【25日詳細】ワグネル引き返しロシアと本格的な武力衝突回避か

ロシア国防省との確執を深め、首都モスクワに部隊を進めていた民間軍事会社ワグネルの代表は、部隊を引き返し、本格的な武力衝突は回避されたとみられます。これについてロシア大統領府は「特別軍事作戦に影響はない」としていますが、今後の戦況への影響が焦点となっています。

●随時更新でお伝えしています。小見出しの時刻表記は日本時間です。

ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏は、ロシア国防省との確執を深め、24日、ロシア南部ロストフ州にある軍の司令部を占拠したあと、首都モスクワに向けて部隊を進めました。

プーチン大統領が演説で「裏切りだ」と非難して、軍に断固たる措置をとるよう指示し、その後、プリゴジン氏は一転して「部隊を引き返させている」と表明し、占拠していた司令部からも部隊を撤収させました。

本格的な武力衝突は回避されたとみられます。

これに先立って、ロシアと同盟関係にあるベラルーシの大統領府はルカシェンコ大統領がプリゴジン氏と協議を行ったことをSNSで明らかにしました。この中で「プリゴジン氏は、緊張緩和のためのさらなる措置を講じるというルカシェンコ大統領の申し出を受け入れた」としてルカシェンコ大統領が仲介し、事態の打開を図ったと強調しています。

また、ロシア大統領府のペスコフ報道官は24日夜、プリゴジン氏は今後、ベラルーシに向かうという見通しを示した上で、プリゴジン氏によるロシア国内での動きについて、「特別軍事作戦にいかなる影響もない」と述べ、軍事侵攻を継続する姿勢を強調しました。

専門家「プリゴジン氏の出国は苦肉の策か」

防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事は、民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏が今回の行動を起こした狙いについて、「ロシア国防省はワグネルなど民間軍事会社に、契約を結んで事実上、指揮下に入るよう命じていた。しかし、プリゴジン氏は国防省との契約を拒否し、ワグネルの存続とみずからの政治的な影響力を維持したいという狙いがあったのではないか」という見方を示しました。

一方、プーチン大統領は当初、「処罰が避けられない」と演説していましたが、ロシア大統領府の報道官は24日夜、「誰も罪に問われないだろう」と述べました。

この変化について兵頭氏は、ワグネルがウクライナ東部のバフムトで一定の戦果を得て、プーチン大統領の面目を保ったことや、政治的な言動を強めるプリゴジン氏に対して、ロシア国内でも一部で支持が高まっていたことから、プーチン大統領にとってもプリゴジン氏を真正面から排除することが困難だったためと分析しました。

その上で「苦肉の策としてプリゴジン氏をベラルーシに出国させ、ロシア国内で事実上、罪に問われないようにするという落としどころを探ったのではないか。ベラルーシのルカシェンコ大統領はプリゴジン氏と20年来の付き合いがあったのでプリゴジン氏も受け入れが可能だったのだろう」という見方を示しました。

岸田首相 各国と連携して情報収集を指示

ロシアの民間軍事会社ワグネルの動向を含むロシア情勢について、岸田総理大臣は25日昼前、総理大臣公邸で国家安全保障局や外務省、それに防衛省の幹部から報告を受けました。

政府関係者によりますと、岸田総理大臣は、引き続き各国と連携しながら積極的に情報の収集や情勢の分析にあたり、臨機応変に対応するよう指示したということです。

“ワグネル存続を賭けて反乱か ” 米戦争研究所

アメリカのシンクタンク戦争研究所は24日の分析で「今回の反乱は、ロシアの治安部隊の弱さと、プーチン政権が国内の脅威に対して迅速に対応できないという問題を露呈した」と指摘しました。

またベラルーシのルカシェンコ大統領が仲介にあたったことについて「プーチン大統領にとっては屈辱的だ。反乱を解決するために外国の指導者の仲介を必要としたという印象は、今後に影響を与えるだろう」と分析しました。

そしてプリゴジン氏のねらいについては「ワグネルを独立した勢力として存続させる唯一の道として、今回の行動に賭けたとみられる」と指摘し、ロシア国防省がワグネルを念頭に、戦闘に志願する者はすべて6月中に国防省と契約を結ぶよう迫るなか、これを拒否するため今回の行動に出たという見方を示しました。

さらに戦争研究所は、ワグネルの部隊がロシア軍のヘリコプターなどを複数撃墜したという情報について「ロシア空軍のパイロットなど13人以上の兵士が死亡した可能性がある」とした上で「ロシア空軍にとって、ウクライナでの戦争が始まって以降、最も多くの死者が出た日のひとつになった」と指摘しました。

その上で「プリゴジン氏の反乱は、プーチン政権と、政権がウクライナで進める戦争に、大きな打撃を与えることになりそうだ」と分析しています。

“反乱計画 米情報機関が事前に把握” 米の複数メディア

アメリカの複数のメディアは、プリゴジン氏によるロシア軍に対する反乱の計画をアメリカの情報機関が事前に把握していたと伝えました。

このうち「ワシントン・ポスト」は、アメリカ政府当局者の話として、アメリカの情報機関が6月中旬にはプリゴジン氏による反乱計画の兆候を察知していたと伝え、反乱が起きた場合、ロシアの核管理能力に与える影響について懸念を強めていたとしています。

またプリゴジン氏が反乱に至った動機として、今月10日にロシア国防省が、ワグネルも含め、ウクライナ侵攻に参加する志願兵に国防省との契約を義務づける命令を出し、事実上、指揮系統の一元化を図ったことがあるとしています。

さらに記事は、プーチン大統領もプリゴジン氏の計画を把握していたとみられるとしたうえで、それにもかかわらず止められなかったことは政権上層部で足並みの乱れや内部対立があることをうかがわせるものだとするアメリカ政府当局者の分析を伝えています。

キーウ市民「衝撃的な出来事 期待あったががっかり」

キーウ市内では、ワグネルの代表プリゴジン氏が、首都モスクワに進軍させるとしていた部隊について、一転して「引き返させている」と表明したことについて、残念だとする受け止めが出る一方、ウクライナが東部や南部で続ける反転攻勢にとって、好機だととらえる声もありました。

このうち、31歳のエンジニアの男性は、「とても衝撃的な出来事だった。ロシアがウクライナへの軍事侵攻に神経を注ぐ代わりに自国の問題に集中せざるをえなくなるとの期待もあったが、そうはならず、とてもがっかりしている」と話していました。

また、46歳の男性は、「世界はプーチン大統領が何も持っていないことを見た。プーチン大統領は弱体化した。まもなく権力の座から落ちるだろう。ウクライナでの戦争はロシアを崩壊に招く」と話していました。

32歳の会社員の女性は、「この出来事は、ウクライナにとっては良い兆候だ思う。なぜならロシア軍は、規律が乱れ、軍とワグネルが内部でどれほど対立しているかを知ったからだ。ウクライナにとっては有利に働くだろう」と話していました。

米国務省 “米国務長官とウクライナ外相が電話会談”

アメリカ国務省は24日、ブリンケン国務長官がウクライナのクレバ外相と電話会談を行い、劇的に変化するロシア情勢をめぐって意見を交わしたと明らかにしました。

この中で、ブリンケン長官は、アメリカによるウクライナへの支援は変わらないと強調したとしています。

また、ブリンケン長官は、トルコのフィダン外相とも電話で会談し、アメリカは、同盟国や友好国と緊密な連携を続けるとしています。

25日5:00すぎ ロストフ州南部軍管区司令部付近からワグネル撤収

ロシア国営のタス通信は24日夜、日本時間の25日午前5時すぎ、ロシア南部のロストフ州にある南部軍管区司令部の付近からワグネルの戦闘員や戦車などがすべて撤収したと伝えました。

ロストフ州の知事も25日日本時間の午前6時すぎ、ワグネルの車列がロストフ州から出発したことを明らかにしました。

現地だとする映像には、辺りが暗いなか複数の戦車や装甲車などが列になって通りを移動する様子や多くの市民とみられる人々が周囲に集まっている姿がうつされています。

また、国営のロシア通信はSNSでワグネルの代表、プリゴジン氏が南部軍管区司令部から出て行く様子だとする動画を公開し複数の人に囲まれた男性が歩いて建物の外へ出て、車に乗り込む姿が確認できます。

モスクワまで約200キロまで近づいたあと方向転換か
ロシアの民間軍事会社ワグネルの部隊はロシア南部から首都モスクワに向かって北上していたとみられます。

実際にどこまで移動していたのか、詳しいことは分かっていませんが、モスクワからおよそ450キロ南のリペツク州の知事は24日SNSに「ワグネルの車両がリペツク州内を移動している」と投稿していました。

またワグネルの代表プリゴジン氏はモスクワまでおよそ200キロのところまで近づいていたものの、方向転換して部隊を引き返させたと主張しています。

25日5:00ごろ ロシア大統領府「誰も罪に問われないだろう」

ロシア大統領府のペスコフ報道官は24日夜、日本時間の25日午前5時ごろロシアメディアに対して「前線での功績を考えれば誰も罪に問われないだろう」と述べプリゴジン氏に同調したワグネルの戦闘員に対する責任は問わない考えを明らかにしました。

そして、プリゴジン氏に対する捜査は取りやめられるとした上でプリゴジン氏はベラルーシに向かうという見通しを明らかにしました。

またペスコフ報道官は「ルカシェンコ大統領はプリゴジン氏と20年来のつきあいがある」と述べた上で、ベラルーシのルカシェンコ大統領が事態の打開に向けてみずから仲介に入ることをプーチン大統領に提案したとしています。

その上で「最終的にはこれ以上の損失を出すことなく解決できた」と述べ、ルカシェンコ大統領に謝意を表しました。

アメリカ国防総省 ウクライナへの支援変わらずと強調

アメリカ国防総省は24日、オースティン国防長官が、カナダ、フランス、ドイツ、ポーランド、イギリスの5か国の国防相と電話会談を行い、刻々と変化するロシア情勢を巡って意見を交わしたと明らかにしました。

この中でオースティン長官は、アメリカによるウクライナへの支援は変わらないと強調したとしています。

25日2:00 ルカシェンコ大統領がプリゴジン氏と協議

ロシアと同盟関係にあるベラルーシの大統領府は、ルカシェンコ大統領がロシアの民間軍事会社の代表プリゴジン氏と協議を行ったと日本時間の25日午前2時ごろ、SNSで明らかにしました。

この中でルカシェンコ大統領は、さきに行ったプーチン大統領との電話会談をうけて、プリゴジン氏と一日中協議したとして「ロシアの領土で流血の事態になることは許されないということで合意した」としています。

その上で「プリゴジン氏は、ロシア領内でのワグネルの戦闘員の移動を止め、緊張緩和のためのさらなる措置を講じるというルカシェンコ大統領の申し出を受け入れた」としています。

また、ベラルーシの大統領府は「ワグネルの戦闘員の安全が保証され、状況を解決するための有益で、受け入れ可能な選択肢が検討されている」としていて、ルカシェンコ大統領がプリゴジン氏に対してさまざまな条件を提示するなど仲介し事態の打開を図ったと強調しています。

プリゴジン氏“モスクワへの部隊引き返させている”と主張

ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏は首都モスクワに向かわせているとしていた部隊について流血の事態を避けるためだとして引き返させていると主張しました。

これに先立ってベラルーシ大統領府はルカシェンコ大統領が独自のルートを使って、プリゴジン氏と協議しロシア領内でのワグネルの戦闘員の動きを止め、緊張緩和のための措置を講じるよう提案したと発表しました。

これに対してプリゴジン氏はこの提案を受け入れたとしています。ただ、部隊が引き返しているというプリゴジン氏の主張がルカシェンコ大統領の提案を受けたものなのかなどはわかっていません。

また、プリゴジン氏は部隊がどこに引き返しているのか具体的には言及しておらず事態が収まるかは今のところ不透明です。