北朝鮮 弾道ミサイル2発発射 いずれも日本のEEZ外に落下と推定

防衛省は、24日夜遅く北朝鮮が2発の弾道ミサイルを発射し、いずれも日本のEEZ=排他的経済水域の外側に落下したと推定されると発表しました。
政府は北朝鮮に厳重に抗議するとともに、引き続き警戒監視に全力をあげるとしています。

防衛省によりますと、北朝鮮の内陸部から2発の弾道ミサイルが東方向に向けて発射されました。

▽1発目は24日午後11時54分ごろに発射され、最高高度およそ100キロで、飛しょう距離は350キロ程度、
▽2発目は24日午後11時59分ごろに発射され、最高高度およそ100キロで、飛しょう距離は400キロ程度ということです。

いずれも日本のEEZ=排他的経済水域の外側の日本海に落下したと推定され、被害の情報は入っていないということです。

政府は「北朝鮮の行動は、わが国、地域および国際社会の平和と安全を脅かすもので、安保理決議に違反し、国民の安全に関わる重大な問題だ」として北朝鮮に対して厳重に抗議し強く非難したとしています。

そのうえで「国民の生命・財産を守り抜くため、引き続きアメリカや韓国などと緊密に連携し、情報の収集・分析および警戒監視に全力をあげる」としています。

北朝鮮 “弾道ミサイル”発射 ことし14回目 7月19日以来

北朝鮮が弾道ミサイルの可能性があるものや、弾道ミサイル技術を用いたものを発射したのは7月19日以来で、ことし14回目となります。

海上保安庁 “弾道ミサイルの可能性あるものすでに落下”

海上保安庁は防衛省からの情報として、「弾道ミサイルの可能性があるものは、すでに落下したとみられる」と午前0時11分に発表しました。

航行中の船舶に対し、今後の情報に注意するよう呼びかけています。

海上保安庁が日本周辺の海域で被害などの確認を進めていますが、これまでのところ日本に関係する船舶への被害の情報は入っていないということです。

韓国軍「北朝鮮 短距離弾道ミサイル2発発射」

韓国軍は、北朝鮮が24日夜遅く、日本海に向けて短距離弾道ミサイル2発を発射したと発表しました。北朝鮮は朝鮮戦争の休戦から70年の節目を27日に控えていて米韓両国がさらなる発射などへの警戒を強めています。

韓国軍の合同参謀本部は、北朝鮮が24日午後11時55分ごろから25日午前0時ごろにかけて、ピョンヤン付近から日本海に向け短距離弾道ミサイル2発を発射したと発表しました。

飛行距離はいずれも400キロ余りとしています。

韓国では7月18日から21日まで、核兵器を搭載できるアメリカの戦略原子力潜水艦が南東部のプサン(釜山)に寄港していました。

また、24日も別の原子力潜水艦が南部のチェジュ(済州)島に入港しています。

韓国の通信社、連合ニュースは今回のミサイル発射についてアメリカの原子力潜水艦への反発ではないかとの見方を伝えています。

北朝鮮は「戦勝記念日」と位置づける、朝鮮戦争の休戦から70年の節目を27日に控えていて、米韓両国がさらなる発射などへの警戒を強めています。

政府 緊急参集チームを招集

政府は、総理大臣官邸の危機管理センターに設置している官邸対策室に関係省庁の担当者をメンバーとする緊急参集チームを招集し、情報の収集と被害の確認などにあたっています。

岸田首相 情報収集や国民への迅速な情報提供など指示

北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたことを受けて、岸田総理大臣は、情報の収集と分析に全力を挙げ、国民に対し、迅速・的確な情報提供を行うこと、航空機や船舶などの安全確認を徹底すること、それに不測の事態に備え、万全の態勢をとることを指示しました。

アメリカ国務省「国連安保理の決議違反 やめるよう求める」

アメリカ国務省のミラー報道官は24日、記者会見で「今回の発射は、国連安保理の複数の決議に違反しており、非難する。北朝鮮に対しこうした緊張を高める行為をやめるよう求める」と述べました。

また、アメリカのインド太平洋軍は24日、声明を発表し「アメリカの国民や領土、それに同盟国に差し迫った脅威を与えるものではないと判断しているが、北朝鮮による違法な兵器開発が地域の不安定化をもたらすことを示すものだ」と非難しました。

そのうえで「アメリカによる日本や韓国の防衛への関与は揺るぎない」と強調しています。

北朝鮮 ミサイル発射繰り返す

北朝鮮は、1月から3月にかけていずれもICBM=大陸間弾道ミサイル級の「火星15型」や「火星17型」、それに短距離弾道ミサイルを繰り返し発射しました。

4月は、従来の液体燃料式よりも迅速に発射できる固体燃料式の新型ICBM「火星18型」の初めての発射実験を行ったと発表しました。

5月には初めての軍事偵察衛星を打ち上げ、失敗したと発表し、6月は短距離弾道ミサイル2発を発射していました。

そして7月は、12日にICBM級の「火星18型」を発射したのに続き、19日も短距離弾道ミサイル2発を発射していました。

北朝鮮が弾道ミサイルの可能性があるものや、弾道ミサイル技術を用いたものを発射したのは、ことし14回目です。

また、弾道ミサイルのほかにも7月22日には巡航ミサイル数発を発射していて、核弾頭が搭載可能な多様なミサイルの開発を進める姿勢です。

北朝鮮 抑止力強化を図る米韓両国に対抗姿勢示す

北朝鮮への抑止力強化を図る米韓両国に対して、北朝鮮は核・ミサイル開発に拍車をかけて対抗姿勢を示してきました。

米韓両国は7月18日、アメリカの核戦力を含む抑止力で同盟国を守る「拡大抑止」の強化に向けて話し合う、「核協議グループ」の初会合をソウルで開きました。

さらに、同じ18日にアメリカの戦略原子力潜水艦が42年ぶりに韓国に入港したのに続き、24日も別の原子力潜水艦が入港していました。

一方、北朝鮮は7月12日のICBM=大陸間弾道ミサイル級のミサイル発射に関連して、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の妹、キム・ヨジョン(金与正)氏が談話を発表しました。

このなかで「先日、アメリカが懸念をもって目撃したことは、すでに開始された軍事的攻勢の始まりにすぎない」として、さらなる軍事的な挑発を示唆していました。

また、アメリカの戦略原子力潜水艦が韓国に入港したことに対して、カン・スンナム国防相が7月20日に談話を発表しました。

談話では、北朝鮮が核兵器の使用条件などを定めた法令に言及し、戦略原子力潜水艦の入港について「核兵器の使用条件に該当しうる」と主張して、アメリカを威嚇していました。

松野官房長官 「厳重に抗議し強く非難」

松野官房長官は午前の記者会見で「きのう発射された2発は分析を進めた結果、短距離弾道ミサイルだったと推定している。衛星の打ち上げを目的としたものではなかったと考えられるが、詳細は現在、防衛省で分析中だ」と述べました。

そして「国民の安全に関わる重大な問題であり、北京の大使館ルートを通じて厳重に抗議し強く非難した。北朝鮮が今後、各種ミサイルの発射や核実験などさらなる挑発行為に出る可能性はあると考えており、引き続きアメリカや韓国などとも緊密に連携しながらわが国の平和と安全に万全を期していく」と述べました。

林外相「日米韓による緊密な連携を確認」

北朝鮮による弾道ミサイルの発射を受け、外務省の船越アジア大洋州局長とアメリカ国務省のソン・キム北朝鮮担当特別代表、韓国外務省のキム・ゴン(金健)朝鮮半島平和交渉本部長は25日、電話で対応を協議しました。

これについて、林外務大臣は記者会見で「協議では弾道ミサイル発射を強く非難した上で、日米韓による緊密な連携を確認した。G7議長国として国際社会と協力しながら、地域の抑止力強化や、関連する国連安保理決議の完全な履行を進め、北朝鮮の非核化を目指していく」と述べました。