大雨被害 土砂崩れや土石流があった各地の11日の動きは

10日、福岡県と大分県で大雨の特別警報が発表されたほか、九州では各地で記録的な大雨となり、川の氾濫や土石流などの土砂災害が相次ぎました。

各地の被害の状況や行方不明者の捜索など、11日の動きをお伝えします。

“命あってよかった” “残念 さみしい”

土石流が発生した福岡県久留米市の田主丸町竹野に住む塚本惠子さん(73)の一家は、自宅に流れ込んだ土砂やがれきの撤去作業に追われていました。

塚本さんは「『ドーン』『ガシャーン』という音が聞こえて和室を見ると、土砂が流れ込んでガラスが割れ、大木が突き刺さっていました。土石流が目の前を流れていて、怖かったというよりもあっけに取られました」と振り返っていました。

目の前の道路では近所の男性が土砂に巻き込まれたということで、「救助された男性が担架で運ばれているのが見え、『助かってよかったね』という声も聞こえました。家族6人の命があってよかったです」と話していました。

また、塚本さんは、土石流に巻き込まれて亡くなった男性と幼いころからの知り合いだったということです。

男性について「保育園、小学校、中学校が一緒で、同窓会で集まったときに『元気にしてる?』などと話していました。最近は会うことがなく、先日も別の同級生と同窓会をしようと話していましたので、残念でさみしいです」としのんでいました。

九州で7人死亡(11日 午後8時時点)

記録的な大雨の影響で、九州各地で被害が相次ぎ、11日午後8時の時点で、
▽福岡県で5人
▽佐賀県で2人の死亡が確認されました。

福岡 久留米 土石流で複数の住宅巻き込まれる

このうち福岡県久留米市では、10日午前、市内の田主丸町竹野の三明寺地区で土石流が発生して、複数の住宅が巻き込まれました。

市によりますと、現場から10人が救助され、このうち70代の男性1人の死亡が確認されました。

添田町庄では、10日明け方、住宅に土砂が流れ込んで、70代の夫婦が閉じ込められ、このうち77歳の妻が死亡しました。

広川町広川では、10日午後、用水路に落ちて、水につかった軽トラックから70代の男性1人が救助されましたが、病院で死亡が確認されました。

久留米市荒木町荒木では、10日午後、田んぼのあぜ道で、50代の男性1人が倒れているのが見つかり、死亡が確認されました。

現場から直線距離でおよそ3キロ離れた久留米市藤山町では、10日午前、この男性名義の車が水につかり、車内から脱出しようとした人が流されたという通報があったため、警察は、流されたのは、この男性とみて確認を進めています。

太宰府市国分では、10日夜、冠水したアンダーパスで50代の男性1人が見つかり、その場で死亡が確認されました。
このアンダーパスは、大雨の影響で一時、3.6メートルほど冠水していたということで、警察は、男性が歩いて通り抜けようとして溺れた可能性があるとみて、詳しい状況を調べています。

佐賀 唐津 土砂崩れで2人死亡 1人不明

佐賀県唐津市浜玉町では、10日朝、住宅2棟に土砂が流れ込んで、男女3人と連絡がとれなくなり、このうち70代の女性1人は、10日午後、現場で救助されましたが、死亡が確認されました。

また、11日午前11時ごろ、現場の下流側にあたる川の河口付近で見つかった男性1人の死亡が確認され、行方がわからなくなっている男性2人のうち、79歳の男性と確認されたということです。

警察や消防、それに自衛隊が12日も、残る男性1人の捜索を続けることにしています。

大分 中津 行方不明の女性 なお捜索続く

大分県では、10日午前7時すぎ、中津市耶馬溪町の山国川沿いを走る道路で、車に乗った50代の女性の行方がわからなくなり、警察や消防による捜索が続けられています。

福岡 久留米 浸水で休校の小学校では

久留米市では校舎が浸水する被害があり、臨時休校が続いている小学校もあり、11日は再開に向け、教員や児童などが泥水などを取り除く作業に追われていました。

久留米市では今回の大雨の影響で、市内の小中学校など、あわせて19校が臨時休校し、田主丸小学校と大橋小学校では床上まで浸水する被害がありました。

このうち田主丸小学校では、近くを流れる川があふれて校舎の1階や体育館が5センチほど浸水したといい、11日も臨時休校を続けたうえで教職員や保護者、児童などが集まって、泥水をかき出したり、廊下をぞうきんで磨いたりしていました。

小学校では、校舎や体育館の泥水を取り除いたあと消毒も行い、早ければ14日に学校を再開させる予定です。

田主丸小学校蒲生好子校長は「自宅が被害を受けた児童もいます。1日でも早く授業が再開できるよう皆で協力して準備を進めていきたい」と話していました。

大分 中津 国の重要文化財の橋の欄干 半分近く流失

大分県中津市の山国川にかかる国の重要文化財「耶馬渓橋」の石造りの欄干が半分近く壊れて流失したことが分かりました。

「耶馬渓橋」は大正12年にかけられた石造りの橋で、2022年に国の重要文化財に指定されました。

9日からの大雨で川が増水し、橋の欄干が一時水につかった状態になっていたため、11日、市の担当者が現場を訪れて被害の状況を確認しました。

その結果、橋の上にあった石でできた欄干の半分近くが壊れて流失し、欄干の部品の一部が道路に散乱していたことや、上流から流れてきた木の幹が橋の上にひっかかったままになっている状況などが分かったということです。

現場で確認にあたった中津市教育委員会社会教育課の浦井直幸さんは、「想像以上に欄干が流されてしまっていて大変残念です。また元の形に戻せるよう国や県と相談しながら考えていきたいです」と話していました。

中津市によりますと、耶馬渓橋は当面の間、通行止めにするということです。

佐賀 唐津 土砂崩れで死亡の女性宅 出荷準備のトマトが…

佐賀県唐津市浜玉町で土砂崩れに巻き込まれて亡くなった70代の女性について、女性の自宅がある今坂地区の区長を務める筒井高宏さん(66)は、「女性の自宅からは包装されたトマトが見つかりました。女性は農業をしていて毎日のように収穫したトマトを市場やスーパーマーケットに卸していました。被害にあう前日もその準備をしていたんだと思います。近所づきあいでトマトをくれたりもしましたがとても活発で明るい人でした。思い出すと涙が出ます」と目頭を押さえていました。

また、当時の被害の状況については、「9日の夜からすごい雨で、10日の朝は道路に濁流が流れ大きな石なども転がっていました。過去の大雨では区内の住民に避難を呼びかけたりもしましたが、空振りに終わることも多く、私も今回、大きな被害は出ないのではないかという気持ちがあったかもしれません」と振り返っていました。

佐賀 唐津 玉島川の河口付近で男性1人発見

佐賀県によりますと、10日まで大雨が降り続いていた佐賀県の唐津市を流れる玉島川の河口付近で、11日午前11時前、男性1人が見つかったということです。

男性は現場で死亡が確認されたということで、県などは身元や詳しい状況を調べています。

大分 中津 行方不明の50代女性の捜索続く

10日、大分県中津市の増水した山国川沿いの道路で、車に乗っていた50代の女性の行方がわからなくなっていて、これまでの捜索でスマートフォンが発見されたということです。

警察や消防は、女性のものか確認を進めるとともに見つかった付近で重点的に捜索を進めています。

10日、中津市耶馬溪町の大雨で増水していた山国川沿いを走る国道で、車に乗っていた50代の女性の行方がわからなくなり、警察や消防は女性が川に流されたとみて、およそ100人の態勢で11日も捜索を続けています。

女性は、10日午前8時すぎに親族と電話で話したのを最後に連絡が取れなくなり、その3時間ほどあとには女性のものとみられる白い車が発見されましたが姿はありませんでした。

11日の捜索では、警察の機動隊員や消防隊員らは川岸まで下りたり水路に入ったりして手がかりがないか確認を進めています。

大分県によりますと、これまでの捜索でスマートフォンが発見されたということで、女性のものかどうか確認を進めるとともに、スマートフォンが見つかった付近を重点的に捜索することにしています。中津市は「一刻も早い発見に全力を尽くしたい」としています。

佐賀 唐津の土砂崩れ 2人の捜索を再開

佐賀県唐津市浜玉町では、10日の早朝、大雨の影響で土砂崩れが起きて住宅2棟が押しつぶされ、70代の女性が死亡し、70代と50代の男性の合わせて2人と連絡が取れなくなっています。

現場では11日午前7時すぎから捜索が再開され、警察や消防、それに災害派遣要請を受けて駆けつけた自衛隊、合わせておよそ200人が、住宅の位置関係や土砂を撤去する手順などを確認したあと、スコップやバケツを持って捜索に向かいました。

消防などによりますと、住宅近くの地盤が大雨の影響で緩んでいることや道幅が狭いことから、土砂の撤去に重機を使うことができず、ほぼすべてを手作業で行っているということです。

また、連絡が取れなくなっている男性2人が現場の近くの川に流された可能性もあるとして、河川敷での捜索も行われています。

佐賀県によりますと、午前11時現在、発見につながる情報は入っていないということです。

福岡 久留米 住宅や道路にたまった土砂の撤去作業

土石流が発生して、複数の住宅が巻き込まれた福岡県久留米市の現場では、午前中から道路にたまった土砂の撤去作業が進められています。

久留米市田主丸町竹野の三明寺地区では、10日午前9時半ごろ、土石流が発生して複数の住宅が巻き込まれました。

現場では、午前中から、工事会社の作業員が道路にたまった土砂などを重機を使って撤去する作業を進めていました。

また、被災した自宅の片づけに訪れる住民の姿も見られました。

今後、現場近くの公民館が、住宅内にたまった土砂の撤去作業を行う住民の拠点になるということです。

公民館を管理する三明寺区の小屋松正好区長は「大きな材木や石が散乱しているので行政には早急に生活道路の復旧作業を進めてほしいです」と話していました。

住宅に土砂が流れ込んだという70代の男性は「高齢者が多い地域で個人で住宅の土砂などを撤去するのは難しいので、行政に対応をお願いできればと思います」と話していました。

病院と高齢者施設の被害状況(11日午前8時)

【病院】
厚生労働省の11日午前8時現在のまとめによりますと、福岡県の6か所の病院で浸水の被害が確認されています。
被害があった病院は、
▽久留米市で3か所、
▽福岡市で1か所、
▽うきは市で1か所、
▽広川町で1か所となっていて、いずれも人的な被害は現時点で確認されていないということです。

【高齢者施設】
また、高齢者施設でも浸水の被害が出ていて、福岡県の久留米市で3か所、福岡市で1か所、それぞれ被害が確認されています。

また、広川町では断水の被害が確認されているほか、岡垣町では土砂災害による被害が確認されているということです。

高齢者施設でも現時点で人的な被害は確認されていないということです。

これまでに土砂災害13件 18河川で氾濫発生 国交省

今月9日からの九州地方を中心とした記録的な大雨で、国土交通省のまとめによりますと、住宅に土砂が流れ込むなど、これまでに全国で13件の土砂災害が発生し、福岡県や佐賀県、それに大分県などの18の河川で氾濫が発生したということです。

福岡 久留米 5つの建物流出「土砂災害特別警戒区域」に

記録的な大雨による土石流で1人が亡くなった福岡県久留米市では、5つの建物が流出し、いずれも土砂災害の危険性が特に高いとされる「土砂災害特別警戒区域」にあったことが専門家による分析で分かりました。

大雨の被害に詳しい静岡大学の牛山素行教授は、NHKのヘリ映像や災害発生前の地図データなどから、久留米市の田主丸町竹野で起きた土石流の被害の状況を詳しく分析しました。

その結果、
少なくとも5か所で建物が流出し、いずれも土砂災害の危険性が特に高いとされる県の「土砂災害特別警戒区域」の中にあったほか、建物の一部が大きく倒壊するなどした少なくとも2か所は「土砂災害警戒区域」にありました。

一方、1か所は警戒区域の外にあったものの、すぐ近くに位置していて、牛山教授は「過去にも警戒区域の外で被害が出たケースが起きていて、区域の近くに住んでいる場合には、注意しておく必要がある」としています。

唐津の土砂災害なども警戒区域で発生

九州では、久留米市以外でも土砂災害が相次ぎ、牛山教授などによりますと、
佐賀県唐津市や福岡県添田町の現場や、その周辺も土砂災害警戒区域内だったということです。

牛山教授は「今回の土砂災害は、リスクが指摘されていた場所で起きたと言え、事前に把握しておく重要性が改めて浮き彫りになった。自治体のハザードマップで、住んでいる場所の危険性を確認し、いざという時の対応を考えておいてほしい」と話しています。