【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(9日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる9日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ南部にある黒海沿岸のオデーサの浜辺にも、木材や電化製品などが次々と流れ着いていて、洪水が起きているヘルソン州やその周辺から流されてきたとみられています。

9日、NHKの取材班は、ヘルソン州の洪水が起きている地域から150キロほど離れた黒海沿岸の都市オデーサの浜辺に向かいました。

浜辺には、住宅の一部とみられる木材や電化製品のほか、大量の木の枝などが打ち上げられていて地元の人たちはそれらを手で拾い集めて片付けに追われていました。

50歳の男性は「浜辺に流れ着いた冷蔵庫にはロシアの通貨による値札が付いていました。とても心が痛みます。これからもっとたくさん流れ着いてくるでしょう」と話していました。
ウクライナ南部のダムが決壊して洪水が発生したヘルソン州に住むカテレーナ・クルーピッチさん(40歳)は、9日、NHKのオンラインインタビューに応じ、当時の様子を語りました。

当時の状況について「今まで経験したことがないため最初は驚くとともに、どう対応していいか分かりませんでした。想像していた以上の速さで水が家に入ってきました」と話していました。
クルーピッチさんたちはダムが決壊した6日、ボートで近所の家に避難し、住宅の屋根裏で一晩を過ごしたということです。

クルーピッチさんは「人生で最も怖い夜でした。翌朝、窓から外を見渡すと、住宅が押し流されていて、ことばを失いました」と涙ながらに語りました。
ロシア外務省は9日、モスクワに駐在する上月大使を呼び「日本政府がウクライナへの軍事装備品の供与を決定したことは、敵対行為のエスカレートや犠牲者のさらなる増加につながる」と懸念を伝えたと発表しました。

陸上自衛隊が保有するトラックなど100台規模での提供といった日本の支援策を念頭にしたものとみられ「決定は2国間関係をさらに危険な袋小路に追い込み深刻な結果を招く」などとしています。

モスクワの日本大使館によりますと、これに対して上月大使は「今回の事態はすべてロシアによるウクライナ侵略に起因しているにも関わらず、日本側に責任を転嫁しようとするロシア側の主張は極めて不当で、断じて受け入れられない」と述べ、反論したということです。

ゼレンスキー大統領 岸田首相と電話会談 「支援に感謝」

ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、岸田総理大臣と電話で会談したと、SNSで明らかにしました。

会談では、ウクライナ南部ヘルソン州でロシア側の爆破によってダムが決壊したとして、現地の被害状況を伝えるとともに、ロシア軍によるミサイル攻撃が激しくなっているなどと戦況についても説明したとしています。

その上で「安全保障の支援についての日本のさらなる関与や、両国間の協力、それにウクライナの復興について話し合った。ロシアのテロ行為を止めなければならず、あなた方の支援に感謝している」として、日本政府の支援に謝意を示しました。

「ダムで爆発あったか」ノルウェー研究機関

ウクライナ南部のダムが6日に決壊したことをめぐり、地震や核実験の監視を行っているノルウェーの研究機関は、ダムの決壊が起きたとされる時刻に明らかな揺れを観測したとして「ダムで爆発があったとみられる」とする分析を明らかにしました。

それによりますと、揺れが観測されたのはウクライナ時間の6日午前2時54分で、揺れの規模を示すマグニチュードは1から2程度だったとみられるとしています。

分析にあたったノルウェーの研究者は、アメリカの公共ラジオ「NPR」の取材に対し「爆発が起きた際に発生する、特徴的なエネルギーの波が見てとれる」と話しています。

米シンクタンク「ウクライナ軍の反転攻勢始まった」

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は8日、ツイッターに、「ウクライナの反転攻勢が始まった」と投稿し、ウクライナ軍による反転攻勢がすでに始まっているという見方を示しました。

その上で「戦争研究所」は、ホームページで公開した戦況の分析の中で「ウクライナ軍は反転攻勢の一環として、少なくとも前線の3つの地域で作戦を行った」と述べ、8日までに東部ドネツク州のバフムト周辺やドネツク州の西部のほか、南部ザポリージャ州の西部でもウクライナ軍が攻撃に打って出たとしています。

このうち、ザポリージャ州西部については、前線の画像の分析などをもとに「ウクライナ軍が8日にかけて局地的ではあるが顕著な攻撃を行い、ロシア軍が防御したもようだ」としています。

この地域では、ウクライナ側が一時的に前進したものの、ロシア軍が応戦して押し返したという情報もあるとした上で「ウクライナ軍はまだ、大規模な予備兵力の一部しか投入していない」という見方を示しています。

ゼレンスキー大統領「ロシアは避難場所まで攻撃している」

ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、新たな動画のメッセージを公開し、ウクライナ南部のヘルソン州で洪水の被害が拡大していることについて「ロシアのテロリストは生態系破壊で引き起こした状況をさらに悪化させようとしている」と述べました。

そして「彼らはヘルソン州で砲撃を続けている。避難場所まで砲撃している」と批判しました。

また、ロシア側が支配するドニプロ川の南東側について「占領者はこの地域に住む人々を完全に見捨てている。破滅的状況は2日目になっても拡大するばかりだ」と指摘し、人道状況の急速な悪化に懸念を示しました。

ダム決壊 国連大使らが声明「避難地域への砲撃を強く非難」

ウクライナ南部のダムが決壊して洪水が発生し、多くの人たちが避難を強いられていることに関連して、ウクライナやアメリカ、それに日本など14か国とEU=ヨーロッパ連合の国連大使らが8日、緊急の記者会見を国連本部で開き、共同声明を発表しました。

声明では、洪水によって浸水したヘルソンで8日、避難中だった人たちに対して砲撃が行われ、医療隊員や救助隊員を含む少なくも9人がけがをしたと明らかにしました。

その上で声明では「避難地域への砲撃を強く非難し、ロシアに対し、このような攻撃をやめるよう求める」と主張しています。

また、ダムの決壊で大きな被害が出ているドニプロ川南東側のロシアが支配する地域について、人道支援物資を届けるため国連スタッフなどの安全を確保するようロシアに求めています。

ロシア国防省 「ウクライナ軍が防衛線の突破を試みた」

ロシアのショイグ国防相は声明を発表し、ウクライナ南部ザポリージャ州で8日未明、ウクライナ軍がロシア軍の防衛線の突破を試みたと発表しました。

イギリス国防省は8日「複数の前線で激しい戦闘が続いている。ほとんどの地域でウクライナが主導権を握っている」という見方を示し、ウクライナ軍による反転攻勢の動きが活発になっているとみられます。

ヘルソン州の水位 最も高いところで5.6mに

ウクライナ南部ヘルソン州にあるカホウカ水力発電所のダムの決壊が引き起こした大規模な洪水について、OCHA=国連人道問題調整事務所は8日、ヘルソン州の水位が最も高いところで5.6メートルに達したと指摘しました。

そして、水位は下がり始めているものの、少なくとも1週間、浸水は続くという見通しを示しました。

また、ダムの決壊はウクライナ南部で暮らす70万人以上への飲料水の供給に影響を与えるほか、農業生産に深刻な被害が予想されるとしたうえで、被害を受けた住民は水や食料、それに衛生用品といった緊急支援物資を必要としていると訴えています。

WHO ダム決壊で現地の衛生状況悪化に懸念

ダムの決壊によって洪水が発生したことを受け、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は8日「地域の公衆衛生に与える影響を侮ってはならない」と述べ、現地の衛生状況の悪化に懸念を示しました。

WHOは感染症の検査や予防の分野で現地の保健当局への支援を始め、数日以内に追加の支援物資を届けるとしています。

また、ロシアの支配地域についてもロシア側と連絡を取り合い、住民の衛生状況を確認しているということです。

ロシア側の支配地域で支援活動を行うことについて担当者は「ウクライナとロシア、双方の合意が必要だ」と述べ、現時点での支援は限定的なものにとどまっているとしています。

ウクライナ エネルギー相 欧州に電力供給量の増加を要請

ウクライナのハルシチェンコ・エネルギー相は、南部の水力発電所のダムが決壊したことに関連し、8日、フランスのAFP通信のインタビューに応じました。

この中で、洪水が環境に与える影響について、旧ソビエト時代の1986年に起きた原子力発電所の事故による環境破壊を引きあいに「チョルノービリ原発事故以降では最も危険な状況をもたらすだろう」と述べました。

そして「最大で80ほどの村や町が完全に破壊されるだろう。2万戸の家屋が停電している」と指摘しました。

そのうえで、電力事情の悪化も懸念されるとして「ヨーロッパに供給量を増やすよう求めた」と述べました。

またダムの決壊により、ザポリージャ原子力発電所に冷却水を供給する貯水池の水位が下がり、原発への影響が懸念されていることについては「何が起きるのか、状況を監視している。差し迫ってはいないが危険は存在する」と述べました。

ダム決壊 現場の状況を調査した議員「大惨事になっている」

ウクライナ議会の議員で、ダムが決壊した直後に南部の都市ヘルソンに入り、現場の状況を調査したオレクシー・ゴンチャレンコ氏が8日、NHKのインタビューに応じ「大惨事になっている」と述べました。

ゴンチャレンコ氏は今月6日、ダムが決壊したというニュースを聞き、その日のうちに人道支援物資を持って南部の都市ヘルソンに向かったということです。

ゴンチャレンコ氏は「ヘルソンに着くと、川の水位が急速に上がり、家のがれきなどが流れているのが見え、オイルの臭いもした。こうした中でも砲撃は続いていて、煙が上がるのが見えた」と現場の様子を語りました。

洪水による死者が出ているかについては「はっきりとしたことは分からないが、最初から犠牲者は出るだろうと考えていた。すでに死者が出ているという情報があるが水が引いた後になってより多くの犠牲者が出ていることがわかるだろう」と述べました。
そのうえで「現地では避難用のボートや飲み水、医薬品などが求められている。動物の死体なども流れていることから感染症の広がりも懸念されていると」述べ、早急に支援態勢を整える必要があると訴えました。

また、ヘルソンの対岸のロシア軍が支配する地域の住民から直接聞いた話として「ロシア軍は明らかに住民の救助活動を行っていない。家の屋根に取り残された住民を救おうとしていた人たちに向かって、夜間外出禁止に違反したとして銃撃した例もあると聞いている」と述べました。

ゴンチャレンコ氏は洪水の被害は今後、広い範囲に及ぶと懸念していて「数千ヘクタールもの農地が水につかり、世界の食糧安全保障にも影響を与える。また水力発電所のエンジン用のオイルが大量に黒海に向かって流れているという情報もあり、環境面でも大惨事となっている」と危機感を示しました。

ダム決壊 「ロシアに大きな利益がある」との見方も

イギリスの経済紙、フィナンシャル・タイムズは6日、ダムの決壊について複数の専門家の見方を伝えています。

このなかで、ウクライナとロシアがお互いに非難しているとしながらも、ダムの決壊と洪水はウクライナ軍の南部での反転攻勢の可能性を制限するとともに、ロシアは、ウクライナ側による東部での反撃に注力しやすくなるとして「ロシアに大きな利益がある」としています。

ウクライナ軍の当局者は、フィナンシャル・タイムズの取材に対して「ドニプロ川を渡る上陸作戦を行うとしても水につかった土地は沼地になるため、すぐには実行しないだろう」と答え影響がある可能性に言及しています。

一方、ロシア軍の側にも影響があると伝えています。

このうち、ウクライナ情勢について発信を続けているアメリカの軍事専門家で海軍分析センターのマイケル・コフマン氏は「ウクライナ側が川を渡る作戦を行う可能性は低かったが、ダムの破壊によりロシア側の第1の防衛線も水につかってしまった。ダムの決壊は、誰の得にもならないが、最も影響を受けるのはロシア側の支配地域だ」と指摘しています。

ゼレンスキー大統領 避難所を訪問 SNSに投稿

ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、洪水で大きな被害を受けたヘルソン州にある医療機関に設置された避難所を訪れ、被災者などと面会したとする様子をSNSに投稿しました。

映像では、ゼレンスキー大統領が複数の女性から歓迎を受けたあと「お大事に」などと声をかけています。

また、ゼレンスキー大統領は医療関係者とも面会しました。

多くの医師が戦地に向かい医師不足が続く中、治療にあたっているとして謝意を示した上で「あなたたちは英雄だ」などとねぎらっていました。