囲で漏水箇所を察知できます。

1分あたりわずか0.1リットル程度のポタポタと漏れる小さな漏水箇所でも見つけられるということです。

この技術の活用で、これまで10年かかっていたおよそ2400キロの水道管の点検が
2年に短縮、点検作業にあたっていた人材を壊れた水道管の修理にあてることが
できていると言います。

長野市上下水道局水道維持課の和田芳雄課長補佐は「最新技術を活用することで少ない労力で被害が少ないうちに、水道管の修繕ができるようになった。今後、ほかの最新技術も取り入れられないか情報収集して漏水防止に努めていきたい」と話しています。

徳島 タクシーの担い手不足の対策に

2040年に、生活に身近な職種の担い手が、34%あまり不足すると予測された徳島県では、すでに担い手不足が表面化し始めています。

担い手不足が深刻な7職種のうち「輸送」の分野に含まれるのがタクシー運転手です。

徳島市のタクシー会社では、運転手の不足に直面しています。

会社では、4年前120人近くいた運転手がおよそ40人減少。

高齢化で運転手が減少していたのに加え、新型コロナの感染拡大で利用が落ち込んだことで、退職が相次ぎました。

会社には、稼働せず「休車」扱いとなっている車が、およそ40台留め置かれていて、配車の依頼があっても、断わらざるを得ないケースも増えているといいます。

一方、同じ徳島県の小松島市は、タクシー不足の対策に乗り出しました。

タクシーは過度な競争などを防ぐため、営業できる区域が国によって決められています。

市などでつくる協議会は、国に要請し、隣の徳島市などの区域の3社も営業が認められました。

協議会は、利用状況を検証し、来年4月以降も継続するか、検討することにしています。

小松島市・市民環境課の岡崎万寿美課長補佐は「1年間、問題がなければ、次の年も継続して試験運行をしていく予定だ。市民サービスが低下しないような取り組みを行っていく」と話しています。