長崎の平和公園で千羽鶴など焼ける 23歳の長崎県職員を逮捕

13日朝、長崎市の平和公園で献花台にささげられていた千羽鶴や献花が焼ける火事がありました。警察は現場にいた23歳の長崎県の職員が火をつけたことを認めたため器物損壊の疑いでその場で逮捕しました。

13日午前6時20分ごろ、長崎市松山町の平和公園の敷地の中にある「爆心地公園」で通りかかった人から「千羽鶴が燃えている」と消防に通報がありました。

火はまもなく消し止められましたが、この火事で献花台にささげられていた千羽鶴や献花の一部が焼けました。

警察は現場にいた長崎市に住む長崎県職員の23歳の容疑者が火をつけたことを認めたため、器物損壊の疑いでその場で逮捕しました。

警察によりますと容疑者は「ライターで折り鶴に火をつけた」と供述しているということです。

警察は詳しいいきさつや動機を調べています。

「爆心地公園」は、昭和20年8月9日に原爆が上空でさく裂した地点に作られていて、公園の敷地内には落下中心地を示す記念碑や原爆犠牲者の名簿の写しが納められた奉安所が設けられています。

長崎 鈴木市長「大変遺憾 憤り感じている」

長崎市の鈴木市長は報道陣に対して「大変悲しい事件だと思う。市民の皆さんが平和を願って、被爆によって、亡くなった皆さんの御霊を慰霊する気持ちを込めて手向けられていたものがこのようなことになったことを大変遺憾に思うし、憤りを感じている。こういうことが二度とくり返されることがないよう願っている」と述べました。

その上で、「対策については、警察など関係機関と連携しながら考えていきたい」と述べました。

長崎原爆被災協の会長「本当に残念 二度とあってはならない」

長崎県の主な被爆者団体の1つ、被災協=「長崎原爆被災者協議会」の田中重光会長は、NHKの取材に対し、「千羽鶴は子どもや一般の人が平和への願いを込めて折ったもので、それに火をつけるのは大人のすることじゃない。爆心地は私たち被爆者の聖地で一人ひとりが祈りをささげ、平和を願うという場所。本当に残念で、二度とあってはならない」と話していました。

訪れた男性「大変残念」

千羽鶴などが燃やされたことについて、埼玉県から訪れたという60代の男性は「大変残念です。みんなの思いが込められたものをなぜ、燃やすのか分かりません」と話していました。

また、山形県から訪れたという70代の女性は「爆心地公園を見たいと思って来ました。何と言っていいか分かりませんがとても悲しいです」と話していました。

長崎県「心から深くおわび申し上げる」

職員の逮捕を受けて、長崎県は13日午後、県庁で記者会見を開きました。

県によりますと、逮捕された職員は県土木部に所属する入庁3年目の23歳の男性主事で、精神的な不調で体調を崩し、先月23日から病気休暇中だったということです。

県土木部の奥田秀樹部長は「平和の象徴である場所で取り返しのつかないことを起こしてしまい、県民はもとより、長崎に思いを寄せていただいているすべての方々に心から深くおわび申し上げます」と述べ、謝罪しました。

そのうえで「心の内は本人にしか分からないが、恐らく、悩み、苦しんでいることがあったのではないかと思う。そのことに周りで気付いてあげられなかったことが本当に痛恨の極みだ」と述べました。

県は今後、本人に聞き取りなどを行ったうえで処分を検討する方針です。