日韓財務対話「通貨スワップ協定」再開で合意 関係強化で一致

日韓関係の改善が進む中、日本と韓国の財務相が経済の課題について意見を交わす「日韓財務対話」が東京の財務省で7年ぶりに開かれました。金融市場が混乱した際などに互いに通貨を融通しあう「通貨スワップ協定」の再開で合意するなど、経済・金融面の関係強化で一致しました。

日韓財務対話は7年ぶり

日韓財務対話は、両国の関係悪化によって2016年8月の開催を最後に行われていませんでしたが今回、7年ぶりに開かれ、鈴木財務大臣と韓国のチュ・ギョンホ(秋慶鎬)企画財政相のほか、両国の財務当局の幹部らが出席しました。

冒頭、鈴木大臣が「域内の経済成長を支え、金融の安定を維持するため連携して機動的な政策対応を行っていくことが重要だ」と述べました。

これに対し、チュ企画財政相は「財務対話の再開は政府間の関係の正常化が経済政策や金融協力の部分にまで広がっていることを示す成果だ」と述べました。

「通貨スワップ協定」再開合意 100億ドルの融通枠

会合はおよそ2時間近くにわたって行われ、金融市場が混乱した際などに互いの通貨を融通しあう日韓の「通貨スワップ協定」を再開することで合意しました。

今回合意された協定では、互いに100億ドルを融通する枠を設けることとします。

日韓の「通貨スワップ」は、金融市場の混乱などによって外貨の確保が困難になった場合に備えてお互いが保有するドルや円、それにウォンを融通する仕組みです。

過去に協定締結も関係悪化などで終了

日韓の「通貨スワップ協定」は、1997年のアジア通貨危機をきっかけとして2001年に始まりました。

アジアの地域内で緊急にドルを融通しあう「チェンマイ・イニシアティブ」と呼ばれる枠組みのもとで設けられ、2006年には日本が韓国に対し外貨準備として保有している最大で100億ドル分を、また韓国は日本に対して最大で50億ドル分を融通する仕組みが作られましたが、両国の関係悪化などを背景に2015年2月に終了しました。

また、2005年には日本と韓国が互いに円とウォンを融通し合う仕組みも設けられ、引き出し額は一時、700億ドルまで拡大されましたが、これも2013年7月に終了しています。

日韓の「通貨スワップ協定」をめぐっては、2016年8月にソウルで行われた日韓財務対話で韓国側から協定の締結が提案されましたが、その後、財務対話自体が途絶えたこともあって協定再開の議論は進みませんでした。

今回の合意 経済や金融分野での緊密連携の“象徴”に

これまでのところ日韓両国が実際に通貨を融通しあう事態は起きていませんが、万が一の外貨不足に備えた協力関係を結ぶことで、経済面でも日韓両国の関係修復を一段と進めるとともに、金融分野での両国の緊密な連携を象徴する事例となります。

また、クリーンエネルギーにとって重要な製品のサプライチェーン=供給網を両国が協力して強化することで一致しました。

さらに、北朝鮮の不正な資金調達活動への対策を強化することでも合意しました。

両国は、来年、韓国で財務対話を行うことにしています。

鈴木財務相「有意義な対話 通貨信認にプラス」

鈴木財務大臣は、日韓財務対話のあと記者会見を開き「韓国が新しい政権になってから首脳のシャトル外交も再開するという流れの中で財務分野でも歩調を合わせて対話をし、有意義な対話ができた」と述べました。

また、日韓の「通貨スワップ協定」を再開することで合意したことについては「アジア域内の経済を支えて金融の安定を維持するためには、セーフティーネットとして2か国間の通貨スワップは必要だとの思い、認識を共有した。それぞれの国で外貨準備高が積み上がっているので当面は発動はないと思っているが、いざというときの備えは両国の通貨の信認にとってはプラスだ」と述べました。

チュ企画財政相「両国間の協力を強固にする象徴」

韓国のチュ・ギョンホ副首相兼企画財政相は、日韓財務対話のあと韓国メディアの取材に応じ「今回の『通貨スワップ協定』の再開の合意は、直ちに韓国の外貨不足に対応したり、市場の不安に対応したりするという意味よりは、両国間の経済協力を正常化し復元することに意義がある。協力を強固にする象徴になる」と両国の経済関係強化の意義を強調しました。

また、韓国大統領府のイ・ドウン報道官は記者会見で「安全保障や産業面で急速に回復した両国関係が、金融分野でも復元されたことを示す意味のある進展であり歓迎する。日本やアメリカなど普遍的価値を共有する国と、為替や金融の分野で連携の枠組みを構築することで、外貨に関する安全網が韓国にも拡大されるという意義がある」と評価しました。

日韓の政府系金融機関も覚書 金融面で連携へ

政府系金融機関の国際協力銀行と韓国輸出入銀行が覚書を交わし、インド太平洋地域などでのインフラ開発の促進や部品のサプライチェーン=供給網の強化に向けて金融面での連携を深めていくことになりました。

この覚書は、7年ぶりに開催された日韓財務対話に合わせて29日、日本の国際協力銀行と韓国輸出入銀行が結び、29日は財務省で調印式が行われました。

覚書では、インド太平洋地域を中心とした国々で▽質の高いインフラ開発の促進や、▽重要物資のサプライチェーンの強化に取り組む事業を対象に金融面での連携を深めていくとしています。

国際協力銀行の林信光総裁は「日韓両国は天然資源を輸入に依存するなど経済産業構造で共通する部分が多い。日韓両国の企業が有する優れた技術を持ち寄り、インド太平洋の持続的な発展に貢献すべく両機関による金融面での協調をますます強化していきたい」と述べました。