ウクライナ“反転攻勢は順調” ロシアは空爆で地上部隊支援か

ロシアからの領土奪還を目指すウクライナは東部や南部で部分的な成功を収めているとして反転攻勢が順調に進んでいると強調する一方、ロシア軍は空爆で地上部隊への支援を強化しているとの指摘もあり、戦闘が激しくなっているとみられます。

ウクライナ国防省のマリャル次官は14日に、SNSで、軍の部隊がウクライナ東部ドネツク州のバフムト方面で200メートルから500メートル、南部ザポリージャ州方面で300メートルから500メートル前進したとして「部分的な成功を収めている」と強調しました。

これに対してロシア国防省は14日、ドネツク州やザポリージャ州などでウクライナ軍を撃退し、兵士1000人以上を殺害したと主張しました。

イギリス国防省は14日、過去2週間、ロシア軍の戦闘機の出撃回数がウクライナ南部で増えているとしたうえで、反転攻勢を撃退するために空爆で地上部隊を支援するのが目的だと指摘し、戦闘が激しくなっているものとみられます。

また、ロシアのプーチン大統領は13日に行われたロシア軍に従軍する記者を集めた会合で、ウクライナの反転攻勢は失敗していると主張したうえで「われわれは状況に応じて措置をとる。あらゆる計画を立てている」と述べ、ウクライナ軍を撃退し侵攻を継続していく姿勢を示しました。

また、ロシア国内で無人機による攻撃が相次いでいることについて「伝統的に防空システムはミサイルや大型の戦闘機を対象に設定されている。無人機を探知するのは非常に難しい」と述べ、防空システムが無人機に対応しきれていないと認めたうえで対策を強化する考えを示しました。

ウクライナ 前線で戦うアゾフ旅団の兵士「大きな転換点だ」

ウクライナの前線で戦っている「アゾフ旅団」の下士官の1人で兵士の訓練などを行っているアナトリー・イエホロフさん(31歳)は、ウクライナ軍による大規模な反転攻勢が始まったことについて「われわれはこのために準備してきたし、この戦いが大きな転換点になると考えている。ウクライナにとってこの100年で最も重要な戦いだ」と述べ、兵士の士気は高いと強調しました。

また、旅団がいる前線の戦況について具体的な場所は明らかにしなかったものの「いまはまだ主に偵察部隊による前哨戦という段階だが、これからより大きな戦いが始まることになる」との見方を示しました。そのうえで「攻撃側は防御側の3倍の戦力が必要になる」と述べ、欧米諸国などに対し、より多くの戦車や装甲車を供与してほしいと訴えました。

イエホロフさんは去年5月にマリウポリが陥落した際にロシア軍の捕虜となり4か月後に捕虜交換で解放されましたが、ロシアに捕らえられている仲間はいまもおよそ600人いるということで「1年以上も厳しい状況に置かれている仲間がいる。すべてのウクライナ人の自由のためにわれわれは戦い続ける」と話していました。

「アゾフ旅団」はロシアによる軍事侵攻当初、東部の要衝マリウポリなどの防衛に関わった準軍事組織「アゾフ大隊」が元になっていて、兵力は7000人規模で、内務省傘下の部隊として前線で戦っています。