今年度の最低賃金 厚労省の審議会で議論始まる 引き上げ幅焦点

今年度の最低賃金の引き上げについて議論する厚生労働省の審議会が30日から始まりました。春闘を通じて賃上げの動きが広がっていますが最低賃金も大幅な引き上げとなるのかが焦点です。

最低賃金は企業が労働者に最低限、支払わなければならない賃金で、都道府県ごとに金額が決められ現在、全国平均は時給961円です。

毎年、労使の代表などで作る厚生労働省の審議会で引き上げの目安を決めていて、今年度の議論が30日から始まりました。

出席した加藤厚生労働大臣は「骨太の方針では『ことしは全国平均で時給1000円を達成することを含め、審議会でしっかりと議論を行うこと』とされている。賃上げの状況や物価の動向、企業の業況などを考慮いただき議論してほしい」と述べました。

そして、厚生労働省の担当者から物価や賃上げの動向について説明が行われ、次回以降労使が意見を表明し、具体的な議論を進めていくことになりました。

今後の議論で、労働者側は、物価高が最低賃金付近で働く人たちに与える影響は大きいとして引き上げを強く求める見通しです。

企業側は、原材料価格の高騰で中小企業の支払い能力が厳しいことなどについてデータに基づいて議論すべきだという姿勢です。

最低賃金は昨年度、過去最大の31円の引き上げが行われましたが、全国平均1000円との差は39円あります。

物価の高騰が続く中、春闘を通じて賃上げの動きが広がっていますが最低賃金も大幅な引き上げとなるのかが焦点です。

近年大幅な引き上げが続く最低賃金

新型コロナの影響で経済状況が悪化した2020年は1円の引き上げでしたが、去年までの10年間で引き上げ幅は6回、過去最大を更新し、この間、全国平均の時給は212円上昇しました。

最低賃金の引き上げ額の目安は、労使の代表などで作る審議会が、物価の推移や春闘を通じた賃上げの状況、企業の支払い能力などのデータを参考に決めますが、政府も家計の所得の底上げや格差の是正といった観点から議論を注視しています。

今月、決定したいわゆる「骨太の方針」には「ことしは全国平均で時給1000円を達成することを含めて審議会でしっかりと議論を行う」と明記しました。

また、この夏以降は、1000円を達成したあとの最低賃金の引き上げの方針についても政府の会議で議論するとしています。

厚生労働省によりますとことし全国平均1000円を達成するためには、過去最大だった去年の31円をさらに上回る39円以上の引き上げが必要になるということです。

専門家“国は中小企業の人たちが利益上げていく環境整備を”

最低賃金の問題に詳しい法政大学大学院の山田久教授は「物価が上がってきていて人手不足も深刻化していることから客観的には最低賃金が上がる可能性が整っている。正社員は、春闘で高い賃上げ率になると恩恵が及ぶがパートやアルバイトは及びにくく最低賃金の引き上げは社会全体の賃金を底上げしていくという意味も持っている。賃上げの望ましい流れを続けていくという意味で最低賃金がどうなるかは重要なポイントだ」と指摘しています。

一方で「10年ほど前から最低賃金をかなり高いペースで上げ始めたことから、生活者にはプラスだが、中小企業には人件費がかなりの負担になっている。企業が雇用を減らさざるを得なかったり、廃業してしまうといった最低賃金の引き上げの副作用が出やすい局面に入っている」としています。

その上で、山田教授は「企業が利益を上げる環境が整備されないと賃金は上がらない。最低賃金の議論にあわせて、国は、自助努力では厳しいという現場の声を聞いてニーズに沿った支援を行い、中小企業の人たちが適正に利益を上げていく環境を整備していくことが求められる」として国にも対応を求めています。