“トランスジェンダー職員の女性トイレ利用制限”最高裁判決へ

経済産業省に勤めるトランスジェンダーの職員が、職場の女性用トイレの使用が制限されているのは不当だとして国を訴えた裁判で、最高裁判所が11日に判決を言い渡します。性的マイノリティーの人たちの職場環境に関する訴訟で最高裁が判断を示すのは初めてで、判決はほかの公的機関や企業の対応などにも影響を与えるとみられます。

性同一性障害と診断され、女性として社会生活を送っている経済産業省の50代の職員は、執務室があるフロアから2階以上離れた女性用トイレしか使用が認められず、制限を撤廃してほしいと国に対する訴えを起こしました。

1審は、トイレの使用制限は違法だと判断しましたが、2審は逆に違法ではないとしたため職員側が上告していました。

6月、最高裁で開かれた弁論で職員側は「女性として社会生活を送る原告の尊厳を深く傷つけた」として、国の対応は違法だと主張した一方、国側は「当時、トランスジェンダーの性自認に従ったトイレの自由な使用を認めるべきという社会的な理解は存在していなかった」と反論しました。

判決は、11日午後3時に言い渡される予定で、トイレの使用制限を認めた2審判決が見直される可能性があります。

最高裁が性的マイノリティーの人たちの職場環境に関する訴訟で判断を示すのは初めてで、判決は、ほかの公的機関や企業の対応などにも影響を与えるとみられます。

訴訟の経緯と争点

裁判では、職場でのトイレの使用を制限した国の対応が問われました。

訴えを起こした経済産業省の50代の職員は、戸籍上は男性ですが、性同一性障害と診断されていることを2009年に上司に打ち明け、女性として働きたいと要望しました。

経済産業省は、ほかの職員にも説明したうえで、女性用の休憩室や更衣室の使用は認めましたが、女性用トイレに関しては、トラブルを避けるためとして執務室があるフロアから2階以上離れたところしか認めませんでした。

この対応を不服として、職員は処遇の改善を勧告するよう人事院に求めましたが、2015年、「要求を認めない」と判定されました。

裁判では、トイレの使用を制限した経済産業省の対応に問題はないとした人事院の判断が、不当かどうかが争われています。

1審は、「自認する性別に即した社会生活を送ることは重要な法的な利益だ」と指摘したうえで、国の対応は違法だと判断し、人事院の判定を取り消しました。

一方、2審は、「経済産業省は、ほかの職員が持つ不安などもあわせて考慮し、適切な職場環境を構築する責任がある」と指摘して、職員側の主張を退けました。

最高裁の判決は、性的マイノリティーの人たちの職場環境に大きな影響を及ぼす可能性があります。

原告の職員は「当時の経済産業省の対応や、人事院の判定のいいかげんさを最高裁がしっかりと指摘してくれることを願っています」と話しています。