九州北部の記録的大雨から1週間 早期の生活再建へ復旧作業進む

福岡、佐賀、大分の3県で合わせて9人が死亡するなど、大きな被害が出た記録的な大雨から17日で1週間です。被災地では厳しい暑さの中、住民やボランティアが住宅に流れ込んだ土砂を撤去するなど、早期の生活再建に向けて復旧作業が進められています。

九州北部では今月10日、線状降水帯が相次いで発生して福岡県と大分県の一部に大雨の特別警報が発表され、福岡県久留米市の耳納山では、24時間の雨量が気象庁が統計を取り始めてから最も多くなるなど、各地で記録的な大雨となりました。

福岡、佐賀、大分の3県では土砂災害や川の氾濫、低い土地の浸水が相次ぎ、これまでに福岡県で5人、佐賀県で3人、大分県で1人の合わせて9人の死亡が確認されました。

このうち、佐賀県唐津市浜玉町では、土石流が発生して住宅2棟が押しつぶされるなどして、50代から70代の男女、合わせて3人の死亡が確認されました。

また、各県の最新のまとめによりますと、床上浸水など住宅の被害は、福岡で546件、佐賀で125件、大分で132件、確認されています。

被災地では、この3連休の期間中も厳しい暑さの中、住民や各地から駆けつけたボランティアが住宅に流れ込んだ土砂や使えなくなった家具を撤去するなど、早期の生活再建に向けて復旧作業が進められています。

一方、福岡県久留米市では、被害が広範囲に及び全容が分かっていないほか、福岡、佐賀、大分の3県では17日も避難指示が出ている地域があり、避難生活を続けている住民もいます。

関係する自治体は被害の確認を急ぐとともに避難している住民の支援などに取り組んでいます。

避難生活を続ける住民は

福岡県久留米市田主丸町竹野では、今月10日、複数の住宅が土石流に巻き込まれ、70代の北川良俊さんが亡くなりました。地区の避難所になっている竹野小学校の体育館では、土石流の発生から1週間となる17日も、20人余りの住民が避難生活を続けています。

このうち、中野峰子さん(69)は自宅に大量の土砂が流れ込んだことなどから今月10日から避難生活を余儀なくされています。避難生活が長引くなか、曜日の感覚が薄れていると言い、毎日届く新聞をカレンダー代わりにしています。

中野さんによりますと、自宅の敷地内を埋め尽くした大量の土砂はこの1週間で徐々に撤去され、自宅の中に入れるようになりましたが、床下には大量の泥が撤去されずに残ったままで、停電も続いていることから自宅での生活を再開できないということです。

17日は、家族と親族あわせて4人が道具を使って泥をかき出す作業に追われていました。中野さんが住む地区では土石流による住宅の被害が相次いでいて、早期の生活再建に向けて業者の手を借りようにも、すぐには対応してもらえない状況だということです。

中野さんは「電気や水道が復旧して普通の生活に戻れたという近所の人もいますが、私の場合、自宅に戻るまで何か月かかるのだろうと不安になります。自宅で家族と一緒に好きな物を食べたり、好きなテレビ番組を見たりできる普通の生活を送りたい」と話していました。

住宅が全壊した男性「必死に外に逃げ出した」

1週間前の記録的な大雨で土砂崩れが発生し、佐賀市の住宅が全壊する被害を受けた60代の男性が取材に応じ、「携帯電話だけを持って必死に外に逃げ出した」と当時を振り返りました。

今月10日の早朝、大雨となった佐賀市富士町では土砂崩れが発生し、田代恒哉さん(68)の住宅は崩れた裏山の土砂で全壊しました。田代さんは92歳の母親と2人暮らしで自力で逃げ出しましたが、母親は土砂に巻き込まれ、その後救助されました。

大雨から1週間となった17日、田代さんは被災した自宅の後片づけをしながら当時の状況を振り返りました。

田代さんは「携帯電話だけを持って必死に外に逃げ出しました。トイレに閉じ込められた母親に声をかけると、『大丈夫』とすぐに返事がかえってきて安心したのを覚えています。助かって本当によかった」と話しました。

その上で、「もう1回同じような土砂災害が起きたら死ぬと思いました。毎日くたくたで、今後どうするか思いを巡らせる余裕はまだないので、ゆっくり考えていきます」と話していました。

佐賀 唐津の土石流現場近くでは

佐賀県唐津市で3人が死亡した土石流から17日で1週間です。現場近くの住宅ではボランティアが支援に入って後片づけなどが本格化しています。

市内では少なくとも10か所以上で土砂崩れが起きたため復旧作業が進まない住宅もあり、市は住まいの支援について検討を進めています。

今月10日の早朝、唐津市浜玉町では記録的な大雨となり、土石流が発生して男女3人が亡くなるなど大きな被害が出ました。土石流の現場近くに住む脇山美惠子さんの住宅では17日午前10時ごろから、10人ほどのボランティアが、車庫にたまった泥や流木をかき出していました。

17日、唐津市は日中の最高気温が35.3度と猛暑日となり、日ざしが照りつける中での作業となりました。ボランティアで福岡県糸島市から参加した上野和芳さんは「出身が浜玉町なので何か恩返しがしたいと参加しました。木くずなども混ざっていて、ただ土砂をかき出すだけでないのが大変です」と話していました。

また、美惠子さんの弟の大田敏一さんは「家族だけでやっていたら何日かかるか分かりません。とにかく人手がいるので助かります」と話していました。

一方、土石流が起きた場所からおよそ3キロ離れた土砂崩れの現場では、田中耕一さん(71)の住宅が1週間たった今も倒壊したままになっています。

田中さんは「とても自分たちだけで片づけられず、ボランティアに手伝ってもらおうにもいつ崩れてくるかも分からず、危なくて手がつけられません。いつまで避難生活が続くのか不安です」と話していました。

唐津市内では土砂崩れが少なくとも10か所以上で起きていて、市は、住宅が被災した人に一時的な生活の拠点として市の施設などを貸し出せるよう検討を進めています。