明治神宮外苑の再開発 樹木の保全の議論続く中 伐採開始へ

東京 新宿区などにまたがる明治神宮外苑の再開発について東京都の審議会で樹木の保全のあり方について議論が続くなか、神宮第二球場の解体工事にあわせ、樹木の伐採が始まることが新宿区への取材でわかりました。

東京 新宿区などにまたがる明治神宮外苑の再開発ではことし2月、都が再開発事業として認可したことを受け、工事が始まっていましたが、事前の説明が足りないなどとして住民などから反対の声もあがっています。

こうした中、事業者は27日から神宮第二球場の鉄塔の撤去作業を始めました。

今回の再開発では高さ3メートル以上の樹木743本が伐採される計画ですが、鉄塔の撤去作業にあわせて周辺の樹木の伐採も始まることが新宿区への取材でわかりました。

樹木の伐採や移植などの許可を出す区に対し、今月、事業者から説明があったということで、高さ3メートル以上の樹木の伐採は工事開始以来初めてとなります。

都の審議会では
▽伐採本数を減らせないかや
▽工事によって生育環境に変化が出ないかなど、樹木の保全のあり方について議論が続いています。

事業の認可を出した都は「審議は続いているが、事業者がまとめた環境アセスメントの結果は受理されていて、再開発事業は条例に基づき適切に行われている」としています。

明治神宮外苑再開発 住民などから不安の声も

明治神宮外苑はおよそ100年前、全国からの寄付によって、さまざまな地域から樹木が運ばれて来て作られ秋には黄色に色づく名所のイチョウ並木など、憩いの場として親しまれてきました。

近くには国立競技場があり神宮球場や秩父宮ラグビー場もあって、スポーツの拠点としても知られています。

再開発の計画は、2015年に公表され、神宮球場とラグビー場を位置を入れ替えてそれぞれ建て替え、商業施設などが入る2棟の複合ビルが新たに建設されます。

都による環境アセスメントの手続きはことし1月終了し、再開発事業として都が認可したことで3月下旬から施設の解体工事が始まっていて、全体の整備は13年後の2036年に完了する計画です。

計画をめぐっては、住民などから樹木の伐採について反対する声や事前の説明が不足しているとして不安の声もあがっていて、事業者はことし夏ごろ住民向けの説明会を開くことにしています。

専門家「工事始まった時点で審議会 あるべき姿でない」

明治神宮外苑の再開発をめぐっては、条例に基づいて事業者による環境への影響評価が適切かどうかを検討する都の審議会が去年4月に設置されました。

審議会には、大学教授など専門家12人が入っていて、環境への影響について審議してきました。

この中で焦点となったのは、樹木の保全のあり方です。

計画では、明治神宮外苑にある高さ3メートル以上の樹木1904本のうち、▽743本を伐採
▽256本を移植
▽886本をその場に残すなどとなっています。

これに対し、外部の指摘を受けて先月行われた審議会では、一部の委員から伐採本数の根拠や移植や残された樹木が元の通り生育できるのかなどを客観的なデータで示すよう意見が出され、工事が始まったあとも、樹木の保全について議論が続いています。

環境影響評価に詳しい東京工業大学環境・社会理工学院の村山武彦教授は「工事が始まった時点でどういった影響があってどういう対策を取るかは決まっているべきで、まだ審議会が続いているのは本来あるべき姿ではない。計画については、環境への影響を確認しながら徐々に進めていくことが望ましい」と話していました。